2019年12月06日
各位
株式会社日本総合研究所
神戸市におけるローカルMaaSの実証実験について
~地域主体の移動サービスのエコシステムづくりを検証~
株式会社日本総合研究所(本社: 東京都品川区、代表取締役社長: 谷崎勝教、以下「日本総研」)は、主催する「まちなか自動移動サービス(※1)事業構想コンソーシアム」(以下「まちなかコンソーシアム(※2)」)において、住宅地内外の移動をサポートするサービス(以下「まちなか自動移動サービス」)の実証実験(以下「本サービス実証」)を行います。本サービス実証は、2019年12月9日(月)から2020年2月7日(金)まで、神戸市北区の住宅地で実施する予定です。
【背景と主な狙い】
1970年代に多く開発された郊外ニュータウンでは、入居当時働き盛りだった世代の高齢化に伴い、急速な高齢化が進展しています。なかでも坂や階段の多い丘陵地のニュータウンでは、自家用車がなければ買い物など日々の外出が困難と感じる住民が増えているのが実情です。
まちなか自動移動サービスは、住宅地内におけるラスト&ファーストマイルの移動サービスと公共交通との連携を通じ、多様な移動手段を用意することで、地域内での移動のしやすさを高める取り組みです。目的地までの移動を容易にすることで、高齢者も安心して住み続けられるようにすると共に、住民間の交流や商店等の活性化を図ります。
住宅地内限定の近隣移動サービスは、移動距離の短さから運賃収入が限られるため、事業性が乏しく、ニーズの有無にかかわらず実装の困難さが指摘されてきました。本サービス実証の対象地において、日本総研が単独あるいはまちなかコンソーシアムを通じて2016年度から繰り返してきた実証実験の結果からも、住民の間から一定のニーズの存在を確認できた一方で、運賃収入だけでサービスを成立させるにはまだ課題があることが明らかになっています。
そこで、まちなかコンソーシアムが検討しているのが、自治会などとの連携を通じて実現する地域の自助・共助と民間サービスとの組み合わせによる、移動サービスのエコシステムづくりです。地域の商店等と連携することで、運営に必要な資金が循環し続ける仕組みの構築を目指します。
本サービス実証では、オンデマンドによる住宅地内限定の近隣移動サービスのほか、住宅地から離れた病院やショッピングセンター等へは、会員制のポータルサイトから募った同乗者とタクシーを共同利用する仕組みを組み合わせることで、住民の移動ニーズに幅広く応えます。これら新たな移動サービスの需要・受容性をはじめ、移動サービス以外の収益源のあり方も含め、地域が主体的に運営する「ローカルMaaS」としての事業性と実現可能性を検討します。
日本総研では、本サービス実証の結果を踏まえてまちなか自動移動サービスのビジネスモデルを確立させ、実装に向けた事業計画を本年度中に策定する予定です。
※本サービス実証では、自動運転車両は走行しません。自動運転車両については、2020年2月以降に計画している技術実証において、路車間の通信も含めた走行実証を行う予定です。
■本サービス実証の内容
(1)実施概要
・実施場所: 神戸市北区筑紫が丘、広陵町、小倉台および桜森町の町内
・実施期間: 2019年12月9日(月)~2020年2月7日(金) (運休日有)
・利用対象者: 神戸市北区筑紫が丘、広陵町、小倉台、桜森町の住民(事前登録制)
・実施主体: まちなかコンソーシアム(主催: 日本総研)
・現場統括者: 神戸自動走行研究会(代表: みなと観光バス株式会社)(※3)
1. 住宅地内の移動サービス
・運行時間: 8:30~19:30 (運営状況を踏まえ、変更の可能性あり)
・運賃: 無料
・車両: 借り上げのタクシー車両
普通乗用車(軽自動車を改造したもの)
電動の軽自動車
・最高速度: 時速20キロメートル
・乗合可能人数: 借り上げのタクシー車両: 4名(運転手除く)
普通乗用車: 5名(運転手除く)
電動の軽自動車: 3名(運転手除く)
・利用方法等 車両の呼び出しや現在位置確認は会員制のポータルサイトから行う。
(車両の呼び出しについては電話でも利用可能)
2. タクシー共同利用
・サービス時間: 8:30~17:00 (運営状況を踏まえ、変更の可能性あり)
・運賃: 有料(会員制のポータルサイト上で募集した同乗者間で料金を
均等割りすることで、一人当たりの負担を下げる仕組みです)
※本サービス実証は、近畿運輸局の指導の下で行います。
※本サービス実証に用いる会員制のポータルサイトの開発には、国土交通省「新モビリティサービス推進事業費」を活用しています。
(2)実証内容
本サービス実証で実証する内容は以下のとおりです。
1. 近隣移動サービスの需要と受容性
オンデマンドによる住宅地内の移動サービスについて、運行方法、ルート、適正な料金等、サービスのあり方を検証します。また、運営には筑紫が丘・広陵町・小倉台・桜森町の各自治会の協力や地域住民の参画を得ながら、地域が主体的に運営することの実現可能性を検証します。
2. タクシー共同利用機能の需要と受容性
近隣移動サービスや既存の路線バスでは行けない、住宅地から離れた場所への移動手段として用意します。会員制のポータルサイトで同乗者を募って待ち合わせて乗る方式ですが、この方式に対する需要と受容性を検証します。
3. ポータルサイトの使い勝手と機能
既存バス路線の現在位置情報確認、近隣移動サービスの予約と現在位置確認、タクシー共同利用の呼びかけを行う会員制のポータルサイトについて、機能や使い勝手を検証します(ただし本サービス実証では、スマートフォンやパソコンなど電子機器を持たない方向けに、電話でも車両の予約を可能としています)。
4. 車内広告・コミュニケーション機能
普通乗用車内に設置されたディスプレーで広告やニュースを配信し、効果を検証します。
5. 送客効果
近隣移動サービスまたはタクシー共同利用を利用して訪れた店舗での購買履歴を蓄積し、送客効果を検証します。
6. データの管理と共有方法
まちなか自動移動サービスの利用に伴い発生する移動履歴等の個人データは、利用者本人の帰属とし、クラウド上の個人フォルダに格納します。本人から同意を得た事業者のみこれら個人データにアクセスできるようすることで、データ利活用の様々な可能性を検討します。
■ルートと乗降ポイント
近隣移動サービスについては、住宅地内限定で、下記地図にある通り、予め決められたルート以外は走行しません。走行ルートは、住民の方々の要望と自治会でのヒアリングを経て決め、道路の状況や隣接する乗降ポイントとの距離も考慮しながら、1~78の乗降ポイントを設定しています。
利用者は、会員制のポータルサイトにおいて、この地図上の乗車ポイントと降車ポイントの両方を指定して車両を呼び出します(電話での利用も可能)。予め決められた走行ルートのうち、どのルートをどの順序で走行するかは、乗合の状況も踏まえながら、配車システムが最も効率的な道順をアルゴリズムに基づき算出し、運転手に伝えます。
タクシー共同利用は、下記地図で示された2km四方のエリア外へ行く際に利用します。タクシー共同利用で行ける範囲は4km四方を目途に設定しています。
(※1)まちなか自動移動サービス
住宅地内の店舗や公共施設、病院、バス停等までの、いわゆるラスト&ファーストマイルの移動サービスを軸に、タクシーの共同利用等、地域の公共交通も活用しながら、地域のモビリティを高めるサービスです。移動サービスを通じて取得される各種データを活用し、公共交通とのシームレスな乗り継ぎや店舗への販促支援、住民への情報配信などの付加価値サービスも提供します。
まちなか自動移動サービスは、移動サービスや各種サービスの提供を通じて、住宅地としての機能を高め、人の往来を増やして地域を活性化する “ローカルMaaS”のモデルとなることを目指しています。
まちなか自動移動サービスは、自動運転技術の進展動向を踏まえ、まずは手動運転でのサービス実装を進め、段階的に自動運転化を進める計画です。
(※2)まちなか自動移動サービス事業構想コンソーシアム
まちなか自動移動サービスを持続可能にするための事業構想を目的に、2018年に日本総研が設立した、産官学民によるコンソーシアムです。自治会、自治体を含む産官学民が連携して、まちなか自動移動サービスの社会実装に必要なシステムの仕様や事業仮説について検討します。
主催: 株式会社日本総合研究所
一般会員: 株式会社IHI、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社、沖電気工業株式会社
関西電力株式会社、ダイハツ工業株式会社、菱電商事株式会社
オブザーバー: 一般財団法人日本自動車研究所
協力会員: 神戸市、神戸市北区筑紫が丘自治会、神戸空港タクシー株式会社、
大和自動車交通株式会社、名古屋大学、みなと観光バス株式会社
まちなか自動移動サービス事業構想コンソーシアム設立について(2018年8月29日)
https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=33228
(※3)神戸自動走行研究会
自動走行をはじめとしたIoTの交通事業への導入をテーマとした、神戸市内の交通事業者による研究会です。少子高齢化のなかでの交通サービスのあり方や顕在化してきた運転手不足への対応などについて、IoTの活用による解決方法を研究しています。
発起企業: みなと観光バス株式会社(代表)、近畿タクシー株式会社
メンバー企業: 有馬自働車株式会社、神戸空港タクシー株式会社、神戸電鉄株式会社、
神鉄タクシー株式会社
■参考資料
まちなか自動移動サービス 2019 実証実験の実施概要
URL:https://www.jri.co.jp/file/pdf/company/release/2019/1206/outline.pdf
【本件に関するお問い合わせ先】
【報道関係者様】広報部 山口 電話:03-6833-5691
【一般のお客様】創発戦略センター 井上・武藤 電話:03-6833-2820