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経営を読み解く、時代を読み解く  

出典:(財)社会生産性本部『Theエクセレンス』 2005年10月

 日常経験を通じ仕事が面白いと思えることほど贅沢はない、と言います。また、普段垣間見ることのできない世界を、他者の稀有な体験を通じ知り得ることも、この上ない贅沢でしょう。日常の実務に関し1冊、日常の実務を離れた世界に関し1冊をご紹介致します。

『企業戦略(競争優位の構築と持続)上・中・下』 ジェイ.B.バーニー (ダイヤモンド社)

 バーニーは、経営戦略分野でのResource Based View発展の主導的な戦略理論家です。UCLAとテキサスA&M大学で教鞭をとり、今はオハイオ州立大学ビジネススクール教授。アメリカ経営学会の経営政策・戦略部会の会長を務めたこともあります。
 ポーターの理論の基礎となるSCP(Structure-Conduct-Performance)パラダイム、創発、企業経済学での取引費用、リアルオプション、多角化、合併買収などの様々な戦略理論と実務上のアプローチについて、バーニーはその有効性と限界も鋭く指摘しています。

 本書を完成するまでには、2001年までの過去10年間の、全米トップ級ジャーナル5誌に掲載された全論文にバーニーが目を通し、さらにFortune誌の過去10年間の全号とWall Street Journal誌のほぼ全てを対象に事例を抽出し、本書の戦略テーマで同事例が見当たらないものは原則そのテーマは削除する、という徹底ぶりが貫かれています。知力のみならず、その体力(持続力)には驚かされます。

 今回、戦略分野のグルであるミンツバーグの『戦略サファリ』をご紹介するべきか迷いました。決め手は、読みやすさ、斬新さ、系統だった理論、そしてその実用性です。初学者でも読みやすいと思われる一方、戦略分野の研究者・実務者や博士課程学生にも役立つものでしょう。

 企業の競争優位に関するミクロ経済面での本書の世界と、より大局的なマクロ経済面での知見が統合されれば、もっとよい仕事ができるに違いありません。仕事上のチームメンバーの必読書としたい1冊です。

『宗教と反抗人』 コリン・ウィルソン (紀伊國屋書店) 

 『アウトサイダー』で有名なコリン・ウィルソンによる、26歳頃(1957年)の著作です。英国の靴屋の息子だった彼は、学術的な教育をまったく受けず、工場労働者や埋葬人夫などの職業を転々とし、夜は皿洗い昼は大英博物館で著述に専念。処女作が彼を一躍大作家の地位に押し上げました。
 本書により、創造的少数者の精神状態の世界を垣間見るための契機を、当時の私に与えてくれました。例えば、本書が取り上げる“アウトサイダー(反抗人)”である、カミュ、T.E.ロレンス、ゴッホ、ニジンスキー、ニーチェ、ドストエフスキー、ブレイク、スウェデンボリ、キルケゴール、T.E.ヒューム、バーナード・ショー、ヴィトゲンシュタイン、ホワイトヘッドらの世界へ。

 その後の英国では、文芸批評家としての彼の評価には激しい揺り戻しがありました。しかし、私にとって本書の価値は、何ら減ずるものではありません。
規律を重んじ、≪私の著作はアウトサイダーの秘密を解読するための修練に過ぎぬ≫(一部意訳)と彼が書いている、本書を私が読んだのは、彼が著作を出した時の年齢とほぼ同じ頃です。当時、歴史書や哲学書にも多少触れていましたので、その思索の深さと深遠な意識の世界への飽くなき探求ぶりは、新鮮かつ衝撃的でした。

 20数年ぶりに手にした本書は、どのページも黄ばんでおり、とても懐かしいものです。多忙であっても、古今東西の創造的少数者の思索・意識の世界に触れることの素晴らしさを、本書は改めて思い出させてくれました。

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