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シーズをつかめ シンクタンクが提案する再生への処方せん 
中小規模需要家の心をつかめ、エネルギーマネジメントの新潮流

出典:日刊建設工業新聞  2005年1月24日号

サービスの多様化についていけない需要家も

昨今、企業の環境意識は高まっている。特に、地球温暖化問題や近く迎える京都議定書の発効を背景として、エネルギー利用の適正化への意識は高い。しかし、工場などの大規模需要家で改善が進んでいるものの、中小規模需要家である小売業や病院等では思うように改善が進んでいないのが現状だ。その理由は、中小規模需要家はもともとエネルギーの専門家を社内に抱えていないことに加え、自らのエネルギー消費のトレンドそのものを知らないというところにある。
一方で、エネルギーサービス事業者は増加しており、省エネルギー事業(ESCO)や電力自由化等を背景とした電力供給サービスの多様化が進んでいる。既に、オンサイト型発電機のサイズは10キロワット未満まで販売されているし、05年4月からは電力小売り自由化の対象も50キロワットにまで拡大する。
このようにサービスが多様化し適正化の選択肢が増えている一方で、需要家の改善が進んでいないのは、需要家がサービスの多様化についていけないからだ。このミスマッチを解消するには、顧客の立場に立って最適なエネルギー利用を立案する外部のコンサルタント機能が必要である。

基本はエネルギーの”見える化”

エネルギー利用の改善には、三つの段階がある。「運用改善」「設備改善」「調達改善」である。
運用改善とは、エネルギー消費機器の使い方の改善のことだ。具体的には、無駄なエネルギー利用の削減(使用していない機器のOFF)や適切なメンテナンスを実施することによる劣化(エネルギー効率の低下)の防止などである。設備改善とは、エネルギー効率のよい省エネ設備・機器に取り換えることである。現状のESCOはこれに相当する。調達改善とは、エネルギーの調達方法を見直すことである。コージェネレーションの導入等のオンサイト事業や、PPS(特定電気事業者)からの電力調達がこれに相当する。
当然のことながら、改善の視点は環境性(CO2削減効果)と経済性(エネルギーコスト削減効果)だ。この効果を最大化するために、改善の優先順位がある。その最上位に位置するのが運用改善である。まず使い方を改善しないと、設備改善や調達改善で効果は出ても、その効果が限定的なものとなってしまう。そして、運用改善に欠かせないのが、エネルギーの『見える化』だ。
エネルギーの”見える化”とは、モニタリング装置を使って細かくエネルギー利用のデータを採取することから始まる。省エネルギーに努めても、なかなか効果が上がらないのは、何が問題なのか分かっていないからであることが多い。エネルギーデータをモニタリング(計測)することにより、初めて問題点を明らかにできる。
例えば、気がつかないところで無駄なエネルギーを消費していないか、省エネのための改善事項は何か、適切なメンテナンスができており所期性能がでているか、機器そのものの性能は大丈夫か、などである。こうした問題点を明らかにすることで、効率よく次の対策である設備改善や調達改善につなげることができる。

顧客の立場に立って考える

実際に、このサービスは始まっている。03年7月、日本総合研究所主宰の民間コンソーシアムでの検討成果を踏まえ、顧客サイドに立ちエネルギー利用の改善を指南する本邦初の事業者 イーキュービック(東京都千代田区、岩崎友彦社長)が誕生した。現在、イーキュービックはワタミフードサービスの展開する居酒屋など約300店舗へのエネルギーマネジメントサービスを開始し、大きな効果を上げている。

「和民」のような居酒屋チェーンは、1店舗あたりのエネルギー消費は大きくない。そのため、当然だが店舗にエネルギー管理を行える人材はいない。また、本業が顧客サービスのため、効果の見えない省エネルギー努力は後回しになる傾向にある。
この対策として導入されたのがイーキュービックのエネルギーマネジメントサービスだ。エネルギーの"見える化"で、運用改善によるエネルギーコストの削減効果を上げただけでなく、店舗スタッフの業務オペレーションの改善、さらには将来的な設備改善や調達改善の可能性も見えてきた。エネルギーの無駄の削減は、単に使う側の意識に任せるだけでは難しく、こうした"見える化"の手法の導入により、初めて相応の効果が得られるのである。
イーキュービックのような事業者に最も必要なのは、多様なエネルギーサービス事業に対する中立性である。本当の意味で顧客の立場に立つためには、ESCO、オンサイト事業、PPSといったエネルギーサービスに対して一定の距離を置く必要がある。
例えば、自らがオンサイト事業を実施していると、いくら顧客サイドに立って考えても、サービス内容が我田引水に陥ることは想像に難くない。エネルギーサービスが多様化し、その対象が中小規模にまで拡大している現在、求められているのは顧客の立場に立って考える中立的なエネルギーマネジメントサービスなのだ。

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