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シーズをつかめ シンクタンクが提案する再生への処方せん
顧客指向型の省エネビジネス  [地球温暖化対策] [電力自由化]新たな事業創出の契機に

出典:日刊建設工業新聞  2004年12月20日号

迫られるさらなる省エネ

今年11月のロシアの批准により、京都議定書の発効が確実となった。日本は第一約束期間である08年から12年までに、90年比で6%の温室効果ガスを削減する業務を負うが、現在の温室効果ガス排出量が既に90年比で増加しているため、省エネ、二酸化炭素(CO2)の排出削減は喫緊の課題となっている。 ESCO事業の導入が始まった90年代以降、受注額は毎年200%を越す伸びを示し、03年度は353億円に達している。自主的な取り組みにより既に一定の効果をあげている企業は多い。さらなる環境規制の強化が行われれば、こうした企業にとっては「乾いたタオルを絞る」ような厳しい対策が求められることになり、担当者からは悲鳴の声も聞かれる。03年の省エネルギー法(エネルギーの使用合理化に関する法律)の改正により、新たに対象に指定された病院やオフィスビルなどの業務系施設でも状況は深刻である。業務系施設では工場と違い、ボイラーや発電機など個別の機器ごとに運転やメンテナンスを外部に委託しているケースが多く、エネルギーを管理する専門家を配置している例が少ないからだ。

顧客ニーズに合わせ新たな事業が出現

95年の電力自由化以降、多種多様な電力ビジネスが生まれた。託送制度を利用した電力小売り事業、顧客に省エネ機器を導入してエネルギーコストの削減を保証するESCO事業、国家発電設備を設置して電力を供給するオンサイト事業などである。環境規制の強化を背景に、こうした新しい電力ビジネスが顧客のニーズに対応して急速な変化を遂げている。一つはオンサイト事業の変化である。これまでのオンサイト事業では「省コスト」に主張を置き、経済性に優れた石油系燃料のモノジェネを多用していた。顧客のエネルギーコストを削減することで事業を急速に拡大していったのである。しかし、CO2の排出係数が高く、粒子状物質(PM)や窒素酸化物(NOX)などの大気汚染物質の排出量が多いモノジェネは受け入れられがたい状況にあり、近年では、経済性に加えて環境性も両立できるコージェネを利用した事業に軸足を移している。更に、風力発電やバイオガス発電などをオンサイト電源に利用するグリーンオンサイト事業を手掛ける事業者も現れた。これらの電源はCO2を全く排出しないというメリットがある一方で、発電コストが高い、出力が不安定、エネルギー密度が低いといった問題があり、導入が困難と言われていたが、環境への取り組みにより企業イメージを向上させたいというニーズを取り込み、サービスを提供している。二つ目はESCO事業者のオンサイト事業への参入である。導入が始まった当初のESCO事業は、高効率設備への更新や機器の最適制御による省エネが中心であったが、近年ではESCO事業のファイナンスや契約のスキームを生かして、オンサイト事業で省エネと省コストを保証している。三つ目は電力だけでなく、蒸気や冷水なども含めたユーティリティー全般を提供するサービスの開始である。業務系施設では、ユーティリティ全般を包括的に委託することで、機器ごとの委託契約を一本化でき、わずらわしい委託手続きから開放される上、エネルギー使用状況の報告や省エネルギー計画の策定まで包括的に委託できる。包括的な委託により、機器をまたいでの最適な運転制御が可能になり、省エネの余地は広がる。さらに電気設備の高度化にともない。停電や瞬時電圧低下のない信頼性の高い電力も供給する。




環境性、経済性両立する解決策を
求められる事業者の対応力

電力会社やガス会社がESCO事業に移入し、ESCO事業者がオンサイト事業を手掛けているように、電力ビジネスの中で旧来の業種間の垣根は次第になくなりつつある。こうした変化は、多様化する顧客の要望にこたえるためのものであり、電力ビジネスが顧客指向型のビジネスに急速に転換していることの表れである。電力ビジネスの広がりによて消費者の選択肢は広がり、供給者主導であった電力市場が消費者主導に変わりつつある。電力自由化、地球温暖化対策の動向は、環境性と経済性の両立の問題を突きつけているが、それは同時に、新たな事業機会を生み出す契機でもある。経済性重視の市場では差別化が困難で価格競争に陥りがちになるが、現在求められているのは、多様化する顧客のニーズをいち早く把握して、最適の解決策を提案する対応力なのである

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