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シーズをつかめ シンクタンクが提案する再生への処方せん
廃棄物管理にICタグ活用 リスク、コスト低減を実現 将来的には経営見直しツールに

出典:日刊建設工業新聞  2004年11月22日号

揺らぐ処理業者の信頼性

01年の廃棄物処理法改正で、廃棄物の排出者責任が強化された。「最終処分の確認を怠った場合」「不法投棄した者が不明または賠償資力が不十分な場合」「排出者が過失により不法投棄されることを知らない。適正な対価を負担していない。または排出者に措置命令・費用求償することが適当と判断される場合」においても排出者が責任を負うことになった。 この法規制の強化は、皮肉にも、処理許可業者が実は危険な業者となり得ることを明らかにしたと言えるだろう。というのは、法改正後の01年度と02年度の排出事業者が直接廃棄した不法投棄量の割合は、全不法投棄量の51%から15%へと減少したものの、その一方で、廃棄物処理許可業者の不法投棄の割合は8%から46%まで増加したのである。

マニフェスト管理に限界

処理許可業者の不法投棄割合の増加は、現状の廃棄物管理の仕組みに限界があることを示すとともに、排出事業者の処理委託に対する廃棄リスクをより認識させた。排出事業者は、現状のマニフェストのような帳票ベースの事後報告でなく、廃棄物そのものが処理されたことをタイムリーに証明される仕組みを求めている。 そこで期待される一つの手法がICタグの活用である。ICタグを廃棄物の一つひとつに貼付(テンプ)することで、情物一致で処理までのトレース管理が可能となる。実際に福岡市のNPOで、ICタグを活用した廃棄物トレースの仕組みが始められている。東京都や環境省も、ICタグを使った廃棄物トレースの実現に向けた予算申請を行っている。

適正な処理をリアルタイムで把握
同業者との連携で効果

ここで問題となるのが、ICタグにかかるコスト負担をどうするかである。 大手かつ環境先進企業であればあるほど、環境に係る不祥事が起こったときの風評被害は大きい。そのため、廃棄リスクへの対応として自社から出る廃棄物の管理をより強化したいという思いが強く、ICタグで廃棄物の適正処理の徹底が実現するのであれば、ある程度の処理コストアップはやむを得ないという声がある。 一方、環境への取り組みが、まだまだこれからの中小企業にとっては、起こるかどうかわからない廃棄リスクに対してコスト負担を増加させることには抵抗があろう。 そこで注目したいのが、ICタグの情物一致という特徴を生かし、廃棄物マネジメントを効果的に実施して処理コストの低減につなげることである。廃棄物マネジメントでは、廃棄状況の診断により適正な分別区分を導き、有価物となりうるものを特定したり、圧縮機や破砕機を導入して輸送費の削減を提案する。ドイツでは、近隣の同業者と連携して廃棄物のトータル量を増やし、廃棄物業者に処理委託費の値下げ交渉を実施している例もある。わが国の中小企業にとっては、有価対象物と判断しても量が少なく輸送費と比べると割りに合わないケースがあるが、ドイツのように近隣の排出事業者と連携すれば有価で引き取ってもらうことも可能だろう。 こうしたマネジメントを実施するには、「排出物診断の実施」「リサイクル対象物の動向把握」「地域の排出事業者との連携」などの業務が必要となる。中小企業にこれら業務を遂行する一人の担当者を配置するのはコスト的にも大きな負担だ。 これらの課題に対してICタグを活用すれば、地域の排出事業者のトータルな廃棄物情報のマネジメントを実現し、地域の排出事業者の廃棄コスト全体の低減につなげることが可能である。 また、ICタグは、排出事業者の地域間の連携を想定し、様々な排出事業者の廃棄物が混載されても、排出元の確認および廃棄量が把握できる点でも有効である。

廃棄物管理は企業の持続的発展に不可欠

以上のように、ICタグは廃棄物のリスク低減とコストマネジメントを同時に満たし、将来は企業の経営状況の見直しツールとして活躍する可能性もある。言い換えれば、ICタグを活用した廃棄物管理への積極的な対応は、企業の健全な経営を持続するための「投資」である。また、排出事業者は、自らこれらの仕組みを構築する必要はない。日本総研では、ここで示した視点に基づくICタグを活用した廃棄物管理のサービス事業体の創出を目指すコンソーシアム「Matics1」を運営している。排出事業者は、事業体からサービスとして導入し、本業に注力できる体制を整えることこそ、企業経営までを考えた廃棄リスクへの本当の対応と言えるのである。

 

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