コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

メディア掲載・書籍

掲載情報

分散型電源はネットワーク化に向かう (6) 分散型ネットワークの意義

出典:分散型発電新聞 2004年8月25日

エネルギーシステムの進化形

長らく我々の生活や産業活動を支えてきた地域独占型の電力供給システムは、1995年から始まった自由化により大きな転換期を迎えている。自由化の一義的な意義は市場の競争性を高めることで、電力需要家が低廉で便利なエネルギーサービスを享受できる点にある。一方、これと並んで重要なもう一つの視点は産業創出である。これまで参入者を阻んでいた規制が緩和されることにより、新たな事業者が市場に参入し、画期的なサービスを提供することで今までにないビジネスが生まれるのだ。特に、15兆円という巨大な市場規模と安定した需要を持つ電力市場の自由化についてはこうした要請が強い。

これまで世界的なスタンダードとなってきた大規模集中型のエネルギーシステムは大きく二つの要素から構成されている。電気を作る発電機能と作られた電気を需要家に届けるための送配電機能である。日本に限らず、電力の自由化はこの2つの機能に対して全く異なる方向性をとっている。すなわち、発電機能については新規参入を促進して競争性を高める一方、送配電機能については全ての発電事業者が公平に使えるインフラとするのである。もちろん、市場の競争性を高める以上、こうした政策にも相当な効果が期待できるのだが、限界もある。電力事業の資産の半分程度を占める送配電関連の資産が市場の競争に晒されないからである。大規模集中型のエネルギーシステムが続く限り、自由化で発電分野に新しい技術やサービスが次々と生まれても、送配電分野の技術やサービスの競争は極めて限定的となる。
これに対して、分散型エネルギーには市場競争を高める効果がある。完全に独立した分散型エネルギーでは送配電施設を通さずに電力を需要家に供給できるので、理論的にはエネルギー供給のための全資産を市場競争の中で整備することができるからだ。分散型エネルギーの代表的なシステムであるコジェネレーションの伸びを見ると、1990年後半以降勢いが増していることが分かる。もちろん、電気だけでなく熱も使えるというコジェネレーションのメリットが需要家に受け入れられた、環境志向が高まった、という需要サイドの理由もあろう。しかし、この時期のコジェネレーションの伸びには、1995年の電気事業法改正で自家発電代行事業が開放された、という供給サイドの理由もある。
1995年以来3度にわたって行われた電力の自由化により、IPP、PPSなどの市場に多くの企業が参入したが、コジェネレーションに代表される分散型エネルギー分野の事業者の動きは最も活発に見える。それは、分散型エネルギービジネスが、送配電資産による制約が小さく、事業者の創意工夫が発揮しやすい、という特性を持っていることと無縁ではあるまい。

電力を中心としたエネルギーシステムは経済活動のまさしく根幹である。現代社会が継続する限り、エネルギー市場は旺盛な需要に支えられるに違いない。しかし、一方で、エネルギーシステムは様々な課題に取り巻かれている。エネルギー資源の継続性の問題、環境問題、近年注目されているリスクマネジメント、日本においては人口減少問題、等々である。こうした問題と上手く整合しながらエネルギーシステムは進化していかなくてはならない。そのためには、多くの事業者が知恵を出し合う競争的な市場の存在が今まで以上に重要になる。長い時間をかけて構築された大規模集中型エネルギーの資産の重要性に異を唱えるつもりは毛頭無い。しかしながら、エネルギーシステムの進化を占うにおいて、自由で競争的な市場を創出し得る分散型エネルギーに期待するところは大きいのだ。

 

メディア掲載・書籍
メディア掲載
書籍