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けいざい講座 IPP 独立系発電事業者 重要性増す環境・効率性

出典:読売新聞 2004年8月23日

日本の電力市場は、全国を十地域に分け、各地域で東京電力などの電力会社に独占的な事業権を与える地域独占型の形態をとってきた。電力会社は、競争にさらされない反面、地域内で確実に電力を供給することが求められた。この体制が産業活動を支え、日本経済の発展に貢献したことは間違いない。だが、電力料金がアメリカの2ー3倍に上る高コスト体質を生む原因にもなった。こうした点を踏まえ、市場に競争原理を取り入れるため、1995年から電力市場の自由化が段階的に進められている。

進む自由化

95年に行われた第一次の自由化では、電力会社に電気を卸売りする卸電力事業や、自家発電を代行する事業などが、一般事業者に開放された。2000年の第二次自由化では、一般事業者が、契約電力二千キロ・ワット以上の工場や大型オフィスビル、ホテルなどに小売りする事業が自由化された。さらに、今年は第三次の自由化が行われ、小売り事業の範囲が同5百キロ・ワット以上に拡大され、中規模の事務所や商業施設にも電力の小売りが可能になった。来年には、小売り事業の範囲が同50キロ・ワット以上に拡大されることが予定されている。

高まる期待

この電力市場の自由化には、多くの企業が注目している。電力需要が安定している上、市場規模が15兆円と巨大なためだ。実際に、自由化は様々なビジネスを生み出しているが、中でも、自由化のトップバッターとして登場した卸電力事業には、当初から期待が集まった。 卸電力事業を営む事業者は、IPP(Independent Power Producer=独立系発電事業者)と呼ばれる。IPPには、従来から自家発電設備を持っている企業や、発電設備を作るための広い事業用地を持っている企業などが相次いで参入している。具体的には、新日本製鉄、神戸製鋼所、JFE、住友金属工業、太平洋セメント、住友大阪セメント、新日本石油、出光興産などで、最近も新たな発電設備を稼動させる動きが目に付く。これらの企業にとって、本業が成熟する中で、既存の事業資源を使って発電事業という確実なフロンティアに進出できる魅力は大きいと考えられる。電力会社側にも、低コストで電力を確保できる利点がある。

PPSとの差

だが、IPPは、どんな企業でも簡単に参加できるビジネスではない。過去には環境対応のためのコスト負担の重さから事業を断念した例や、IPPを当て込んで発電設備を作ったものの、IPPとしての条件を満たせなかった例などがある。また、市場が一本調子で拡大し続けている訳ではない。IPPの市場は、96年には約250万キロ・ワット、97年には約300万キロ・ワットといった規模だったが、 98年以降は減少に転じている。電力会社からの新規募集がなかった年もある。IPP市場は、電力会社の電力調達計画に左右される性格を持つ。同じく電気を売るビジネスとしては、2000年以降に登場したPPS(Power Producer and Supplier=特定規模電気事業者)が挙げられるが、IPPとは事業の性格が異なる。 PPSは需要家に直接、電気を売ることができるため、電力会社の調達計画に左右されることもないし、卸売りに比べて高い価格で電気を売ることができる。一方で、PPSは発電した電力を期待した単価で売りさばける保証はないが、IPPは契約どおりに電気を供給していれば、もくろみ通りの収入が得られる。IPPはPPSに比べ、「ローリスク・ローリターン型」のビジネスといえる。このため、IPPは電力の販売リスクは取りたくないが、計画通りのコストで発電設備を建設、運営する力のある企業に有利なビジネスモデルといえる。

今後占う要素

今後のIPPを占う重要な要素は「環境」だ。これまでは安価な重油などを燃料に使ったIPPが多かったため、環境への悪影響を指摘する向きもある。太陽光や風力などの自然エネルギーをはじめ、環境に優しいエネルギーの普及が進められる中、今後はIPPも環境についての配慮が不可欠になる。実際、バイオ燃料を使ったIPPを検討する企業も出ている。電力自由化の旗手として登場したIPPだが、効率性、環境などの面での競争力を向上し、電力市場の中での位置づけを明確にすることが重要になっている。

 

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