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シーズをつかめ シンクタンクが提案する再生への処方せん
地域ニーズくみ取った提案がカギ

出典:日刊建設工業新聞 2004年6月7日号

自治体に求められる ”モニタリング力”



避けられない民間への市場開放



今後のPFI市場では地域ニーズをくみ取った付加価値の高い提案が成功の鍵となると思われる。これは、今後ますます地方自治体の公共サービスの開放が進み、民間の役割が大きくなるためである。

広がる公共サービスの民間開放



PFI法が成立して5年が経過、地方自治体ではPFIの導入が進んできた。実施方針の策定数は150近くにものぼっている。最近では、PFIのみならず、PPPへも裾野が広がっている。PPPというと、駐車違反の取締業務のような行政サービスが挙げられることが多いが、廃棄物処理分野や上下水道の分野でも、最近では長期責任委託と呼ばれる投資を伴わない長期の委託が注目を集めている。
このように、公共市場における民間開放はもはや後戻りのできない大きな流れの中にあると言える。しかし、多くの自治体において、まだPFIはコスト削減のための一手法としかとらえられていないのではないだろうか。アドバイザリー業務を受託している自治体の現場職員から「民間に任せた後の我々の仕事は一体どうなるのか」という声を聞くことがある。こうした自治体職員の不安は、PFIの導入後に自治体がどのような役割を担うべきかが明確になっていないことの裏返しではないかと感じる。

変わる自治体の役割



従来、公共事業は自前主義を前提として、公共が業務の仕様を1つ1つ決め、サービスの実施主体にもなってきた。PFIでは、サービスに求められる水準を定め、性能の発揮を条件とした契約を結び、業務の実施方法は民間の創意工夫に任せるというものだ。当然、自治体に求められる役割も変わってくる。
1点目は、公共サービスを民間に委ねるに当たって、公共は公共サービスに求められる内容を明確にするという役割を担うという点だ。従来の委託では、政策目標(アウトカム)の共有が行われていなかった。PFIを進めるに際しては、より高位の政策目標の共有が必要になってくる。例えば、廃棄物分野では、処理施設の運営を任せるといったものから、地域のリサイクル率を上げる、住民満足度を高めるなど、政策目標の達成をそのまま民間事業者の要求水準とする方向が望ましい。
2点目は、適切な遂行能力を持った事業者を選ぶことである。事業者の選定方法をめぐっては、制度が追いついていない面がある。例えば、現在の入札制度では、あらかじめ公共側が細かい仕様を規定することが前提となっている。しかし、PFIでは民間を提案を確認・評価しながら事業者を段階的に絞りこめるような仕組みが必要である。
3点目として、サービスが適切に履行されていることを確認するためのモニタリング業務が挙げられる。事業の開始後、サービス内容を確認・評価し、適正な水準が確保できるような監視体制や監視のノウハウが必要となる。
しかし、こうした知見はまだ十分に整備されていないのが現状である。こうしたことから、民間にすべてを委ねた結果、業務がブラックボックス化し、責任だけが自治体に残るのではと不安を抱えている自治体も多い。そこで、このような分野では、自治体の監視をサポートできる受け皿体制・機関が必要となる。
以上のように、PFIに関してはまだいくつかの課題があり、現状のPFIは構造改革を推し進めるにはまだ十分なものとはなっていない面もある。今後は、PFIやアウトソーシングの導入に際して重要と考えられる事業モデルや、新たな事業者選定方式や、監視のための受け皿機関についての検討に本腰を入れる必要がある。

地域活力生かした事業モデルを



PFI事業においては民間企業による付加価値の高い提案が重要になる。これまでのように、公共が仕様を決めて、その範囲で実行すればよいのではなく、政策目標や地域ニーズをくみ取った提案力が差別化のカギを握る。PFIが導入されると大企業の独壇場になり、地元の中小企業は淘汰(とうた)されるといった声も聞かれる。確かに英国でPFI市場は寡占市場となっている。
しかし、地方分権が進めば公共市場は今以上に地域ニーズが反映されることになる。これまで携わったPFI事業でも、多くの自治体は地域への貢献を行う事業者を評価したいと真剣に考えている。だからこそ、民間事業者には、いかに地域のニーズに沿った提案を行い、地域の発展に貢献する事業を実施していくかといった視点が必要となる。
これからは必ず地域の時代になる。地域の利益を考えた提案は、地元の企業にとって得意な分野であり、この強みを生かした提案こそが付加価値につながる。今後のPFI事業は地域の企業の役割がますます重要になると考えられる。地域の活力を生かした民間企業の事業モデルこそが今求められているのだ。

 

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