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成功のリサイクルはビジネスモデルの構築が秘訣
情報の共有化によるマッチングがマーケットを醸成する

出典:環境ビジネス 2004年3月号


廃棄物の再資源化が重要との認識から様々な企業や自治体がリサイクルに取り組んでいるが、成功している例は少ない。「成功するリサイクルは、まずビジネスモデルがしっかりできている。モノからの発想では厳しいと思います」と話すのは、日本総研創発研究センターの木通秀樹主任研究員。どれほど素晴らしいリサイクル商品を製造したとしても、マーケットが確立されてなく、仕組みとしては成り立っていなければ、流通することは難しいからだ。しかし、最近ではマッチングなど、リサイクルのマーケットを醸成する動きも活発なようだ。成功のリサイクルと失敗のリサイクルについて話をきいた。

廃棄物を出す側と受ける側 ITを駆使した仲介ビジネス

木通 リサイクルのパターンとして、成功と失敗は一概には言えませんが、モノが集まりやすい、お金が付きやすいという非常に基本的な部分と、ビジネスモデルがしっかりしているかという部分が大きな分かれ目だと思います。業種別に最近の動向を見ると、大きな枠組みがあることが分かります。
赤石 新しい流れとしては、廃棄物を出す側と受ける側をマッチングする会社が注目されています。産業廃棄物の場合、排出事業者としては、リサイクル政策が厳しくなった結果、以前は焼却処分していたごみでも、適正に処理しなければならなくなっています。しかし、これまで排出業者と、受ける側の収集運搬業者や処理業者、処分業者とは相対で契約していましたから、排出する側はどこが適正に処理しているか、もしくはどこが安いか、あまり理解していませんでした。そこでマッチングを行うビジネスがでてきたわけです。例えば、ITを駆使した電子商取引のような形で、ビジネスモデルを構築しようとしています。マッチング会社のうま味は、ごみを流通させるだけで終わらないところです。出す側と受け側の困っていることが分かりますので、経営コンサルティング的な仕事にまで広がっていくのです。

質や技術も求められるがビジネスはまずマーケットありき

赤石 一方、廃棄物を出す側のビジネスモデルとしては、ソフト系が中心で、ISOの取得やコンサルティング、分別の最適化などがあげられます。受ける側はハード指向が強いです。マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクルでは、施設を作り、破砕機や焼却炉をはじめとする設備を運営して、最終処分量の減量を行い、リサイクル製品として商品を生産しています。実態としては、民間が主導する場合と公共が関与している場合がありますが、民間では建設リサイクル系の会社や産廃事業者は、リサイクル率を高める破砕に力を入れ、新しいシステムを構築しようとしています。こうした現状のなかで、ビジネスの観点から見ると、リサイクルは質や技術が求められますが、それで商品が売れると過信している面があると言えるかもしれません。基本的にビジネスは、マーケットがあって、モノがあり、売るための戦略が必要となります。しかし、マーケットを知ることなしに、技術面から入る例が少なくありません。

作れば売れると幻想を抱く 失敗のリサイクルの典型

木通 本当に多いですね。最近の例ですが、食品関連のリサイクルの場合は飼料化やたい肥化の話になります。日本中に農家があるのだから、使ってくれるだろうと、幻想を抱くわけですね。しかし、実際に利用する農家は少ない。園芸業者も同じです。単なるマーケット調査ということだけではなく、自ら打って出ようとするビジネスのマーケットのなかでの位置づけや、商品の量、質、流通経路などを踏まえたビジネスモデルを構築しきれていないケースが目立ちます。誰が、いくらで、どれだけの量を買ってくれるのかを決めてから、リサイクルビジネスを始めなければならないところですが、いい商品ができれば売れると思いこんでしまうところが問題です。失敗のリサイクルの典型と言えるでしょう。
赤石 成功するリサイクルは大きく2つあります。1つは、そもそもニッチ産業で誰も参入できない分野です。もう1つは、マーケットシェアをどれだけ拡大できるかです。結局は、信用力とブランド力という面があります。例えば、排出業者からすると社会的責任も問われますから、信用力とブランド力がある処理業者がマーケットシェアを拡大し、利益を伸ばすことになります。失敗するリサイクルは、処理コストと買い取り価格の下落が原因と言われます。過当競争になることがあるからです。実際、同じような技術で、同じような品質であれば安いほうがよいですからね。一方で、プラント施設は、施設の年数が経てば、維持コストは上がります。しかし、マーケットとしては、処理委託費が下がってきていますので、経営が成り立たなくなってきます。特に、環境の規制が厳しくなっていますので、設備投資の負担が重くなっている面もあります。ですから、ハード指向型のリサイクル会社が倒産するケースが出てきています。

コストが下がればマーケット拡大 情報の共有化でリサイクルが加速!?

赤石 成功するリサイクルのあり方として、特殊技術と品質がある程度担保できるほどであれば、過当競争になることもなく、価格も維持できます。ただ、いずれ過当競争になると考えれば、イニシャルコストとランニングコストをどう下げるかが課題となります。このため、原価償却済みの施設や遊休施設を利用するなど、工夫したケースが増えています。また、信用力を高めるため、複数の企業がネットワークを構築し、強い財務基盤を固め、受け側の会社を立ち上げるケースも見られます。ネットワーク型のメリットは、トータルソリューションが提供できることです。それぞれのリサイクル施設は分散されていても、受けるのは一元的に請け負うわけです。出す側の企業としても、一括して契約できるのでメリットがあります。
木通 リサイクルビジネスの今後を展望すると、これまでマッチングが行われていませんでしたが、これから改善していくことは間違いありません。これまでリサイクルは、コストがかなり上乗せされていました。このコストが下がらなければ、ビジネスとしては難しく、逆にコストが下げればマーケットが広がっていきます。このコストを下げる努力が行われるのが、これからの段階です。そして、マッチングが活発に行われていくとともに、廃棄物のリユース、リサイクルの情報共有化の進展が、これからの大きな流れだと思います。そうなると、リユース品やリサイクル品のマッチングがより積極的に行われ、マーケットが拡大していくと思います。これまでなかったマーケットが醸成されるわけですから、失敗のリサイクルの要因であったマーケットの確保が改善される可能性が高くなります。当社でも、中古品や中古部品などすべての静脈物流をターゲットにした大規模ネットワークを構築しようとしています。これはICタグを利用し、資源循環の仕組みの変革を狙ったもので、この1月にコンソーシアム「Material Tracing IC System(MATICS)」を設立しました。やはり、成功のリサイクルのポイントは仕組みであり、ビジネスモデルをいかに作り上げるかが秘訣ですね。

 

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