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注目集まるSRI、社会的責任投資、「誠実な会社」株価は上昇!?

出典:読売新聞 2003年11月24日

企業の社会的責任 国際標準化

「企業の社会的責任(CSR)」という言葉を最近目にするようになってきた。その背景には、「グローバリゼーションの進展に対する不安」がある。
「価値のある製品やサービスの提供が企業の社会的責任である」、「利益をあげて納税することで、企業は社会的責任を果たしている」などの言説はそれぞれ正しい。しかし、多国籍企業が、世界中で市場を開拓し、生産拠点を作り、資材や部品を調達する時、経済的価値だけを過度に優先すれば”負の側面”が必ず現れる。環境破壊や労働環境の悪化、雇用の不安定化、地域での所得格差の助長、製品の安定性の欠如などがそれにあたる。
「国家よりも存在感を増した企業に、ビジネスの論理プラスアルファを考えてもらわないと、負の側面が世界に拡散してしまう」という警戒感が強まり、現に先進国で企業の不祥事が頻発している。企業への信頼感が著しく低下していることが「企業の社会的責任」論の原点にある。
欧米では、政府やマスメディアに代わって企業を監視し、その行動を是正させる役割を果たすNGO(環境保護、消費者、株主団体など利害関係者を含む)の発言力が増している。そのNGOからも企業に、自然環境の保護や労働環境の向上、雇用の確保などの社会的責任を求める声が高まっている。
こうした状況を踏まえて、世界の先進企業には、「社会的責任」を積極的に果たすことで、リスクマネジメントを強化し、他社との競争優位を築こうと考えるところが出てきた。しかし、個々の企業が勝手に社会的責任への対応をアピールしても、信憑性に疑問が残る。そこで国際的な統一規格作りの機運が台頭してきた。

規格作り 高まる機運

国際標準化機構(ISO)は、2001年4月から「社会的責任」に関する国際規格制定に向けて議論を始めた。環境マネジメントの国際規格(ISO14001)などと同様の「社会的責任」マネジメント版を作っては、という議論である。
議論は当初、ISOのなかの「消費者政策委員会」で開始された。消費者が製品の安全性の危機にさらされることなく、「社会的責任」を積極的に果たす企業を正しく選択できるよう「規格」を作ろうというのが動機となっている。現在は発展途上国を含む各地域代表と経済界、労働界、消費者団体、NGOなどで構成される「助言グループ」で議論が行われている。
国際規格は、主として、企業が社会的責任を果たすための仕組みや体制を規定するマネジメント・システムの規格となる。その議論の焦点となっているのは1「社会的責任」の内容をどの程度特定するのか2規格を企業による自己宣言の基準として使用することとし、第3者による認証は行わないという方針が最終的に採択されるかどうかーという2点である。
経済界は「社会的責任」の内容を特定せず、自己宣言の基準とすることを主張している。一方、労働界や消費者団体、NGOには「社会的責任」の内容を特定し、第3者認証も視野に入れるべきだとの意見が強いと言われる。
また、発展途上国には、規格を満たさない企業の製品が先進国市場から排除されるといった形で、規格が非関税障壁となることへの懸念もある。
ISOは2004年4月までに最新事例と課題を取りまとめたうえで、同年6月に制定の是非の最終判断を下す予定だ。しかし、利害関係者の関与は規格制定をめぐる議論の基調を成すものと思われ、議論が収斂するには相当の時間が必要との観測もある。
ISOの動きに、日本企業も敏感に反応している。日本規格協会は2002年12月にCSR標準化委員会を、今年10月末には日本規格(JIS)を検討する作業部会を設置して、対応策の検討を続けている。日本経団連の関連組織である海外事業活動関連協議会も昨年から「ISOにおけるCSRの規格化に関するワーキング・グループ」で議論を行っている。
ISOの議論の結果によっては、日本企業にとって新たな取り組みが必要となる可能性もある。国内規格検討の進展を含めて、今後の展開が大いに注目される。(図は略)
 

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