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商業ステージに入る 定置型燃料電池 -6-

出典:日刊工業新聞 2003年9月4日

ホンダが開発した1キロワットガスエンジンでの家庭用コジェネレーション(熱電併給)システム「エコウイル」が今春の販売依頼、順調な伸びを続けている。価格は75万円だが、20万円補助が付き、実質55万円に下がってきている。加えてガス料金が割安に特別設定されている。この化石燃料使用のオールドファッションなコジェネは家庭用FCが今後どう普及するかを占う1つのカギを握る。

参考は太陽光発電

家庭用FCが伸びてくるのは07年から08年以降とも見られ、最初の実用化に向け国も補助をどうするか検討に入っている。エコウイルと同じような補助とはならず、太陽光発電が参考になってこよう。太陽光は1キロワット当たり300万円から補助が始まった。「FCも最初は250万ー300万円が補助の目安となろう」(関係者)と予想する。ではその額に2分の1か3分の1を補助するのか、各社のコストダウンへの努力と相まって価格設定はまだ流動的だ。日立製作所は電極膜やセパレーターといった重要構成部品を70分の1から100分の1もコストダウンする新材料開発を並行させながら、05年以降の特定ユーザーへのサンプル出荷を目指すシステムの開発を進めている。「一番の問題はコスト。材料からシステムまでの総合研究でコストを大きくブレークスルーして差別化していく」(青野泰久日立研究所燃料電池部部長)戦略だ。

国が補助の検討開始 独立電源でエネ自立

「04年春には低コスト化仕様のサンプル出荷に入る。その段階で単品手作りで1キロワット500万円は実現したい。耐久性を含む低コスト化で、副作用のない『手抜き』を見極めていく」(吉田博久三菱重工業PEFC開発センター長)と量産化でのコストを切り詰めようとしている。

ブレークスルー

エネルギー総合工学研究所がまとめた定置型FCの普及と採算性の試算によると、熱需要に合わせた利用が合理的で、都市ガス改質FCでは05年で75万円で販売しないと、2020年で同30万円まで下がらないと予測した。120万円程度だと、30万円までの低下は並大抵では実現しないとの見方だ。「今の技術開発での累積生産量ではトータルコストを大きく下げるのは大変。このため効果的にコスト削減できる課題解決に集中して取り組み、技術的ブレークスルーを達成しないと」(福田健三プロジェクト試験研究部専門役)と、今の延長線ではFCコストは大きく下がらないと指摘する。

新しいツールに

分散電源のFCを普及させていくのに、系統に頼るのではなく、原則自給で、自らの需要を賄うといった新しい電力供給形態がFCには考えられる。日本総合研究所はFCメーカー、住宅、エネルギー関連の30社の参加を得て、DESSコンソーシアムを発足、FCでエネ自立するモデル作りに乗り出した。FCなど分散電源を統合制御し、電力系統からは独立するシステムだ。対象は単一施設、単一区域となる。FCは最小単位規模で各家庭に1台ずつ設置し、需給一体化を実現することにより、FCを使う側の省エネへの行動の変化が期待できる。DESSコンソーシアムは発電者と需要家が一体となることが最も効果的と判断している。家庭での電気使用ピークが2.8キロワットとしても、ピークをずらした運転でその半分で十分といったデータも得ている。こうしたデータを元にFCで独立していくモデルをまとめていく。電力の完全自由化もバックに、FCはほかのエネとのハイブリッド化も加え、新しい電力供給システムを創造していくツールとなってくる。

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