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"自治体発"環境問題ゼミナール(1) 「地球にやさしい自治体」ランキング

出典:THE21 4月号

「地球にやさしい自治体ランキング」-2003年度版

「地球にやさしい自治体」ランキングは今年で第3回目を迎えた。ランキングの認知度も向上し、第2回の後には、都道府県の環境政策担当の方から様々な問い合わせを頂いている。「自分たちの環境政策の取り組みを見直すことにつながる」「客観的な評価は参考になるので、毎年続けてほしい」という好意的なご意見の一方で、「実際は取り組んでいる活動であるが、公表していないだけで評価されていない」「もっと評価対象として妥当な指標があるのではないか」という、ご意見もあった。確かに、過去2回の調査では、各都道府県の環境白書及びホームページ、省庁が取りまとめているデータなど、あくまで公表情報を分析したため、都道府県の環境政策担当の方にとっては正当な評価と感じてもらえなかったと思う。 そこで、今回の調査実施においては、各都道府県の環境政策担当者を対象に、web上でアンケートを実施した。実施要領は次のとおりである。
1.期間・・2003年2月5日~2月14日
2.対象・・都道府県環境政策担当者
3.方法・・・webアンケートを実施するため、各都道府県のホームページで公開されている環境政策担当者宛に電子メールで依頼。
4.回答率・・・38/47都道府県。
うちわけとして、web上で回答をいただいた都道府県数32、FAXで回答いただいた都道府県数は6、回答いただけなかった都道府県数は9、である。 基本的に、アンケートの項目のうち、公開されている情報をまず当方で調査し、回答できる箇所を予め埋め、各都道府県の担当者には、その回答内容の確認と足りない点の追記をしていただいた。なお、回答をいただけなかった都道府県の回答内容は、従来どおり、公開データから調査して得られた範囲のものである。

質問項目に関しては、前年実施した項目とほぼ同一であり、指標としては次の6つとした。

1.地域環境政策
2.地域自治体コミュニケーション
3.自治体環境管理
4.自治体行動計画
5.自治体行動進捗
6.地域住民の環境への取組み

評価軸に関しては、前述の6つの指標を前年同様に次の3軸に集約している。

1.都道府県が主体となって進める環境取り組み状況
2.都道府県において環境への取り組みが進んでいる市町村の割合
3.都道府県が所轄する環境保全を目的としてNPO法人格の割合
この3軸の詳細は下の表のとおりである。なお、今年は配点のウエイトを若干変えている。それぞれの満点は、1が65点、2が30点、3が5点である。昨年は、1が70点、2が20点、3が10点であった。市町村の値の配点ウエイトを大きくした理由として、都道府県の取り組みが進んできているため、今後市町村に対しても、環境への取り組みを進めていく段階であると判断したからである。ランキングを次ページに示す。

[評価軸の解説]

■地域環境製作軸
1.環境基本条例、2.環境基本計画、3.地球温暖化対策 (実行計画、地域推進計画、推進センター、活動推進委員委嘱) 4.環境行政従事職員率、5.環境関連の組織加盟 (環境自治体会議、20%クラブ、国際環境自治体評価議会(ICLEI)) 
■地域コミュニケーション軸
1.環境専門のHPの有無、2.環境白書の開示状況、 3.環境教育政策の実施(自然保護、公害、リサイクル、学校教育、 こどもエコクラブ、環境保全活動、環境学習施設)
■自治体環境管理軸
1.ISO14001の取得状況
■自治体行動計画軸
1.率先実行計画における数値目標の有無 (項目:グリーン購入【用紙、公用車、文具品、容器包装、燃料】 、 省資源【用紙類、バージンパルプ、水、電気、公用車燃料、その他燃料】 、 廃棄【舞器物削減量、廃棄物のリサイクル、資源化】) 
■自治体行動進捗軸
1.率先実行計画の進捗の把握状況 2.率先実行計画の進捗の改善状況 (項目については、「自治体行動計画軸」と同様)
[市町村(取り組みの割合)]
■環境基本条例の有無 ■環境基本計画の有無 ■地球温暖化対策実行化計画の有無
■環境関連団体への参加状況 ■ISO14001の取得状況 ■率先実行計画の有無 
[NPO(団体数の割合)]
■環境保全を主目的としたNPO法人の割合

「地球にやさしい自治体」ランキング・ベスト5

第1位 三重県
V3達成。特に県の支援のもと、市町村の取り組みが進んでいる。来年には全市町村でISO14001の認証取得がされると思われる。今後も、地域および全国の環境活動を進めていく牽引者として期待したい。
 
第2位 東京都
一昨年8位、昨年10位、今年2位である。市町村の環境基本計画の整備、ISO14001の認証取得も着実に進み、地に足の着いた地域に対する環境政策が進んでいるといえよう。

第3位 滋賀県
一昨年12位、昨年4位、今年3位と着実に順位を上げている。都道府県の取り組みとしては、topの三重県をしのいだ。今後は、県内の市町村の取り組みを如何に進めていくかが問われるところ。
 
第4位 秋田県
一昨年44位、昨年27位、今年4位である。このような大幅な順位の変動は、実際は実施している環境政策について、情報が公開されていなかったことがあげられる。今後は、情報を積極的に公開し、如何に地域に対して説明を行っていくかが課題となるであろう。

第5位  岩手県
一昨年27位、昨年11位、今年5位である。着実に順位を上げており、市町村におけるISO14001認証取得が昨年度から先進的に進んでいる。また、NPOの活動も盛んであり、地域の環境意識は高い。バランスのよい環境への取り組みが実施されている。

都道府県の取り組み評価

上位5団体は、滋賀県、三重県、東京都、秋田県、山口県である。それぞれ、自治体行動計画軸、自治体行動進捗軸で高得点を獲得しているように、数値目標を設定して庁内の環境負荷活動を管理し、改善を目指し、結果を出している。環境に関する方針や、計画の段階は既に終了し、環境パフォーマンスを如何にあげていくかに力をいれ、結果を求めている段階であると考えられる。 一方、下位の都道府県においては、この自治体行動進捗軸の得点が低い。今後都道府県の取り組みとして差が現れてくるのは、この自治体行動進捗軸であらわされる「自らの事業活動における環境負荷を低減していく取り組み」が実践できているかどうかにかかわってくるであろう。

市町村の取り組み割合

上位5団体は、三重県、神奈川県、東京都、大阪府、長崎県である。三重県は、県内の市町村の70%強がISO14001の認証取得している。これは、全国平均が10%程度であることを考えれば、飛びぬけた数値であると理解できるであろう。ISO14001に関しては、昨年も全国平均が5%以下と他の政策に比べて低かったため、市町村レベルで如何に導入を進めていくかが全国的な課題になると指摘させていただいていた。これに対する三重県のすばやい対応には驚かされた。ISO14001は、環境管理の視点だけでなく、正しく運営されれば経費削減にもつながることを考慮すると、今後も注目しておきたい評価軸である。

NPOの割合

NPOの割合における配点は、環境保全を主目的とし、法人格を取得しているNPO団体の数を、都道府県人口で割った値を活用している。もっとも高い値となった都道府県を満点の5点とし、その割合から各都道府県の値を算出した。結果、上位団体5は、東京都、三重県、山梨県、群馬県、鳥取県、となった。総合ランキングの中位である山梨県、群馬県、において、NPO活動が盛んであることは以外であった。

[本調査の本来の目的]

今回、本調査の実施にwebアンケートを採用したのは、次の3つのことを実現したいとの意図があった。
1.環境政策の進捗度を測る仕組みの創出
2.環境政策を進めるインセンティブを確保する仕組みの創出
3.環境政策を評価する妥当な指標の創出 
1.の「進捗程度を測る仕組み」とは、各自治体が進める環境政策について、一定の評価項目を作成し、各市町村における各々の項目の取り組み状況を蓄積・比較する仕組みである。このような比較が可能となれば、市町村にとっては取り組みの内容や目標の設定等に役立つと期待される。  具体的に、3年連続でtopを獲得した三重県の環境政策担当の方は、「ランキングでトップという成績を頂きながらも、2001年においては、100点満点のうち51.52点と約半分しか取れていなかったことにショックを受けた。
早速、残りの48.48点に関して徹底調査を実施し、対応した結果、自らの環境政策の取り組みを見直すことができた。特に、環境コミュニケーションの取り組みにあたるホームページ「三重県の環境」は毎日更新することを心がけ、アクセス数が月1万件から、月63万件まで飛躍的に増加した。どの都道府県においても、環境政策への取り組みに決して妥協しているわけではない。今回のランキングのような外部からの客観的な評価が得られたことで、進めている環境政策の有効性や妥当性、方向性を確認でき、改善に役立った。」との意見を頂いている。
webアンケートも、自分たちの取り組みと他の都道府県の取り組みを比較でき、取り組みの弱いところや改善点を把握できるよう配慮した。
次に、2.の「インセンティブの確保」について説明したい。今回のランキングを見ていただけるとわかるとおり、上位よりもむしろ、下位の都道府県のほうが、比較的自然環境が残り、「環境が良い」というイメージが高い。実は、このような先入観が根強いことが、自治体における環境政策への取り組みを阻害する一因になっていると考えられる。この点に関しても、三重県の環境政策担当の方から次のようなご意見を頂いている。「県庁見学に来る住民のみなさんに「環境がいい自治体」ってどこでしょうね?という問いかけをすると、多くの方が、もともと自然環境が良い地域を答える。
しかし、実際には、産業公害を一生懸命克服している自治体の方が、環境政策も進み、職員の問題意識も高い。現場職員の取組を客観的に評価し、インセンティブをいかに高めていくかは重要な課題である」 このコメントにもあるとおり、環境政策を進める自治体の現場職員におけるインセンティブを高めるためには、1.で述べたように、一定の評価軸を環境政策という観点から構築し、その評価軸で各自治体の取り組みを評価した上で、その評価結果を公の場に公開していくことが有効であると考えている。
その意味で、このwebアンケートの回答結果は、インターネット上で一般にも公開して行きたい。
最後に3.の「妥当な指標」であるが、これは1.と2.の根底であり、もっとも重要であると考えている。環境への取り組みとは、本来競い合って実施していくものとは考えていない。環境に関する取り組みは、同様の立場である担当者の皆さんが共有しあい、効率的、効果的に全体の向上を目指していくことが望ましいと考えている。したがって、本ランキングでは、自治体における環境への取り組みに関して最適な評価軸の模索を毎年行っていきたいと考えている。
実際、今回webアンケートを実施したおかげで、各担当者とやり取りをする機会を得られた。そこではさまざまな意見を得ることができたので、数点紹介したい。
*この調査では、環境分野で大きな課題となっている廃棄物分野等の項目がはずれている。「地球にやさしい」をどのように規定していくか検討する必要がある。 
*率先実行計画においては、何をもって率先実行計画をするのか。地球温暖化対策実行計画と重なってもいる。環境省では、既に率先実行計画という言葉は使わないように検討していると聞いている。
*各都道府県もそれぞれの考え方で、環境保全に取り組んでおり、一律の質問のYES、NOだけでは、判断できない部分がある。 
*「環境関連の組織加盟状況」においては、首都圏に根差した組織が中心である。これでは、各自治体の地域によって有利・不利が出てくる。 
*NPOの数で地域住民の環境意識を測る指標とすることは問題があるのではないか。 
*率先実行計画で取り上げている項目以外についても検討してよいのではないか。 以上の意見は、来年の指標を検討するうえで大いに役立てていきたいと考えている。 
今回の調査を進める上で、電話、メールにて担当者から多くの問い合わせを頂いた。その都度、以上の趣旨を真摯に説明させて頂いたところ、「その考えや取り組みに共感する」「積極的に協力していきたい」とのポジティブなお言葉を頂けたことは、本ランキングを進める上で非常に勇気づけられたし、継続的に進めていくことに意義があると感じた次第である。

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