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民間全面委託で効率化 公共施設運営に新手法 石川・RDF焼却炉

出典:朝日新聞(関西版) 2003年1月16日 ※無断転載を禁止します

石川県の自治体の共同ごみ処理施設で運営を民間企業に全面的に委ねる新方式「長期責任委託」が全国で初めて始まっている。公共施設の管理や補修を、長期間にわたって企業の裁量に任せることで効率化し、コストを大幅に引き下げる手法だ。財政難に苦しむ多くの自治体が熱い視線を投げかける一方で、有害物資の管理責任や運営の透明性確保など、課題も少なくない。(野島淳、金沢支局・上田学) 
能登半島のほぼ中心にある石川県志賀町。能登有料道路・上棚矢駄インターチェンジ近くに、一般ごみの固形燃料化(RDF)を焼却する専用焼却炉がある。同県北部の24市町村から運び込まれるRDFを1日160トンまで焼却でき、昨年11月末から試運転を始めた。 事業主体は、24市町村で作る「石川北部アール・ディ・エフ広域処理組合」。 だが、運営は建設した日立造船に15年契約で委託した。
稼動後に発生する想定外のトラブルや補修は、すべて同社が責任を負う契約だ。同組合が県外の事例を参考にした試算では、自前で15年間運営すると費用は100億円を超えた。これに対し、同社が提示したのは約70億円。人件費や維持費の低減効果が大きいという。 環境省に調査によると全国のごみ処理施設では処理量でみて7割以上を民間委託している。ただ、自治体の指導で企業が業務を行う形だったり、契約も単年度だったりして、企業側の創意工夫やコスト削減意欲を、十分に引き出せない事例が多いという。
同組合の泉正樹・業務課長は「数年程度の委託では、長い目でみた維持管理ができないため業務効率も悪い」と話す。「長期責任委託方式」を取れば欠点が補え、民間が創意工夫を生かして効率経営を図る余地が広がる、というわけだ。北部処理組合の施設は3月に本格稼動し、成果に期待をかける。 日本総合研究所が昨夏、ごみ処理施設を持つ全国120自治体にアンケートしたところ、52%の自治体が「長期責任委託で運営コストが削減できる」と答え、すでに導入を検討中の自治体もあった。フランスやイギリスなどでは、下水処理設備などで似た方式を取っており、日本でも今後、導入対象が広がりそうだ。 
ただ、民間への全面委託にはまだ課題も少なくない。同じアンケートでは44%が「トラブルが発生したときの原因追及が困難」と答えた。ダイオキシンなど有害物質の排出実態を自治体が十分に把握できなくなる、といった懸念もある。 石川県のケースでは、地域住民や隣接町の職員らで監視委員会を作り、大気や水質、土壌中のダイオキシン量、振動などのデータを測定し、異常がないか検証することにしている。 日本総研の赤石和幸研究員は「職場が失われることの抵抗や、民間企業に対する不信が、自治体の拒絶反応に結びついている例も少なくない」と指摘しており、「官から民」への意識改革も、重要なカギを握っていると言えそうだ。   
 

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