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100Mbpsの普及でインターネットはこう変わる!!
ブロードバンド時代の主役!?「光ファイバー」最前線 

出典:仕事とパソコン 2002年11月号寄稿

ITバブル後であっても光ファイバーの整備は進んでいる

 2000年春、「IT(情報通信技術)・ネットバブル」がはじけ、今年(2002年)には「光ファイバーバブル」などともいわれ始めました。昨今、急進しているADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line:非対称デジタル加入者線)は今年7月末で361万加入、CATV網利用のインターネット接続サービスでは163万加入、FTTH(Fiber To The Home:家庭まで光ファイバーを引くこと)サービスでは7万弱加入。合計で500万加入を超えました。

 この500万という数は、これまでの主要通信サービス(固定電話)契約数のほぼ10%に相当します。固定電話や携帯電話など類似サービスの立ち上がり時期における経験則から、ブロードバンド(高速大容量)サービスもその勢いにおいてクリティカル・マス(臨海量)を超えたといえましょう。

 FTTHにより光ファイバーを利用したインターネット接続サービスが可能となります。これらブロードバンドサービスの中で、次の点で今後主役になるのは「光ファイバー」だと言えます。

 第1にADSLが主流と現在では言われながらも、ADSLでは最高速度でも理論上8~12Mbs(毎秒メガビット)であり、NTT局舎から自宅までの銅線ケーブルの距離が500メートルあたりを超えると速度が急速に落ちるなど難点があること。

 第2に光ファイバーは、①その凄さ(メリット)は、何といってもその速度です。NTTのFTTHサービス「Bフレッツ」では、低速版でさえADSLを超える最大10Mbps(最近のADSLには最大12Mbpsのものが登場)、高速版では最大100MbpsですからISDN(64Kbps)の1,500倍以上もの速さとなります。100Mbpsの世界とは、約20日分の新聞朝刊に相当する情報量です。BSデジタル放送のハイビジョン番組は28.2Mbpsで配信されています。従って、映画やドラマをテレビと同じ画質で視聴したり、テレビの生中継と同様にインターネットで画面を見ながら相手と話したりすることが簡単にできることになります。

 また、②素材(シリコンなど)が地球環境にやさしいとか無尽蔵にある資源であったり、あるいは③距離に事実上拠らない(速度の減衰が極めて小さい)、さらに④電気を通さないために高圧電線やTV電波などからのノイズを受けることがほとんどないなど、21世紀の社会・産業基盤になり得る要素を持っています。

 光ファイバー市場では、2001年1月にNTT東西がダークファイバーを解放し、同年7月には丸の内ダイレクトアクセスがダークファイバー事業を開始。同3月にはusen(有線ブロードバンドネットワークス)がFTTH本サービスを開始しました。一方、2002年2月から4月にかけ中国電力系CIS、東京電力、九州電力系QTNetなどがFTTHを開始しています。

 こうしたダークファイバーの解放などにより、このネットワーク層での(光ファイバーレベル単位の水平的な)事業者の参入が相次ぎ、これまで無風状態に近かった通信設備ベースの競争が進んでいます。  

光ファイバーの仕組みとメリット・デメリットとは

 光ファイバーが超高速なのは次のような仕組みによります。それは通常のデジタル信号(0と1)を送る際、銅線ケーブルの場合は電気信号を用いますが、光ファイバーの場合は超高速で行える光の点滅(オン/オフ)に対応させて送る方式をとるからです。

 光ファイバーの構造は、髪の毛より細い直径10から50ミクロンの中心部(コア)とその外側(クラッド)の2重構造になっています。このコア部分に光を点滅させることで通信を行います。

 なおコアを通る光は、通常の光線(白熱灯や太陽)のように拡散せず直進するレーザー光を利用するため、遠方まで減衰が殆どなく情報を送信できます。コア内部で光を反射させ、コアの中だけを進めることで減衰を抑えています。これは光の屈折率をコア部分で高く、クラッド部分で低くすることにより、光を外に漏らさない原理を用いています。

 前述の通り、光ファイバーには多くのメリットがありますが、他ブロードバンドサービスと比べてコストが割高であったり、光ファイバー導入の際の問題点などデメリットもあります。

 例えば、Bフレッツの場合、メリットとしては、①大変速く安定。 最大100Mbpsの通信速度を持ち、上りと下りの速さも同じ。しかも、ADSLよりも安定している。②サービスエリア内であれば大概利用できる。③電話加入権がなくても利用できる、などとなります。

 しかしデメリットとして、①現時点では他ブロードバンドサービスと比べて料金がかなり高い。ADSLは月額1,980円(プロバイダ料金込み)で利用できるのに対し、Bフレッツは月額9,000円(ベーシックタイプ)にさらにプロバイダ料金が加算されます。②利用可能エリアが大都市圏に限られる。現在はサービスエリアが大都市圏に限られるので、ADSLを利用可能な地域であれば 個人利用者は、まずはADSLを導入してから様子をみることがオプションとしてあります。③立地条件によっては光ファイバー回線を引くのが難しい。マンションのような集合住宅の場合には、個人の一存では回線を引き込めない、などが挙げられます。

光ファイバーが普及すると仕事や生活にどのような変化が期待できるのか

 では、光ファイバーが普及すると仕事や生活に、どのような変化が期待されるのでしょうか。

 総務省はシャープやNHKエンジニアリングサービス、J-フォンらと共同で、情報を送信する速度は光ファイバー並みで、しかも海外でも使える携帯型の通信・放送融合端末を現在開発中です。こうなれば、地上波デジタル放送と高速インターネットを一台で利用可能なことも近い将来可能となることでしょう。

 また今後の商談では、これまで困難だった、ノートパソコンなどから大容量の設計図面や映像情報をネットから瞬時に呼び出だせます。顧客との商談中に保険料をシミュレーションし見積りをとったり、あるいは事故現場の映像をセンターとやり取りし、査定を行うこともできます。

 京都大学医学部付属病院の高橋隆教授によると、遠隔医療の意義には、通信手段を介して診断・治療行為を行う「ダイレクト・ペイシェント・ケア」、医者どうしらのコミュニケーションにより専門家知識を伝授し医療支援する「テレコンサルテーション」などがあります。双方とも高精細性とリアルタイム性などが不可欠であり、超高速・大容量のネットワークインフラが果たす役割は甚大です。

 一方ソニーは、10Mbps程度の帯域ではリアルタイム・ストリーミングは現実的ではないとの考えのもと、ネットからのコンテンツを一旦ホームサーバー「ブロードバンドゲート」に格納。ここから高精彩動画像を取り出して楽しむ方式を採用しています。これも本格的なブロードバンド時代への備えとみることができます。

 ネットワークスイッチ大手のエクストリームネットワークスは、遠隔地どうしのミュージシャンがネット上で競演できるな環境も実現でき(舞台裏のスタジオの制作が可能になり)、彼らと視聴者と直結するようなシーンも現実的になってきました。またNTT研究所は光ライブ配信などのサービスを検討しています。長野県松本市で毎年8月~9月に開催され、世界中の音楽家が集まるサイトウキネン・オーケストラ(小澤征爾氏指揮)の演奏やオペラ公演などが迫力ある映像とともに、ファンへ届けられます。最寄りのシネコンやホテルなどの大画面でネットライブを楽しむこともできるようになるかも知れません。

光ファイバーの将来性

 光ファイバーには将来性があると思います。それは上述の通り、本格的にブロードバンドが必要な時代となれば、速度や安定性の点でどの手法・技術よりも永続的に優れているからです。今の電気通信に代り、超高速の光通信は人類が手にした究極の通信手段だといえます。

 ただ、筋がよいものと思われるものが、すんなりとビジネスに乗るか(社会に受け入られるか)どうかはまた別の面もあります。やはり経済性(コスト)と本当にそれが今必要なのかという点があります。その意味で当面はADSLが一歩抜きん出ている状況が続くでしょう。ADSLを起爆剤として、ブロードバンドの凄さや利便を私たちが一旦享受できるようになると、恐らく誰も逆戻りはできす、もっと上のものが欲しくなるものです。この夏頃にそのようなターニングポイントに突入したということです。ブロードバンドというインフラ(アクセス手段)と、アクセスの先にあるコンテンツ(価値ある情報の内容やコミュニケーションそのもの)は車の両輪の関係にあります。テレビやパソコンが初めて世に出たときに、そんなもので一体何ができるのか、その箱に入れるものなどあるのか、といったことを当時誰もが想像したことでしょう。

 2002年2月にはTBS、フジテレビ、テレビ朝日がNTTグループも出資してブロードバンド向けコンテンツ配信会社を設立。同4月にはNTT-BBが有料コンテンツ配信を開始、NTTコミュニケーションズがコンテンツ配信プラットフォームを運用、ソニーがプレイステーション2用にコンテンツ配信を開始といった動きは、来る光ブロードバンド社会を予感させます。

 光ブロードバンドが普及するにあたっての、次のような課題は徐々に解決されつつあります。

 まず、政府「e-Japan計画」では、FTTHを2004年3月までに政令指定都市・県庁所在地をカバー、2006年3月までにおおむね市までカバーするなどの目標値が定められました。実際、2002年3月には国土交通省が道路工事の申請手続きを簡略化、2002年4月には前年に策定・施行された電柱・管路などの使用におけるガイドラインが見直されました。また2003年には全国で電子政府・電子自治体を整備。行政手続きの96%をオンライン化し、電子調達も本格化しましょう。

 身近なところでは、マンション共有部分の光ファイバー工事が住民の3分の2から半分の決議で可能となる動きもあります。

 最近では家庭に加え、オフィス、公共施設、放送局などの個別のネットワークを、ギガクラス(メガの1000倍)の身近な光イーサネット技術(超高速版のオフィス内ネットワークLANのようなもの)により、低コストでつないでしまうことが進展しています。また、これまでの市内網が光IP網に置き換われば、市内電話網の場合の通信コストが数十分の一程度に下がり、これまでの電話はIP電話となり無料となる状況もありえます。銅線(電話)から光(IP網)へのシフトは、電話インフラからIPベースの社会インフラになることで、革命的なインパクトをもたらすことになるでしょう。その光ブロードバンド革命が止まることはないでしょう。

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