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PFIが創る環境事業官民協働の地域インフラ:地域活性化 
(1)技術、規制、市場の障害克服を

金子 直哉

出典:日本工業新聞 2002年8月29日

事業創出の課題

PFI地域に新たな環境事業を創出するには、3つの課題を解決しなければならない。

●第1は「技術バリア」
事業の推進力となる技術をいかに生み出していくかという課題である。環境事業は、「材料」「機械」「土木」など多分野の技術の融合から生まれてくる。このため、地域の大学、公設試験研究所、地元企業が連携し、それぞれが保有する複数の技術を結びつけることで、より魅力的な事業シーズを生み出していく必要がある。

●第2は「規制バリア」
事業化の前提となる規制をいかにクリアするかという課題である。技術の信頼性を市場に認知させる取り組みが必要であり、そのために「技術実証とマーケティングの繰り返し」が効果を発揮する。

●第3は「市場バリア」
生まれた技術をいかに市場に導入していくかという課題である。これが新事業創出の最大のポイントになる。環境分野の事業創出は、「環境問題が顕著化して、それを解決する技術が生まれない限り、市場が芽生えない」という特性を持つ。このため、他の地域に先駆けて独創的な技術を開発しても、当該地域で環境問題が顕著化していなければ、技術を導入する市場が見つからないというケースが生じてしまう。市場が立ち上がっていない場合や、市場規模が予想に反して
小さい場合は、独創的な技術も競争力を発揮できない。

異業種連携が鍵

市場バリアを克服し、新たな環境事業を創出していくには、どのような仕組みが必要になるのだろうか。キーワードは「市場探索から市場創出への発想転換」だ。市場を探すのではなく市場そのものを創り出す動きを支援していくことが、自治体などが選択すべき戦略になる。この市場創出の中核を担うのが「異業種の連携」である。具体的には、図に示したような仕組みが有効に機能する。最大のポイントは、「研究コンソーシアム」と「事業化コンソーシアム」という2つの連携システムの特徴を生かすことだ。
 
研究コンソーシアムとは異業種が保有する周辺技術、ノウハウ、研究施設、研究人材を結集した組織であり、技術実証や用途開発を通じて市場創出を加速する役割を果たす。その上で、異業種の営業、企画、財務、法務などビジネス分野の人材を結集した事業化コンソーシアムが、創出された市場において環境技術の事業化を推進していく。多分野の複数企業が集まることで組織としての中立性が高まるため、技術実証や事業評価に対する公的支援を受けやすくなる効果も得られる。

こうして事業創出の3つのバリアを克服することで、地域の環境事業を創出する2つの流れが期待できるようになる。1つは、地域が提供する「環境特区(環境事業の創出を支援するための仕組みや規制緩和を導入した地域)」において、大企業が先端事業を展開していく流れであり、もう1つが、中小企業が独自のノウハウを活かし、環境分野における第二創業を図る流れである。

 

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