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PFIが創る環境事業官民協働の地域インフラ:風力発電事業 
市民の力で環境インフラ

出典:日本工業新聞 2002年8月6

日本のPFIは幾つかの点で歪みを有している。例えば、公共事業の削減に対する処方箋として導入されたことや、事業運営者が不在のなかで建設会社主導で推進していることなどである。プライベート・ファイナンスにおける「民間」の概念が「民間企業」もしくは「民間金融機関」にばかり比重が移り過ぎている点もそうだ。

政府セクターの役割を民間セクターに移行していくことを考えるとき、「民間」には「企業セクター」のほかに「市民セクター」という存在があることに改めて注目すべきである。

再生可能エネルギーの普及を目指す自治体は多い。多くの自治体が自ら風力発電施設を建設し、運転を行っている。一方、北海道浜頓別町では、日本で初めて市民出資によって風力発電施設が建設された。総事業費の約7割が市民出資によって賄われている。「はまかぜ」ちゃんと名付けられた風車はデンマーク・BONUS社製。1基の発電出力は1000kw、年間約260万kwhの発電を予定している。これは一般的家庭およそ900世帯分の消費電力量に相当し、浜頓別町の約半数の世帯分を賄える計算になる。また、電力を北海道電力に買電し、出資に対する配当の実現も目指している。

設立の母体となったのは「北海道グリーンファンド」という組織。趣旨に賛同する会員から月々の電気料金に5%上乗せした「グリーン電気料金」を集め、それを風力発電施設整備に使うというアイデアだ。市民出資の呼びかけから、わずか3ヶ月間で1億5,000万円が集まり、会員は約1,200人にのぼった。まさに市民主導の地域環境インフラ整備といえる。

こうした手法は、風力発電先進国デンマークでは既に定着している。デンマークで稼働するおよそ6,300の風力発電施設の80%以上は、風力エネルギー協同組合または個人が所有している。こうした共同組合への出資には税制優遇などのインセンティブが付く。このような市民の力がデンマークにおける風力発電施設普及の大きな原動力になったのは疑いがない。

広がる対象

前回も示したように、BOT(建設・運営・譲渡)もしくはBTO(建設・譲渡・所有)を行う場合は、産廃市場から受け入れて高価な処理委託費を確保すれば事業メリットが生じる。しかし、肉骨粉と家畜ふん尿の統合処理事業は、高価な委託費の確保が難しい。このため、公共関与で行うとともに、できるだけ処理コストが低い方法を選定する必要がある。具体的には、事業の効率化とコストダウンが図れるDBO(設計・建設・運営)が適している。
また、民間事業者にとっても、精肉残さの処理は、バイオガスがより多く発生し電力販売収入の増加につながるため、有望な事業である。従って、DBO方式は、精肉残さの適正処理の点で、農村地域の環境・廃棄物問題を解決する有効手段となる。

自治体主導で

日本でも、市民の力で地域環境インフラを作ろうという動きが徐々に高まりつつある。対象も風力発電だけではなく、バイオマス発電や資源リサイクルなどにも拡大しつつある。また、市民の関与の仕方も、出資だけではなく、市民たちが事情運営主体となってコミュニティ・ビジネスを起業することを展望している例もある。また、こうした動きを支援しようという民間コンサルティング会社も出現している。

昨今、自治体の行財政改革の議論のなかには、従来の福祉や自然保護などの行政サービスをNPO(民間非営利組織)に代替してもらおうという意見を唱える向きもある。しかし、それらは単に人件費の安いNPOやボランティア組織を利用するだけといった、自治体側に都合のいい考え方も少なくない。それよりも、デンマークなどのように市民の力で地域環境インフラを作ろうという、もうひとつのPFI手法を、自治体は積極的に支援し、市民らと連携を図っていくべきである

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