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PFIが創る環境事業官民協働の地域インフラ:上下水道分野 
(13)維持管理の広域化検討を

出典:日本工業新聞 2002年7月10日


広域化は必然

上下水道事業の効率化で、長期責任委託の導入と並んで重要なのは広域化である。
日本では、都道府県が行う用水供給事業や流域下水道事業など一部の事業を除き、市町村をベースに上下水道事業が行われている。市町村の中には、人口1万人未満の町村も数多く存在する。こうした自治体では、規模のメリットが働きにくく、非効率になりがちである。技術者も不足しており、適切な維持管理を行うことが、財政的にも、技術的にも困難だ。

ここで広域化という場合、施設建設の段階から複数の市町村が集まって行うケースと、既存の施設の維持管理を共同で行う2つのケースに大別できる。まだ上下水道が普及していない地域は小規模自治体が多い。これらの自治体では建設から広域化することが不可欠である。一方、既に建設が終了している大部分の地域では、施設の維持管理を広域的に行って効率化することが重要である。
維持管理の広域化によるメリットはいくつかある。まず、複数の浄水場、下水処理場と関連ポンプ施設をネットでつなぎ、遠隔監視を行うことで、監視のための人件費を削減することが挙げられる。また、1人の技術者が複数施設の管理を行うことで、技術者の効率化も図れる。薬品等の共同購入による単価の圧縮も考えられる。

海外では、可能な限り大規模な施設を作るのが原則であるが、人口密度が低い地域では小規模な施設もある。オーストラリアでは、広域的な維持管理体制により少ない人数で運営している。
広域化を行う際の課題として、遠隔監視や制御に伴うIT(情報技術)投資が高額ということが挙げられる。遠隔監視システムの導入のための投資額は数億にのぼることが多く、その後の人件費削減を考えても回収できないケースも見られる。ITは、使い方を間違うとかえって負担を重くする。
そこで、1つの案として、効率化のためのIT投資を長期責任委託の中に含め、PFI的手法で実施することが考えられる。民間の投資感覚を導入することで、契約期間中のコスト削減で回収可能なIT投資が実現されると期待される。

また、現在の上下水道施設の維持管理は、設備ごとの機歴管理がされておらず、場当たりの補修が行われていることが多い。複数施設で集まって機歴管理のシステムを開発・導入すれば、開発費が安くなる。加えて、補修データを複数自治体が共同で管理すれば補修を標準化でき、将来的な負担の軽減を期待できる。民間への包括委託の中で、こうしたシステム提案の余地を作ることも考えられる。

可能な所から

このように、維持管理だけの広域化でもメリットは十分にある。経営を統合する場合には、住民感情への配慮、職員の給与システムの不一致、料金を含めた財務格差などの問題があり、一筋縄ではいかないだろう。しかし、維持管理の広域化ではこうした問題は生じにくい。経営を統合して広域的な体制を築くことは理想だが、まず可能なところから広域化を進めていくことが肝心である。既に施設をもつ自治体で、維持管理の広域化の検討が進むことを期待する。

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