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PFIが創る環境事業官民協働の地域インフラ:上下水道分野 
(12)技術者の支援が不可欠

出典:日本工業新聞 2002年7月9日


知識経験が必要

長期責任委託を行った場合、自治体は、民間企業がきちんと業務を行っていることを日々監視することで、事業者としての責任を果たすことになる。従来の業務委託でも、自治体は民間企業の指導、監督を行ってきた。しかし、それは現場で直接指揮する意味合いが強い。
 
長期責任委託においては、民間企業が守るべき性能要件さえ満足していれば、現場管理は民間に委ねられる。自治体が監視すべきは、維持管理のプロセスではなく、結果である。具体的には、性能要件として民間に課した水質や施設機能のチェックなどだ。

水質のチェックはさほど難しくはないが、施設機能の維持のチェックは簡単ではない。水質と異なり、数値化が困難だからである。このため、5年契約であれば5年間の維持管理が適切だったかどうか、定説的に施設の劣化状況をチェックすることが重要となる。これには、電気設備や機械設備などの豊富な経験と知識が要求される。

業務監視も外部委託

そこで、自治体が行うべき業務監視も、専門能力を持つ民間企業に委ねることが考えられる。
性能発注が進む諸外国では、自治体が行うべき業務監視を支援するサービス会社が存在する。例えばフランスでは、技術的見地から施設機能について評価する民間企業が複数社存在あり、自治体の適切な判断のための基礎材料を提供している。米国では、エンジニアリング・サービスが明確に位置付けられており、問題発生時に自治体を支援できる事業者がある。

日本で長期責任委託を進めていくためにも、業務チェックなどで民間が自治体を支援する仕組みが必要である。日本総合研究所では、こうしたサービスを「エンジニアリング・サポート・サービス(ESS)」と命名し、具体化に向けて検討を始めている。

ESSが担うべき役割は他にもある。例えば、下水道で放流水の水質をチェックしたところ、性能要件を逸脱する事態が発生したとしよう。このとき、自治体は、原因を究明し、官民の責任を明確にするとともに、改善措置を講じなければならない。しかし、そのためには技術と経験を要するため、独力で対処できる自治体は少ない。そこで、ESSが状況を把握し、自治体の判断に必要な情報を提供することが1つの解決法となる。

中立性がポイント

ESSは主に技術の観点から自治体を支援するサービスだが、利害が対立する官民の間で、両者が納得する評価を行うことが求められる。このため、ESSには中立性がなければ、関係者の理解と信頼を得られない。

技術と経験に基づく適切な判断材料を提供していくため、ESSの担い手は、維持管理会社などの退職者が適任と考えられる。また、維持管理会社などの在籍者であっても、当該事業を受託している民間企業に属さない第三者であれば、一時的にこうしたサービスの提供者となることも考えられる。逆に、現場経験を持たない人材が、施設機能のチェックやトラブルなどの原因究明を行うことは現実的ではない。

中立的で技術力のあるエンジニアリング・サポート・サービスの普及は、健全な長期責任委託の導入に欠かせないだろう。

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