PFIが創る環境事業官民協働の地域インフラ:上下水道分野
(9)技術力での評価が不可欠
出典:日本工業新聞 2002年7月3日
選定方法も変更
上下水道施設の維持管理に長期責任委託を導入する場合、それを担う民間企業の選定方法もこれまでとは異なる考え方が必要になる。従来の民間委託は、受託する民間企業が原則として公共側の指示・監督のもとで業務を行うという考え方で進められてきた。維持管理に必要な判断は、公共が行うという前提だったのである。このため、民間企業の技術能力に対する評価はあいまいであった。
また、運転や維持管理は、継続的な業務であるということから、新たに運転を開始する当初だけ入札を行い、あとは随意契約により従来からの企業と契約を継続するケースも見られる。実際、維持管理を行う民間企業が変わると、新たな企業が施設の特性などを理解してもらい業務を軌道に乗せるのに数ヶ月かかるといい、自治体としても民間企業を変更したくないという意識が働きやすい面があった。
これに対して、長期責任委託では、民間企業の技術力やマネージメントの能力が重要となる。資格審査を簡単に済ませて価格のみの競争を行った場合は、効率化を追求するあまりに行き過ぎた人件費の削減や技術能力の不足により、サービスの質が落ちる可能性も否定できない。
これを防止するためには、技術力を評価するプロセスを入れることが欠かせない。具体的な選定の方式は次の3つが考えられる。
有力な3方式
「第1」は、制限付き一般競争入札と呼ばれる方式である。通常の入札と同様のプロセスだが、資格審査のあとに技術力やマネージメント能力に関する技術審査を行い、技術審査を通過した事業者だけが入札に参加できる。技術審査のプロセスを入れることで、技術力の十分でない企業が落札することを防ぐことができる。
「第2」は、総合評価落札方式という方式である。これは、技術能力を何らかの方法で点数化し、その点数と価格を一定の算定式(例えば「技術能力/価格」等)で技術能力と価格を同時に評価できる指標にし、もっとも優れた事業者を選定する。指標化することで、価格以外の要素も加味した選定が可能になる。
総合評価落札方式は、「地方公共団体におけるPFI事業について(総務省通知)」により、PFIにおける事業者選定手法として推奨された。しかし、技術能力の点数化方法や、能力と価格をどのように指標化するかによって選定結果が異なることがある。このため、公正で納得のいく総合評価をどのように組み立てるかという課題がある。
「第3」が、プロポーザル随意契約方式である。これは、民間企業から提案(プロポーザル)を募って、技術能力を評価をした上で、価格と技術能力のバランスを判断し、もっとも優れた民間企業を選定する方式である。技術能力を点数化するのが困難でも、価格と技術を相互比較しながら検討するため、柔軟に対応しやすいという利点がある。一方で、評価に主観が入りやすく、透明性の確保が重要である。
技術能力やマネージメント能力が効率化のポイントとなる長期責任委託においては、価格以外の要素も審査して評価できる方式が望ましい。対象施設の現況などを踏まえて、適切な選定方式を採用することが、新たな委託を成功させるカギとなる。