流通・マーケティングのキーワード
~強いブランドを作る~
出典:日本経済新聞社「日経フレッシャーズ大事典」 2000年3月
ポイント
◇競合商品に対して、自社の製品の優位性を高めていく活動です。
◇長期的な売上の安定、企業のイメージアップなどの効果があります。
◇まず、自社のブランド力を把握することが大切です。
●ブランドとは
ブランドとは、自社の商品を他社のものと区別するためのシンボル、マーク、デザイン、ネーミングやそれらの組み合わせのことを指します。そして、競合商品に対して自社商品に優位性を与えるように、長期的に自社の商品価値を高めていく活動を、ブランド・マーケティングまたはブランド・マネジメントと呼んでいます。
企業にとって、自分の既存顧客を自社の商品に引き付けておくための方法のひとつが、強力なブランドを持つということです。自社商品おのファンを獲得し、ロイヤリティの高いブランドを保有することで、さまざまなメリットが生じます。
●メリットはどこにあるのか
まず第一に、固定客をつかむことにより長期的に売上を安定させることができますす。
第二に、ブランド力は品質保証の指標ともいえるので、企業イメージアップにつながります。
第三に、メーカーにとっては流通業者との取引が有利に展開できるようになります。
第四に、強いブランドイメージを武器にして、関連した商品分野への進出がしやすくなります。これはブランドエクステンションと呼ばれるものです。
第五は、ブランドロイヤリティが高いと、顧客は知人友人にその商品や企業の良さを伝えてくれます。口コミによるブランドの浸透が可能になるのです。
●強いブランドを育てるには
こうしたロイヤリティの高いブランドを育成し、維持していくにはどうすればよいのでしょうか。
まず、現在持っているブランドの現実的な力を正確に把握することです。このために消費者アンケートなどを実施します。これにより、そのブランドが市場の中でどういった位置を占めているのかのというポジショニングを明らかにします。さらに競合商品との関係を考えながら、新しいポジショニングの方向性を明らかにしていきます。
自社ブランドの差別化の手段としては、図のように消費者の知覚にもとづく方法、企業のマーケティングにもとづく方法、法的・制度的差別化などの方法があります【図表1】。

この中で、ブランド・イメージ確立のためには新たなポジショニングのための軸を探し出すことが需要です。特に二番手、三番手ブランドが上位を狙う際には欠かせません。例えばアサヒビールの「スーパードライ」はビール市場に「ドライ」という新しい競争の軸を持ち込み成功しました。
また、価格要因による差異化の方法としては、プレミアム価格(高価格)による超ブランド化や、その逆の低価格戦略などが挙げられます。
チャネル戦略による差異化は、新たなチャネルによる販売でブランド力を強化することです。最近では、アマゾン・ドッド・コムに代表される「ドットコム企業」がネット通販によるブランド差異化を行い話題になっています。
ブランドには、企業ブランドと製品・サービスブランドの2つがあります。たとえば、「ソニーのウォークマン」の場合、「ソニー」が企業ブランド、「ウォークマン」が製品ブランドとなります。企業ブランド力の高い企業としては、下表のような企業が挙げられます【図表2】。

(注)ブランド得点は、アナリストやコンサルタントなどの専門家の10項目にわたる質問への回答から得られた結果を得点化したもの
(出所)『週刊ダイヤモンド』1999年11月06日号