情報化時代のキーワード
~定額制で下がる通信料金~
出典:日本経済新聞社「日経フレッシャーズ大事典」 2000年3月
ポイント
◇新興通信キャリアによる定額制サービスが広がっています。
◇従来のケーブルを利用したADSLサービスも始まりました。
◇料金の低下により、通信大量消費時代が本格的に幕を開けます。
●広がる定額制サービス
インターネットの出現・普及により、通信が私たちの生活にとってより身近な存在になってきました。電子メールは今では携帯電話からも利用できます。株取引やオークションなどインターネットサービスもどんどん出てきています。そこで気になるのが通信料金です。
これまでのような使った分だけ課金される「従量制」に加え、1998年からどれだけ利用しても一定の料金を支払えばよい「定額制」の通信サービスが一挙に出てきました。そして、ソフトバンク、米マイクロソフト、東京電力連合、ソニー、通信機器ベンチャーなど、インターネット通信に的を絞った「eキャリア」ともいえるさまざまなな企業が、これまでの通信企業に対抗するかたちで、自前で通信インフラ(基盤)を作ってしまおうという動きです。
このインフラ構築には、電柱及び発電所との緊急通信用として域内に張り巡らした光ファイバー網や、郵政省の規制緩和で使いやすくなった無線技術を利用します。これらにより、これまでの料金設定の数分の1にあたる月額3,000円ほどで、NTTの総合デジタル通信網(ISDN)よりも数倍速いサービスが利用できるようになります。一方、当のNTTも、高速インターネットサービスを月額数千円で提供する構想があることを1999年11月に明らかにしました。
●ADSLで高速サービス提供
光ファイバーや無線とは別の動きもあります。郵政省は、1999年7月、NTT以外の通信事業者が自社の機器をNTT局内のMDF(主配線盤)に接続できるようにする方針を示しました。この接続に関する規制緩和と、これまで使われていた銅線ケーブルでも大容量通信を可能とする「ADSL」(アシンメトリック・デジタル・サブスクライバ・ライン)と呼ばれる技術により、ISDNの約10倍のスピードの高速メニューを月額5,000円程度で提供するサービスが出てきました。1999年秋から東京都内の一部地域でサービスを開始しています。
ユーザーはADSL対応のモデム等を用意するだけで、常時接続型のインターネット接続サービスを利用できます。ADSLサービスは米国ではすでに実用化されており、一般家庭や企業でのインターネット利用促進に大きく寄与しています。
●通信大量消費時代の幕開け
光ファイバーと無線、あるいはASDL技術を活用した通信も、従来の電話交換機を用いた通信サービスとなります。このため、通信料金もこの範囲内で設定されます。一方、インターネットの通信網を利用するインターネット電話では、この範囲を超え、劇的に安価な通信料金によるサービスが実現できます。
さらに、定額制のケーブルテレビ(CATV)網利用のサービスも始まっています。CATVインターネットサービスでは、電話回線を使用しませんので、電話料金は一切かかりません。また、CATV電話は、回線をテレビと共用するので、料金を安くできるのが特徴です。
このように私たちの生活を取り巻く多様な通信サービスが定額制料金で供給されるようになり始め、通信大量消費が本格的に始まったといえます。

