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「負の遺産すべて清算 日立」『私はこう見る』

出典:日刊工業新聞 1998年9月4日

プライドが変化の壁に

 経営戦略を実行に移す速度が遅いというだけでなく時代錯誤的な動きが日立を窮地に追い込んでいる。その良い例が数年前に赤字の家電部門を日立本体に吸収したことだ。当時は人員合理化に手をつけず、巨艦体制を維持したことに称賛の声さえあがったが、今となっては大きな誤算だった。経営陣がプライドと温情主義にとらわれ過ぎて、本質的な構造変化を見誤ったといわれても仕方ない。

 右肩上がりの経済環境下では高い技術力を背景に総合力という強みを発揮できた。しかし、ここ10年間はパッとせず、特にバブル崩壊以後の5年間は急激な時代の変化についていっていない。日立社内には時代に取り残されることへの危機感は強いが、経営全体動きとなると依然鈍い。

 日本を代表する頭脳集団でありながら、ボトムアップ的、年功序列的な体質が潜在能力の開花を阻害している。優秀な技術者にはそれだけのリターンを与える。上層部の2、3割が自由に能力を発揮できる環境づくりが急務。巨艦体制が限界にきているというなら持ち株会社制への移行を含め各事業部門の独自性、機動性を高めるための抜本的な対策を講じる必要がある。すべてはプライドをかなぐり捨てる勇気を持てるかどうかにかかっている。

 

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