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『日本企業再生の処方箋(ICTマネジメント)』
Special Interview 「ビジネスの"What"を提示することが、ビジネスコンサルタント」

出典:Gakken TEXT 1999年1月15日号

株式会社日本総合研究所

研究事業本部 ネットワーク事業戦略クラスター
クラスター長 主任研究員 新保 豊さん

 半導体関連の研究開発に携わるエンジニアから転身を遂げた、異色のビジネスコンサルタント(シンクタンク研究員)である。特にエレクトロニック・コマースを含む情報通信業界およびその市場に関する分析力と洞察力は、マスコミの間でも注目されており、新聞各紙やコンピュータ関連雑誌でたびたびコメントを取り上げられているほか、自身による記事やコラムの執筆も少なくない。 
 
ビジネスの"What"を提示することが、ビジネスコンサルタントの使命

新保さんのキャリアアップ

1991年:日立製作所から日本総研総合研究本部経営戦略研究部へ転職。主に企業への経営・事業戦略立案、及び官庁を含む調査研究に従事。
1996年:同社研究事業本部のクラスター制度改編を経て、現在に至る。

●エレクトロニック・コマースの実証実験にも参画

 新保豊さんがリーダーを努める研究事業本部ネットワーク事業戦略クラスターは、従来の電気通信に加え、インターネットに象徴される情報通信分野を主な活動分野としている。そして、その内容は「とても欲張りな仕事なんですよ」と言うように、非常に多岐にわたっている。産業・市場分析から経営・事業戦略策定、さらには社会研究にいたるまでを網羅的に手掛けており、いわゆるコンサルティングにとどまらず、顧客である官公庁や企業に対してより実戦的なレベルでの解決策(ソリューション)を提供するのが特徴だ。

なかでも最近、特に比重が高まっているのがエレクトロニック・コマース(電子商取引)に関する案件である。たとえば、通産省が主導する実証実験プロジェクトにも参画し、同社のSI(システム・インテグレーション)部門とも連携をとりながら、情報システムのとりまとめを行っている。

 「これに限らず重要なのは、どうしてシステムを作るのか、なぜ必要なのかという"Why"や"What"の原点です。実際のシステム構築で必要なのは、どうやって要求仕様を実現するかという"How"の視点ですが、私たちの役割は、それよりも包括的な部分に身を置いたマーケティングや分析が求められます。例えばクレジット。オンライン・ショッピングを取り上げても、どんなデータ通信技術や決済方式を適用するかではなく、むしろクレジット事業者や加盟店、消費者がどんな仕組みのもとで参加すれば上手くいくのか、そういったビジネスモデル作りが私たちの使命です」と、新保さんは言う。このあたりがSEとの役割の違いとなっているわけだ。新しいビジネスを生み出すことが、仕事の本質といってもいいだろう。

 「したがって、やり方次第ではどんな仕事も可能です。特に日本総研の場合は、先のクラスター制度のもと現場に大きな権限が与えられており、予算の管理やメンバーの編成も自分たちに大半を任されています。そうした中で、さまざまなアイディアをシミュレーションし、関係者と交渉し、具体的な事業戦略を組み立てていくのです。何ともいえない醍醐味であると同時に、そのプロセスを通じて、さらに幅広い経験や知識を蓄積することができます」と、新保さんは自身の仕事の魅力を語る。

 もっとも、新保さんも最初からこうしたコンサルタントの道を歩いてきたわけではない。大学院では物理を専攻し、大手総合電機メーカーに就職。その後10年近くにわたって、半導体関連の研究開発に取り組んできた典型的なエンジニアだったのだ。

 「スーパーコンピュータと実験室の機器を使いこなすのに多くの時間を費やす毎日で、社外の人と名刺交換をすることさえ、めったにありませんでした」と、新保さんは当時を振り返る。そうした中で、「全く異なったビジネスの世界を見てみたい」という思いが次第に高まり、91年10月に現在の日本総研に転職したのだという。技術のみを拠り所にするスペシャリストとしての経験を踏まえ、ビジネスという視点から、より包括的な素養の求められるジェネラリストへ。まさに180度の転身だった。

 「持たざる者の強みというか、失敗して元々という開き直りが、かえって積極的なチャレンジにつながったようです」と、新保さんは笑うが、水面下で並々ならぬ努力を重ねてきたことは容易に察しがつく。実際、自ら進んで人の二倍の仕事をこなしてきたという。できる限り早くいろいろなことを経験し、知識やノウハウをキャッチアップしたいという意欲からだ。そして、「一歩でも先を見たビジネスの"What"を提示できなければ、自分たちの価値はない」と語る新保さんのその姿勢は、今も変わることはない。 
 

【図表】 日本総合研究所の組織(概観、一部) 

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