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「オバマのアメリカ」 編著者 インタビュー

  • オバマのアメリカ
    オバマのアメリカ-次なる世界経済の行方
    編著:藤井 英彦
    東洋経済新報社/2009年2月/¥1,680(税込)

このたび、調査部長/チーフ・エコノミスト 藤井英彦編著による「オバマのアメリカ」を東洋経済新報社より刊行いたしました。本書をお読みいただくためのポイントや、執筆の背景などについて、藤井よりご紹介させていただきます。

Q1:本書で力を入れた点はどんなところですか。

今日、アメリカは未曾有の危機に直面しています。オバマ新政権に対する期待度は過去に類例が無いほど高いのですが、現状に照らし、さらに世界経済の構造変化を加味してみれば、景気後退が短期間で終息して回復が視野に入るという展開は楽観に過ぎるでしょう。加えて、アメリカはこれまで世界経済を牽引してきました。それだけに、アメリカの低迷はわが国を含め、各国に深刻な打撃を及ぼします。問題は、現下の危機がいつまで続くのか、いつになれば好転の兆しがみえてくるのかです。
未曾有の危機であるだけに、将来を正確に見通すことは容易ではありません。しかし、方法はあります。危機のマグニチュードを測ることです。マグニチュードが分かれば、低迷がどこまで深刻化し、いつまで続くか、今後の行方を見定めることができます。

Q2:世界経済の構造変化とは、どのようなものでしょうか。

一言で言えば、アメリカ一極体制からの転換です。戦後、アメリカは抜きん出たパワーを持つ覇権国であり、世界経済成長の牽引役でした。
しかし今日、アメリカ経済、さらに欧州経済もスパイラル不況に陥り、回復の兆しは未だ皆無です。一方、中印伯といった新興国は先進国経済の悪影響に直撃されながら、引き続き底堅い成長軌道を歩んでいます。世界経済はアメリカを中心とする先進国主導の枠組みから大きく舵を切ろうとしています。
歴史を振り返ってみると、非覇権国から覇権国への発展プロセスは総じて同様です。まず経済、次いで軍事、最後に価値の順に、覇権を支える三大パワーが生成されてきました。経済は食糧や鉄器にみられる通り、生産と言い換えても良いかもしれません。軍事は単なる戦力ではなく、外交力の一環としての位置付けです。価値はアメリカン・ドリームといったプラグマティックな分野だけでなく、宗教や法制度も包括されます。

Q3:今後、市場はどのような影響を受けるでしょうか。

直面する金融・経済危機を顕在化させないためには、巨額の金融・経済対策が不可欠です。しかし、積極的な対策は巨額の財政赤字を生み出します。財政赤字の膨張は、まずドルに対する信認を低下させ、ドルの下落に繋がります。加えて、ドル資産から非ドル資産への回避行動を誘発して金利上昇を加速させ、景気悪化に拍車を掛ける懸念が大きいでしょう。すでにその兆候は表れています。国内貯蓄が少なく、海外からの資本流入に依存するアメリカにとって、この財政バブルの問題は深刻です。
財政バブルはドル安と金利高にとどまりません。一次産品高の問題です。今日、一次産品はドル建てで取引されています。ドルの価値が安定している限り、一次産品価格には各一次産品の需給動向が反映されます。しかし、ドルの信認が低下するに連れて、ドルの価値に見合った水準に一次産品価格が調整されていくでしょう。価値の下落が見込まれるドル資産から一次産品への逃避行動が起こるためです。

Q4:改めて、日本にとってアメリカ経済を知る意味は何でしょうか。

戦後、わが国経済は輸出を原動力に成長してきました。とりわけ近年は、少子高齢化が進む一方、閉塞的な国内市場の桎梏が温存されて活力が解き放たれず、内需が低迷した結果、一段と輸出主導の色彩が強まっています。
そのため、日本経済の行方をみる鍵は外需です。とりわけアメリカ経済の行方が重要です。アメリカ向けはわが国輸出全体の3割を切ったといっても、迂回輸出に加え、第三国のアメリカ向け輸出のための設備投資に伴ってわが国から輸出が増えるなど、最終市場はアメリカというケースが少なくないからです。
今日の国内経済構造が続く限り、アメリカ経済の動向はわが国の行方をみるうえで、欠かすことの出来ない重要なポイントです。

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