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タイ・ベトナムにおける日本企業の成長投資の場づくり

2016年02月23日 副島功寛


 2015年末、アセアン経済共同体(AEC)がスタートし、アセアンは新たな時代を迎えました。一人あたりGDPなど経済面での格差、宗教など社会制度における多様性、新興国としての成長性を併せ持つAECの今後の発展に注目が集まっています。そのなかでもメコン地域は、世界人口の過半を占めるマーケットであり、巨大な成長市場である中国・インドと隣接し、地政学的な要衝となっています。これまで日本企業の拠点投資の多くはタイに集中してきました。その結果、分厚い産業集積が実現しました。ただ、昨今では政府の優遇政策も背景に、現地開発拠点や地域統括拠点への投資が増加しています。こうした変化は、産業構造の高度化としてタイの人々から歓迎されています。AECスタート後もこの基調は変わらないでしょう。

 一方、人件費の上昇や政情、洪水等への備えもあり、周辺国への投資の分散も進んでいます。タイからの分散投資の受け皿のひとつが、ベトナムです。9000万を超える人口、タイに対する相対的な人件費の低さや人材の質等から、投資拠点としての魅力が高まっています。タイと比べて産業の集積が弱く、裾野の狭さが課題とされていますが、例えばベトナム南部では、日本電産やサムスンといった企業の集中投資が進み、近年では精密機器、家電等の生産部品の高度化と供給先の多様化も促されて、産業の裾野に変化が見られつつあります。ベトナム商工省も2016~2025年を対象に、裾野産業に対する支援プログラムを策定しており、こうした動きを後押しする意向です。

 タイで産業の高度化が進み、その付加価値がベトナムへと波及していくこうした動きが一体的に進んでいけば、日本企業の域内サプライチェーン形成も進むでしょう。とはいうものの、日本企業がタイで現地開発拠点への投資を行う、あるいはベトナムでより高度化な生産拠点への投資を行う際に、各々の事業活動を支援する環境が現地側で十分には整っていないことも事実です。数多くの工業団地が開発されていても、有能な人材の供給を担保する都市機能、安定した基盤インフラや個社の活動に即したビジネスサービスなどを、日本企業に提供できる事業者がほとんどいないのが実態です。現地側で不足する機能を担える日本の事業者が、現地事業者と共同で事業を立上げ、進出する日本企業をサポートする状況が、早急に求められています。

 日本総研は、タイ・ベトナムにおいて、タイの有力デベロッパーであるアマタコーポレーションが進めるサイエンスシティ開発やハイテクパーク開発を支援しています。ここでのミッションは、他の日本企業とコンソーシアムを形成して、日本企業の現地活動をサポートする機能を備えた産業エリアの開発を実現することです。今後の産業発展の中核エリアであり、日本企業の成長投資の場となるタイ・ベトナムにおいて、日本の技術・ノウハウを活かした開発プロジェクトの推進に、今後も取り組みたいと思います。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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