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介護保険制度改正、マーケティング的アプローチで「新しい総合事業」を創る

2014年08月05日 徳村光太


 平成26年6月に介護保険制度の改正案を含む「地域医療・介護総合確保推進法」が成立した。これにより平成29年度末までにすべての市町村において、要支援者の訪問介護とデイサービスが、保険給付から「新しい総合事業」(介護予防・生活支援サービス事業)へと移行されることになった。

 「新しい総合事業」は保険給付と異なり、市町村が自らの裁量によって、サービスの運営主体・提供方法・提供範囲・利用料等を設定することができるようになる。例えば、介護保険事業者以外の民間企業やNPOが自宅に訪問して行う掃除や洗濯サービス、運動や入浴などの特定コンテンツに特化したミニデイサービス、リハビリ・栄養等の専門職によるセミナー、ボランティアが運営する食事や飲み物を提供するサロンといった様々なサービスが全国で生まれる可能性がある。

 「新しい総合事業」の導入に向けた検討課題は多岐に渡るが、市町村がまず取り組むべきことは、地域に暮らす高齢者のニーズを十分に分析することだ。

 市町村が高齢者のニーズを把握する仕組みとして、高齢者の身体状況や生活上の困りごとを尋ねる「日常生活圏域ニーズ調査」というアンケートがある。しかし、現在実施されている日常生活圏域ニーズ調査の報告書では、「全高齢者のうち日用品の買い物ができない人が~%、自分で食事の用意ができない人が~%」といった設問毎の集計が中心となっており、サービスのターゲットとなる高齢者像がイメージしにくいことが多い。

 そこで筆者らが提案したいのは、日常生活圏域ニーズ調査の項目を用いて高齢者を同じニーズや性質を持つセグメントに分類するマーケティング的アプローチである。例えば、「一人暮らしの男性で、料理ができず、低栄養のリスクが高いセグメント」、「女性で、坂の多い地区に暮らしており、筋力低下によって閉じこもりがちなセグメント」といった分類を行うことで、ターゲットとなる高齢者像が明確となり、サービスの提供方法や提供範囲を検討しやすくなる。

 創発戦略センターでは、複数の市町村の協力を得て、高齢者をセグメントに分類しサービスの検討を支援するデータ解析手法について研究開発を進めている。高齢者にとって魅力的なサービスが生まれる一助となるべく、研究を進めていきたい。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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