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介護サービス事業者による生活支援サービスの推進に関する調査研究事業

2014年07月09日 齊木大


*本事業は、平成25年度老人健康保健増進等事業として実施したものです。

事業の概略

本事業は大きく二つのパートによって構成しており、報告書も2分冊となっている。
(1)生活支援サービス実態調査 報告書
(2)要支援者の自立支援のためのケアマネジメント事例集

事業目的
 これまで介護保険制度では、国がサービスの内容や単価を定める部分がほとんどだったが、平成29年度から、介護保険者である地方自治体が地域の実情を踏まえて提供する「新しい総合事業」の領域が広がることとなった。これによって、保険給付や税を財源とした福祉サービスに加えて、要支援・虚弱・独居などの高齢者の日常生活を支える多様な生活支援サービスの整備を自治体が後押しすることになるだろう。
 生活支援サービスの担い手としては、ボランティア団体やNPOによる活動、民生委員などを主体とした住民同士の助け合いなどさまざまなものが考えられる。このなかで、利用者が介護保険給付と保険外の生活支援サービスを併用する可能性が高いことを踏まえ、介護保険事業者に注目した。介護保険事業者が保険外サービスとして提供する生活支援サービスについて、そのサービス内容や今後の展開意向等を把握することを目的としてアンケートならびにヒアリング調査を実施した。
 一方で、生活支援サービスの活用の仕方については、事業所側の調査からでは把握できない。このため、要支援者のサービス利用実態を把握しているケアマネジャーを対象に調査を実施し、生活支援サービス等を活用して高齢者の日常生活を支え、重度化の予防につなげている事例を収集した。

事業内容
(1)生活支援サービス実態調査
a) アンケート調査
介護保険の居宅サービスを提供する法人を対象に、アンケート調査を実施した。
  調査対象: 6,031法人
  調査時期: 平成26年3月10日~3月25日
  調査方法: 郵送配布、インターネットあるいはファクシミリによる回収
  回収数: 676法人 (有効回収率 11.2%)
  調査内容: 生活支援サービス(保険外サービス)の実施状況、今後の事業展開意向、展開上の課題

b) ヒアリング調査
生活支援サービスを実施している事業者を対象に、ヒアリング調査を実施した。
  調査対象: 生活支援サービス(保険外サービス)を積極的に推進している介護保険事業者4社
  家事代行事業等を専業とし介護保険事業を営まない事業者2社
  調査時期: 平成26年3月10日~3月20日
  調査内容: 生活支援サービス(保険外サービス)の実施状況、提供・展開上の課題

(2)要支援者の自立支援のためのケアマネジメント事例集の作成
 介護予防のモデル事業に参加している自治体のケアマネジャー等の協力を得て事例収集した。
 各自治体に事例の概要の報告を依頼し、第一段階として181事例を収集した。このうち、世帯類型・認知機能の
 低下・疾患に着目して分類し、第二段階として27事例を抽出した。
 この事例担当者にケースレポートの作成を依頼し、事例本人の同意を得て事例集としてとりまとめた。
  調査対象: 厚生労働省の市町村介護予防強化推進事業を実施している10市区町村
  調査時期: 平成25年12月~平成26年3月
  調査方法:第一段階・・・アンケート調査
         第二段階・・・事例報告のまとめ方に関する事例担当者研修、面談による聞き取り等
  回収数: 一次段階 181事例、二次段階 27事例
  調査内容: 生活支援サービス(保険外サービス)の実施状況、今後の事業展開意向、展開上の課題

事業結果
(1)生活支援サービス実態調査
 アンケート調査に回答した法人のうち49.1%にあたる332法人が生活支援サービス(保険外サービス)を実施しており、その事業数は564件であった。平均すれば、一法人あたり1.7の事業を提供していることになる。内容は、「家事等援助事業」が43.6%と最も多く、次いで「移動支援・付き添い事業」が37.1%、「介護保険サービスの上乗せ・付加価値付与サービス」が32.8%であった。介護保険サービスとの併用状況については、「利用者の9割以上が介護保険事業も併用している」という回答が56.0%に上った。生活支援サービス(保険外サービス)の今後の事業展開意向は、「維持」が57.5%と最も多く、「拡大」が20.7%、「縮小」が8.1%であった。
 事業展開上の課題としては「サービスの担い手の確保」が最も多く全体の57.4%、次いで「利用者の確保」が49.0%、「サービスの品質の管理」が38.6%などであった。ヒアリング調査では、人材確保、質の担保、社会福祉協議会やシルバー人材センターによるサービスとのすみわけ、保険内外のサービスのシームレスな連携などが課題として挙げられた。

(2)要支援者の自立支援のためのケアマネジメント事例集
 要支援高齢者に対して、どのような生活支援サービスが有効かを判断するには、アセスメントを実施することが不可欠である。本事例集のとりまとめにあたって、口腔機能・食生活、水分摂取・排便・運動・睡眠、ADL/IADL、外出、社会交流や家庭での役割などの日常生活について、改めてアセスメントを実施した。アセスメントの実施にあたっては、聞き取りに頼りすぎることなく、本人が使っている湯飲みの計量や食事写真に基づくカロリー計算、散歩の同行など、できるだけエビデンスに基づいて実態を把握した。この結果、脱水や運動不足など、聞き取りとは異なる事実が明らかになったケースも多かった。
 そして、事例対象の要支援高齢者の生活において解決すべき課題として、下肢筋力の低下・歩行の不安定・転倒のリスク、不眠、閉じこもり・孤立、家族の負担などが浮かび上がった。水分摂取や運動が少ないため、便秘がちになり、下剤を常用しているケースも多数あった。また、閉じこもりがちなうえに、家事などの役割が家庭内にないため、日中の活動量が少なく、不眠になり睡眠薬を常用しているケースも少なくなかった。
 これらの課題の解決に向けて、水分や食事の適切な摂取のための声かけ、通所サービスにおける運動プログラム、作業療法士の自宅訪問による住環境アセスメント、地域での仲間づくりなどの支援を実施した。これらの支援の結果、体調の改善や運動習慣の定着などにつながったケースや、通所サービスの卒業後もボランティアとして参加して互助的な生活支援サービスにつながっているケースも見られた。

※詳細につきましては、下記の報告書本文をご参照ください。
報告書:
生活支援サービス実態調査 報告書.pdf
要支援者の自立支援のためのケアマネジメント事例集.pdf

本件に関するお問い合わせ
創発戦略センター マネジャー 齊木 大
TEL:03-6833-5204   E-mail:saiki.dai@jri.co.jp
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