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中国の汚水処理事業の現状

2011年04月05日 李建平


2010年、日本の大手商社は相次いで中国の水事業に参入する計画を発表しました。2010年から2015年の間に中国の水市場規模は10,000億元(13兆円)に達し、うち汚水処理分野は7,000億元を占めると予測されています。ここでは、欧米勢に比べ出遅れている日本にとっては無視できない有望な市場といえる、中国の汚水処理分野の現状についてご紹介したいと思います。

工業化と都市化を背景に、中国の汚水処理場は1999年以降急速に増え続けています。特に11次5カ年計画(2006年-2010年)期間中、都市の汚水処理場の数は年間8%、汚水処理量は年間10%のペースで増加しており、5年間に都市の汚水処理率は51.95%から75.25%まで伸びています。中国はまだ都市化の最中にあること、中小規模の都市と町で汚水処理場の普及率はまだ低いことからみると、今後さらに多くの新規汚水処理場が整備されると予想されます。先日公表された12次5カ年計画綱要では、これからの5年間に都市の汚水処理率を85%まで引き上げる目標を掲げています。

一方、中国の汚水処理事業は主に以下5つの課題を抱えています。
一つ目は、都市と農村の整備状況の格差です。昨年の段階では、東北と中西部地域にある61の都市において汚水処理場がまだ稼動しておらず、全国の小都市のうち、約65%には汚水処理設備すらありません。
二つ目は下水管網の整備が大幅に遅れていることです。多くの地方政府では、目立たない下水管網より評価につながる汚水処理場の整備に注力しがちだからです。
三つ目は汚水処理場の建設や運営が無計画なことです。必要以上に大規模な汚水処理場を建設して低い稼働率にとどまっていたり、導入した最新鋭の設備を運行できる専門的な管理者が不足していたりすることなどが各地で顕在化しています。
四つ目は汚水処理で発生する汚泥の安全処理問題です。中国の汚泥安全処理率は10%未満に過ぎず、処理したとしてもほとんどが重金属などによる二次汚染のおそれが残る「埋め立て方式」であるのが実情です。
五つ目は窒素とリンの除去といった高度処理です。2003年に改訂された「汚水処理場汚染物質排出基準」により、新設、既設ともに窒素とリンの除去が義務化されていますが、対応が間に合っておらず、効率的に除去する処理技術が求められています。

上記状況により、中小規模の都市と町の汚水処理に適応する低コスト・運行しやすい処理工程の設計をはじめ、汚水処理場の汚泥の減量化や安全処理技術、窒素・リンの除去設備など、汚水処理分野には多くのニーズが存在します。汚泥のバイオマス資源化、膜などの高度処理技術では世界最高水準を誇る日本企業にとって、中国の汚水処理市場は今後開拓の余地が大きいのではないでしょうか。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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