オピニオン
2009年度CSR経営動向調査報告書公表
2010年03月09日 今本麻子
日本総研では、この度、「わが国企業のCSR経営動向調査2009」の結果をまとめ、公表することとなりました。この調査は社会的責任投資(SRI)のための企業調査として1999年度から毎年実施しているもので、本年度は東証一部上場企業を中心とする時価総額上位企業2000社に、「環境編」と「社会・ガバナンス編」からなる調査票への回答を求め、368社の企業から回答をいただきました。調査結果は、以下のURLからご覧頂けます。
http://www.jri.co.jp/column/opinion/detail/4878/
調査から浮かびあがった本年度の特徴的な結果を何点か挙げることができます。まず、環境経営について、これまで製造業に比べやや遅れが見られていた非製造業において大きな進捗が見られたことが挙げられます。例えば、「経営戦略の中に、温室効果ガス削減などの環境対策を明確に位置づけている」「顧客から、環境問題に配慮することが要請され、製品・サービスの購入意思決定にそうした要因が反映されるようになってきたと判断している」とする企業は、ここ数年、増加傾向にありますが、今年度は特に非製造業に属する企業における割合が大きく伸長したのが特徴的です。改正省エネ法施行、エコポイント制度や引取りリサイクルキャンペーン等、小売業を始めとする非製造業においても環境と経営の関連性がより顕在化する経営環境の変化があったことが、一つの要因として考えられます。また、社会面の取組みでは、「学校建設・運営や教師育成に関する支援・協働」や「貧困層の子どもに対する初等教育支援」等、発展途上国で複数年継続している社会貢献活動について何らかの取組みがある企業が3社に1社の割合となりました。本業のビジネスにおいて「発展途上国の生活環境改善」のための事業化を実施していると回答する企業も、昨年に引き続き増加傾向にあり、発展途上国の貧困層向け支援ビジネス・BOP(ベイス・オブ・ピラミッド)等、発展途上国に対する社会の関心の高まりと合致した結果となっていると言えます。
日本におけるCSR元年から7年目となる本年度の調査では、CSR経営が社会からの様々な要請を受け止めながら、進化を続けている様子がうかがえます。本調査結果を、企業のCSRの取組みの進捗やポジションを測る一つの指標としてご活用頂ければ幸いです。
※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。