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「開放性×実行力」で考えるオープン&クローズ戦略に向く組織とは

2026年10月27日 大原慶久


 ここ数年、産学連携による先端技術の社会実装に取り組んできた。その肝となっているのが「オープン&クローズ戦略」である。もっともこの言葉は日本独特の呼び方で、海外ではパートナー戦略やアライアンス戦略として、事業戦略の基礎に組み込まれている考え方だ。では、なぜ今あえてこの言葉を取り出すのか。日本の産業は製品開発力に長ける一方、出口戦略で後れを取り、他者が決めたルールの上で戦わされる不利な競争を強いられる場面が増えてきているからだ。国もそのような課題意識のもと、「ルールテイカーからルールメーカーへ」を合言葉に、2024年に改正産業競争力強化法に基づくOCEANプロジェクト(特定新需要開拓事業活動計画認定制度)を立ち上げた。企業と大学が共同研究の段階から、標準化と知財を一体で活用する戦略を描くことを促す制度である。要するに、どこで稼ぐか(競争領域)と、誰と市場を広げるか(協調領域)の見取り図を早い段階で描こうという目論見である。
 例えばスキージャンプ競技などは不利な環境で競わされるようになった典型例だ。「日の丸飛行隊」が大活躍した1998年の長野オリンピックまでは、スキー板の上限長さは身長+80cm以下であり、体格に劣る日本人でも比較的長い板の使用し飛距離を稼ぐことができた。98年以降は飛びすぎ抑制、安全性を理由に、スキー板の上限長さは身長の146%以下というルールが制定され、小柄な日本人には不利に働いた。また2004年以降はBMI値をもとにしたルールが設定され体重も制約に加わり一層不利になっている。このようなルール制定は客観的に公平な理由をもちいて大義を掲げ、ルール制定側の国が協調して利益を得るため多数決構造を作り出している点が重要だ。
 製品やサービスの領域で、反対にこの戦略を上手に活用したのはQRコードだ。基本仕様を無償で開放するとともに漢字に対応しアジア圏での協調的に利益を確保し使い手を一気に増やす一方で、読み取り技術は手元に残して収益源とした。このように仲間集めによる普及と自社利益獲得を目指すのがオープン&クローズ戦略である。

 似た言葉にオープンイノベーションがある。こちらは外部の知を取り込み、あるいは外に出して「いかに創るか」を問う考え方だ。事業におけるオープン&クローズ戦略は「どこまで開き、どこを握り、いかに稼ぐか」を問う。前者が創造のプロセスなら、後者は収益化の設計図である。戦略はビジネス・技術・知財のどの切り口で判断するか、市場の段階によっても異なる。そのため市場創出段階や事業環境、法規や標準の整備状況など多様な観点での検証が必要で、観点に応じた各種調査の実施、また調査結果を踏まえた戦略のアップデートを継続して実施する必要がある。

 オープン&クローズ戦略の観点では、「開放性」と「実行力」の2軸で参画する組織を眺めると見通しがよいと考える。開放性は外部との出会いや議論を通じて、アイデアを大きく育てる力。実行力は各組織のルールに沿って適切に決定し推進する力、すなわち打ち出し力である。

 開放性高×実行力低:大学に代表されるように、幅広に何にでも手を出せる一方で、社会実装に対してはパートナーを必要とする組織だ。
 開放性低×実行力高:決めれば強いが、外との接点が乏しい。自治体や銀行が典型例だろう。
 開放性低×実行力低:内向きで、なかなか決めきれない。部門ごとに閉じた研究所などが当てはまる。
 開放性高×実行力高:外とつながり、かつ決めて動ける。トップが外部連携の旗を振り、権限の所在が明確な企業である。

 では、オープン&クローズ戦略はどんな象限の組織だと進むか。答えはおそらく最後の象限だ。どれほど技術が魅力的でも、窓口が決めきれず、持ち帰ったまま半年動かない相手とは連携は望みづらい。

 最後に、この問いを私たち自身にも向けてみたい。私たちの組織はどの象限にいるだろうか。そして、相手から「組みたい」と思われているだろうか。ルールメーカーになるとは、技術を磨くことだけではない。外から「組みたい」と声がかかる組織になることでもある。まずは自社を2軸の上に置き、外からどう見えているかを点検するところから始めたい。読者の皆さんの組織は、どこに位置するだろうか。


本コラムは「創発 Mail Magazine」で配信したものです。メルマガの登録はこちらから 創発 Mail Magazine

※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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