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取締役会のジェンダーバランス調査(2026年度版)

2026年09月30日 宮下太陽


 株式会社日本総合研究所リサーチ・コンサルティング部門は、プライム市場およびスタンダード市場の上場企業3,091社、役員延べ31,385人(※1)を対象として、取締役会のジェンダーバランスに関する実態調査(2026年度版)(※2)を実施した。

□目次
1.女性役員登用の経年変化と同一企業における4年間の推移
2.市場区分・役員区分別にみた女性役員の登用状況
3.役員の年齢階層別人員構成
4.業種別にみた女性社内・社外役員の登用バランス
5.社外役員の兼務状況

□調査結果

1.女性役員登用の経年変化と同一企業における4年間の推移

(1)市場全体における変化 *プライム市場(東証一部)の執行役を除く役員
・プライム市場の役員数を男女別にみると、男性役員数が減少する一方、女性役員数は増加を続けている。2021年度から2026年度までの間に、男性役員数は22,280人から13,631人へと8,649人減少し、減少率は約38.8%となった。一方、女性役員数は2,175人から3,516人へと1,341人増加し、増加率は約61.7%となった。その結果、プライム市場における役員構成のジェンダーバランスは、この6年間で大きく変化している(図表1-1)。

(2)同一企業における4年間の変化
・市場全体の集計値は、上場企業の新規上場・上場廃止や市場区分の変更など、分析対象企業の入れ替わりによる影響を受ける。そこで、2023年度から2026年度まで継続して分析対象となったプライム市場上場企業1,502社に対象を限定し、女性役員数および女性役員比率の推移を確認した。
・同一企業における女性役員数は、2023年度の2,362人から2026年度の3,405人へ増加した。社内役員は248人から380人へ、社外役員は2,114人から3,025人へ、それぞれ増加している(図表1-2)。
・女性役員比率も、全体では13.8%から20.5%へ、社内役員では2.8%から4.6%へ、社外役員では25.9%から36.0%へ上昇した(図表1-3)。2023年度を100とした2026年度の女性役員数指数は、全体144.2、社内役員153.2、社外役員143.1となった(図表1-4)。
・以上から、女性役員の登用は、分析対象企業の入れ替わりだけでなく、同一企業における役員構成の変化を伴って進んでいることが確認できる。

図表1-1 役員の男女別人数と女性役員比率の推移〔プライム市場(東証一部)〕

 
図表1-2 同一企業における女性役員数の推移〔プライム市場〕


図表1-3 同一企業における女性役員比率の推移〔プライム市場〕

 
図表1-4 同一企業における女性役員数の推移指数〔プライム市場〕
(2023年度=100)

 
2.市場区分・役員区分別にみた女性役員の登用状況
・プライム市場およびスタンダード市場の役員延べ31,385人のうち、女性役員は5,050人であり、女性役員比率は16.1%であった。市場区分別にみると、プライム市場では役員17,147人のうち女性役員が3,516人で、女性役員比率は20.5%となった。一方、スタンダード市場では役員14,238人のうち女性役員が1,534人で、同比率は10.8%であった。プライム市場の女性役員比率はスタンダード市場の約1.9倍であり、両市場の登用状況には明確な差がみられる。
・女性役員5,050人を社内・社外別にみると、社内役員(※3)は675人で、社内役員に占める女性の割合は4.1%であった。一方、社外役員(※4)は4,375人で、社外役員に占める女性の割合は29.2%であった。市場区分別にみても、プライム市場では社内役員の女性比率が4.7%であるのに対し、社外役員では35.8%、スタンダード市場ではそれぞれ3.5%、20.0%であった。両市場とも、女性役員の登用は、企業内部での育成やキャリア形成を経て選任される社内役員よりも、外部から選任される社外役員において先行している(図表2-1、図表2-2、図表2-3)。

図表2-1 役員区分別人員構成と女性役員構成〔プライム・スタンダード市場〕


図表2-2 役員区分別人員構成と女性役員構成〔プライム市場〕

 
図表2-3 役員区分別人員構成と女性役員構成〔スタンダード市場〕


・企業ごとの女性役員比率をみると、プライム市場、スタンダード市場ともに「10%以上20%未満」の企業が最も多く、プライム市場では575社(36.8%)、スタンダード市場では611社(39.9%)を占めた(図表2-4)。

図表2-4 女性役員比率〔プライム・スタンダード市場〕

 
・プライム市場における前年との比較では、「0%」「0%超10%未満」「10%以上20%未満」に該当する企業の割合がいずれも低下した。女性役員がいない企業や、女性役員比率が相対的に低い企業が減少し、より高い比率の区分へ移行する動きが進んでいる(図表2-5)。
・女性役員を選任していないプライム市場上場企業は着実に減少しており、女性役員の選任は広く定着しつつある。

図表2-5 女性役員比率の前年対比〔プライム市場〕

 
3.役員の年齢階層別人員構成
・プライム市場およびスタンダード市場の女性役員5,050人のうち、最も人数が多い年齢階層は60~64歳で、1,213人であった。男性役員についても60~64歳が最も多く、7,068人であった。年齢階層別に女性役員比率をみると、最も高いのは45~49歳の29.9%であり、次いで40~44歳の29.4%であった。役員数そのものは60~64歳で最も多い一方、女性比率はより若い年齢階層で高い。
・社内役員と社外役員に分けて年齢構成をみると、社内役員は相対的に若く、社外役員は相対的に高い年齢層の割合が大きい。ただし、両者の年齢構成が明確に二分されているわけではなく、相当程度重なっている(図表3)。

図表3 役員の年齢階層別人員構成〔プライム・スタンダード市場〕


4.業種別にみた女性社内・社外役員の登用バランス
・図表4では、縦軸に社内役員に占める女性の割合、横軸に社外役員に占める女性の割合を取り、それぞれの全業種平均を基準として、東証の業種中分類を四つの象限に区分した。これにより、女性役員の登用が社内役員と社外役員のどちらで相対的に進んでいるかという、業種ごとの特徴を確認できる。
・ただし、女性役員比率は、業種だけでなく、企業規模、沿革、人材構成、事業特性、個々の企業の登用方針など、複数の要因の影響を受ける。このため、図表4は業種間の優劣を示すものではなく、各企業が自社と同業他社との違いを把握するための参考情報として位置付けられる。

図表4 業種(東証中分類)別にみた女性役員の状況〔プライム・スタンダード市場〕

 
5.社外役員の兼務状況
・女性役員の登用が社外役員を中心に進むなか、候補となる人材への需要の集中状況を確認するため、社外役員の兼務状況を男女別に分析した。ここでいう兼務とは、調査対象であるプライム市場およびスタンダード市場の複数企業において、同一人物が社外役員を務めている状態を指す。
・分析の結果、女性社外役員のうち、複数企業の社外役員を兼務している者の割合は32.0%であった。これに対し、男性社外役員の兼務割合は13.0%であり、女性の兼務割合は男性の約2.5倍となった(図表5)。女性社外役員のおよそ3人に1人が、調査対象市場内の複数企業で役員を兼務していることになる。この結果からは、女性社外役員に対する企業側の需要が、現時点では一定の候補者層に集中している可能性が示唆される。
・もっとも、本調査の兼務先はプライム市場およびスタンダード市場の上場企業に限られており、その他の企業・団体等における役職は含まれていない。また、兼務が生じる背景には、候補者の専門性や経験に対する評価、本人の意向など複数の要因が考えられる。したがって、この結果のみをもって女性社外役員候補者が絶対的に不足していると断定することはできないが、候補者層の裾野を広げる必要性を示す結果といえる。

図表5 社外役員の兼務状況〔プライム・スタンダード市場〕

注:兼務状況の分析における人数は、同一人物を名寄せした実人数である。


付記
・本調査では、プライム市場およびスタンダード市場の女性役員比率が上昇するとともに、同一企業に対象を限定した分析においても、女性役員の登用が進んでいることが確認された。女性役員の増加は、分析対象企業の入れ替わりだけによるものではなく、個々の企業における役員構成の変化を伴って進展している。
・一方、その進展は社外役員の登用に大きく依存している。社内役員に占める女性の割合は、プライム市場で4.7%、スタンダード市場で3.5%にとどまるのに対し、社外役員ではそれぞれ35.8%、20.0%となっている。また、女性社外役員の32.0%が複数の調査対象企業を兼務しており、その割合は男性社外役員の13.0%を大きく上回った。
・これらの結果は、女性役員の登用が着実に進む一方で、社外役員候補者の一定層に企業の需要が集中している可能性と、社内から役員候補者を継続的に育成する仕組みを一層強化する必要性を示している。今後、各企業には、社外役員候補者の発掘範囲を広げることに加え、女性社員が経営経験や事業責任を担う機会を計画的に拡充し、社内役員候補者の層を厚くしていくことが求められる。また、多様な人材が社外役員への就任を検討しやすい処遇・執務環境を整備するとともに、着任後に十分な役割を果たすための情報提供、研修、事務局支援等を充実させることも重要である。
・2030年に向けて問われるのは、女性役員の人数や比率を高めることだけではない。限られた社外人材への依存を避けつつ、社内外の双方から多様な役員候補者が継続的に輩出される基盤をいかに構築するかが、次の課題となる。


(※1)2026年7月1日時点の有価証券報告書をデータソースとし、有価証券報告書の「4【コーポレート・ガバナンスの状況等】(2)【役員の状況】①役員一覧」に記載された役員を整理・集計した。なお、特段の記載がない限り、人数は兼務による重複を含む延べ人数である。2026年7月1日時点で有価証券報告書の提出を延期している企業は、分析対象から除外した。
(※2)2025年4月1日~2026年3月31日に上場企業として決算を行ったEDINET(Electronic Disclosure for Investors' NETwork)提出のプライム&スタンダード市場の計3,091社を分析対象とした。
(※3)本稿において社内役員は、社内取締役(監査等委員を含む)と社内監査役を指す。指名委員会等設置会社において非取締役の執行役は除く。なお執行役を含んだ集計・分析は別途実施済み。
(※4)本稿において社外役員は、社外取締役(監査等委員を含む)と社外監査役を指す。
以上

※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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