オピニオン 地域の核となる農業者を支援する次世代アグリビジネス協議会 2026年06月23日 三輪泰史 わが国の農業は深刻な危機に瀕している。農業従事者の平均年齢は約70歳に達し、急速な離農に伴う耕作放棄地の増大が食料安全保障面で大きなリスクとなっている。今後10年間で農業者数は3分の1以上減少すると見込まれていることを踏まえると、現状の農業生産力を維持するだけでも、農業の生産効率を最低でも1.5倍に高めなければならない。 そのような中、農業の担い手の中心は個人経営や家族経営を主体とする中小規模の農業者から、組織的な経営管理能力を持つ農業法人へと移行していくことが見込まれる。農業法人は、雇用人材の確保、設備投資、販路開拓、データ活用を一体的に進めることができ、離農により発生する農地の受け皿としても重要性を増している。地域農業の持続性を高めるうえで、法人経営の育成は不可欠である。 かつて日本の農業界では、資本力のある農業法人や企業の参入による大規模化に対し、中小規模の農業者が追い出されるのではないかという懸念が根強く存在したが、その構図は大きく変化している。高齢農業者から、自分の代わりに農地を耕し、守ってほしいという切実な要請が寄せられており、農業法人は地域の農地を引き受けて生産基盤を守る「受け皿」としての役割を強く期待されているのである。 ただし、単に栽培面積を増やすだけでは成長産業化は達成できない。小規模で分散した農地では、高効率な大型農機を十分に活用できず、圃場間の移動に多大な時間がかかるなど、生産性の低さが大きな課題となるからである。 この課題を乗り越える鍵として、日本総合研究所は三井住友銀行等とともに「次世代アグリビジネス協議会」を立ち上げた。本協議会は、土地利用型農業を主たる対象とし、農業の成長産業化と食料安全保障の強化を掲げ、業界横断の連携によって新たな価値を創造することを狙っている。 儲かる農業を実現するために重要なのが、意欲と能力のある農業者への農地集約(換地を含む)と畦畔除去等による大区画化である。これにより、ドローンによる農地モニタリングや自動運転農機による農作業、データ駆動型農業といったスマート農業技術の社会実装が可能となる。デジタル技術の活用と効率的なビジネスモデルの構築は、次世代の担い手にとって農業を「魅力的な産業」へと変貌させる原動力となる。 一方で、本協議会では、大規模化のみを志向するのではなく、地域の「共存共栄モデル」を追求している点を強調したい。地域に収益性の高い大規模農業法人が育つことで、周辺の中小規模の農業者に対して農業支援サービス(作業代行、人材派遣等)を提供することも可能となる。大規模VS中小規模という対立構造ではなく、大規模と中小規模が連携するモデルがこれからの標準形となる。中核となる儲かる農業法人に対するサポートを通して、地域全体、日本全体の農業に貢献できるよう、積極的に協議会の活動を推進していきたい。本コラムは「創発 Mail Magazine」で配信したものです。メルマガの登録はこちらから 創発 Mail Magazine※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。