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オピニオン
経済安全保障としての脱石油依存と「山の国資源」の活用~山間地の地域経済圏を起こすエネルギー戦略~
2026年06月16日 瀧口信一郎
株式会社日本総合研究所は、水力発電を強化した場合の発電量を独自に試算した上で、それを有効活用できる戦略を策定し、『経済安全保障としての脱石油依存と「山の国資源」の活用』(以下「本レポート」)としてとりまとめたので発表する。
本レポートは、原油調達リスクが改めて顕在化した中、山間地域が多い日本で森林や河川から豊富に得られる水力、バイオマス、地熱といった「山の国資源」の有効活用に着目し、石油依存を減らし国内資源の活用にシフトするための提言として作成した。
■レポート
『経済安全保障としての脱石油依存と「山の国資源」の活用~山間地の地域経済圏を起こすエネルギー戦略~』
■要旨
イスラエル・米国とイランの紛争に伴うホルムズ海峡の封鎖により、原油輸入の93%を中東に依存する日本の調達途絶リスクが顕在化した。1941年の対日石油輸出禁止以降、1973年、1979年の二度のオイルショックなどの石油危機が到来し、今後もその危機が訪れる可能性は拭い去れない。原油の調達途絶リスクを中長期的に回避するためには石油依存を減らし、国内資源を活用することが重要となる。
原油の主な用途は自動車、航空機、船舶の「移動用燃料」とプラスチックなどの化学製品の原料となるナフサなどの「原料」であるため、石油依存を減らし、国内資源の活用にシフトするためには、EVの普及推進などを通じて「移動用燃料」を電力に置き換えることと、発電に国内資源を活用することを一体となって進める必要がある。
発電への国内資源として、水力、バイオマス、地熱といった山の森林や河川に眠る「山の国資源」と、洋上風力、潮力・波力、海水を利用する核融合、宇宙太陽光という海洋に眠る未開拓の「海の国資源」が考えられるが、既存のインフラを活用できるという投資効率の観点、山の生活を守る観点から水力を中心とする「山の国資源」を優先して活用する重要性が高い。
発電量に占める水力発電の割合は、2024年度で7.4%(735億kWh)にとどまり第7次エネルギー基本計画では2040年度でも8~10%が想定されている程度で目立たないが、そのポテンシャルは大きく、ダムを新設せずとも、ダム運用高度化やダム嵩上げといった既存ダムシステムの設備強化による治水ダムのハイブリッドダム化などを行うことで、発電量を倍増させ得る。
<国への提言:電力と産業・社会・輸送基盤を連携させたプロジェクト推進を>
「山の国資源」の活用には、全体としてインフラ建設、運搬コスト、管理コストなどがかかるため、発電コストが高くなる懸念がある。そのため、単純に開発・電力使用を行うのではなく、生み出したエネルギーを新たな産業創造や社会生活の改善につなげることでコスト以上のメリットを生み出す仕組みを作っていく必要がある。
例えば、水力発電で生み出された電力を蓄電池に貯める拠点を作り、その電力を活用してEVコミュニティバスの運行やデータセンター、アクアポニックス(陸上養殖と水耕栽培)などの産業誘致、電力システムが停電した際の非常用電源としての活用など、地域交通・産業および地域雇用創出・防災へ一体的に貢献する仕組みが考えられる。
国には、このような電力と産業・社会・輸送基盤を連携させたプロジェクトを推進し、縦割り打破で、エネルギー・経済安全保障と地域振興を同時に進めることが求められる。
<自治体への提言:国家戦略特区を活用して地方創生を進めよ>
全国で数カ所の拠点整備と産業化の壁となる規制改革を、安全や環境に関する安心を確保する前提で推進し、地方創生と産業政策を一体的に推進することが求められる。「地域未来戦略」などにも落とし込み、自動交通整備、産業拠点への企業集積、スタートアップ支援、地域中小企業の内発的な成長、若い人材を対象とした教育機関整備を行い、雇用と定住の促進の連鎖を創出することが重要となる。
※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。