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制度等で給付されない支援機器における障害当事者の購入動機及び購入に至る過程に関する実態調査

2026年04月24日 石塚真実、城岡秀彦、渡邉りさ子、榎木日向子


*本事業は、令和7年度障害者総合福祉推進事業として実施したものです。

1.事業の背景・目的
 支援機器とは、障害者の自立や社会参加を支援する機器の総称である。近年では、障害者の社会参加を推進する社会背景のもと、補装具費等支給制度や日常生活用具給付等事業等の給付制度の対象とならない支援機器(例えば、視覚障害者を対象とした歩行支援スマートフォンアプリ、肢体不自由者を対象としたゲーム用アクセシビリティツール等)が多く開発されている。一方で、これらの制度対象外の支援機器について、障害当事者がどのように情報を入手し、購入し、使用しているのかといった実態は明らかになっていない。以上の背景を踏まえ、障害当事者に制度対象外の支援機器が届くまでの実態を把握することが本調査の目的である。

2.事業の概要
 障害当事者に制度対象外の支援機器が届くまでの実態を把握するため、障害当事者19名および支援者6名に対するヒアリング調査、また支援機関・支援者3件に対する現地調査を実施した。ヒアリング調査、現地調査での調査対象者の発言はすべて逐語録を作成し、コード化・カテゴリ化を行い、障害当事者に制度対象外の支援機器が届くまでに影響する要因や、支援者が制度対象外の支援機器を当事者に届けるための支援を行うことに影響する要因を分析した。その後、抽出された要因の関係性を整理し、障害当事者に制度対象外の支援機器が届くまでの一連の流れやその障壁、支援者による障害当事者への支援における障壁を実態として取りまとめた。また、障害当事者へのヒアリング調査から得られた障害当事者に制度対象外の支援機器が届くまでのエピソードをまとめた 「自分らしい暮らしを叶えるために~障害当事者に支援機器が届くまでストーリー集~」を作成した。

3.事業の成果
 本事業を通して、障害当事者に制度対象外の支援機器が届くまでの一連の流れが明らかになった。(図表1)


 例えば、支援機器の必要性に気が付くきっかけを得た障害当事者は、店舗、インターネット検索、SNS・動画サイト等での情報収集、同じ障害を持つ友人や当事者コミュニティでの情報共有、展示会・講演会への参加、支援者への相談等の多種多様な情報収集を行っていた。そして、機器の体験や動画情報等をもとに実用性・必要性や自身の生活状況・好みとの合致度合い、費用対効果等を見極めながら、購入する判断を行っていた。
 特に、障害当事者が支援機器の購入・使用に関する相談対応等を行う支援者との関わりを持っていること、お試し利用や使用のイメージが付きやすい動画情報を通じて必要性を理解できることは、障害当事者の制度対象外の支援機器の購入・使用を促進するために重要な要因であった。また、障害当事者が子どもの場合には、両親等の家族が、子どもにできるようになってほしい、暮らしやすくなってほしいという思いから、積極的に情報収集を行い、比較的高額な支援機器であっても購入する点が特徴的だった。

 一方で、障害当事者に制度対象外の支援機器が届くまでの障壁として、支援者との出会いや支援機器との出会いが障害当事者・家族の行動に委ねられており、必要な支援にたどり着くこと自体に難しさがあることや、障害当事者・家族にとって必ずしも分かりやすい情報提供が行われていないこと等、障害当事者・家族の置かれている状況が障壁になりうることが分かった。その他、支援機関・相談窓口体制に関連して支援機関の認識不足や相談窓口の利用のしづらさ、制度対象外の支援機器に関する情報が十分に周知されていないといった障壁や、ひとりひとりの障害当事者の状態にあった支援機器の調整やユーザビリティの制限、販売現場における知識や対応不足といった支援機器の開発・販売の状況に関わる障壁があることが 示唆された。
 また、支援者による障害当事者への支援における障壁として、ニーズを持つ障害当事者との出会いの場が制限されることや出会った当事者とのつながりを保ち続けることの難しさ、障害当事者の多様なニーズ把握の難しさといった障害当事者へのアプローチにおける障壁や、支援の方法が支援者個人や支援機関に委ねられることによる支援力の差、制度対象外の支援機器を支援機関で管理することの難しさといった支援機関・相談窓口の体制に関わる障壁があることが示唆された。
 さらに障害当事者を対象に実施したヒアリング調査をもとに、障害当事者に制度対象外の支援機器が届くまでの一連のエピソードをまとめた「自分らしい暮らしを叶えるために~障害当事者に支援機器が届くまでストーリー集~」を作成した。このストーリー集は、支援機器の使用経験が少ない障害当事者や家族等に支援機器を購入・使用する方法を知ってもらうこと、支援機器開発・販売に取り組む企業等に、支援機器の販売および普及に向けた効果的な方法を検討する際の一助としてもらうことを想定している。

4.今後の課題
 本調査の成果を踏まえ、今後は下記3点について、検討していく必要があると考えられる。
①支援機器開発・販売企業に対する障害当事者に制度対象外の支援機器を届けるための効果的なアプローチ手法の周知
 本調査を通して、これまで調査されていなかった、障害当事者の視点からの障害当事者に制度対象外の支援機器が届くまでの一連の流れが明らかになった。支援機器開発企業が障害当事者に支援機器を届けるために行っている工夫と、障害当事者の視点で求められる情報や重視しているポイントには、認識の相違がある可能性があり、今後は障害当事者の視点からの実態を支援機器開発や販売に携わる企業担当者に対してより広く周知していく必要があると考えられる。

②障害当事者が生活の中で当たり前に支援や情報につながるための体制整備
 障害当事者に制度対象外の支援機器が届くまでの障壁を解消するため、障害当事者・家族が必ず関わる医療機関や教育機関・就労先等との連携体制の構築やそれらの機関における情報提供体制、相談しやすい窓口体制等を検討する必要がある。また、その過程で障害当事者に関わる機関・企業等に対して、障害や支援機器に対して知識や理解を深めてもらうための教育体制の検討も必要だと考えられる。

③全国のどの地域に暮らしていても、自身に合った支援機器が活用できるような支援が受けられる仕組みの構築
 障害当事者を支援するための方法は、支援者個人や支援機関に委ねられていることが多く、出会った支援機関や支援者によって、障害当事者の生活に与えられる影響も異なることが想定される。どの地域でどの支援機関・支援者と出会ったとしても、自身に合った支援機器を活用できるような支援が受けられるよう、専門職の知識の底上げや地域間連携の強化等を図る仕組みの構築が求められる。

※本調査研究事業の詳細につきましては、下記の報告書および別冊資料をご参照ください。

報告書

【別冊】自分らしい暮らしを叶えるために~障害当事者に支援機器が届くまでストーリー集~



【本件に関するお問い合わせ】
リサーチ・コンサルティング部門 シニアコンサルタント 石塚真実
E-mail:ishizuka.mami@jri.co.jp

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