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複数・広域・多分野のインフラ施設を「群」として捉えたマネジメント「群マネ」における官民連携の推進にあたって(後編:民間事業者編)

2026年04月16日 名取鼓太郎


1.はじめに
 本稿の前編として、インフラ施設の老朽化状況や地方公共団体等のインフラ施設の管理者(以下、「施設管理者」という)の人的および資金的リソース不足等の現状や課題について示した(※1)。また、この課題解決に向け、国土交通省は複数・広域・多分野のインフラ施設を「群」として捉えたマネジメントの概念(以下、「群マネ」という。)に関する提言を取りまとめた(※2)ことの他、群マネの導入拡大に向けた取組やポイント等について、主に施設管理者の目線で述べた。
 前編で述べた群マネ導入による施設管理者の期待や関心どころ等を踏まえつつ、後編となる本稿では、群マネ事業の受注者となり得る民間事業者等(以下、「民間事業者」という)の目線で、群マネ事業への参画や関与に係るポイント等を述べる。

2.群マネ事業への参画・関与にあたってのポイント
 群マネ事業は、施設管理者ごとにその検討や取組の方向性・進展状況等が異なる。そのため、群マネ事業への参画を企図する民間事業者は当該事業の検討・取組状況に応じて、参画や関与の仕方を適切に選択する必要がある。換言すると、民間事業者は事業の検討・取組状況を加味せずに参画・関与すると、民間事業者が設定した目的を達成できず、徒労に終わる可能性がある。ここでは、民間事業者による群マネ事業への適切な参画・関与に際して、事業の状況に応じて押さえておくべきポイント等について、筆者の調査や支援実績等を基に3つの事業進捗フェーズに分けて説明していく。



出所:国土交通省 インフラの維持管理・修繕等に係る官民連携事業の導入検討支援 報告書
下田市内における静岡県・下田市一体型道路等包括管理事業化検討調査 報告書


(1)事業発案フェーズ
 施設管理者が抱える課題解決のため、施設管理者はインフラ施設のメンテナンスを含めたマネジメント(以下、「マネジメント」という)体制の改善や強化を試みるとき、まずは実施に係る計画等を策定する。このフェーズを事業発案フェーズとする。このフェーズでは、施設管理者はその取組の目的や達成目標の設定の他、先行事例調査や市場調査を通じた事業手法やスキームの検討等、事業化に向けた調査や検討を実施し、最終的に事業化の要否を判断することになる。ここで、施設管理者が「事業化は不要」との判断を下しては、民間事業者による参画の可能性が失われる。したがって、このフェーズにおける民間事業者目線でのポイントは、施設管理者に事業化の必要性を示すことである。
 大阪府泉大津市と高石市、忠岡町は、2023年度に2市1町広域連携に関する協定の締結やインフラ施設の管理に関する合同勉強会を開催しており、道路施設等の効果的な維持管理体制の構築や維持管理業務の効率化の実現に向けた機運醸成を2市1町合同で実施してきた。また、同年度には2市1町を含めた泉州地域が国土交通省の群マネのモデル地域(※3)(群マネを普及するために、有識者からの助言や検討支援を受けることができる取組)に選定され、その枠組みを活用しつつ検討を進め、2025年12月に泉州地域の群マネ実施方針を公表(※4)している。加えて、2024年度には2市1町は同地域の現状整理や事業条件の検討等を含む実現性を把握するための市場調査等を実施しており、この調査で仮構築した群マネの長期目線シナリオにおいて、導入に伴い一定のコスト削減効果が見込まれた。そのため、2025年度には民間事業者との対話等により、統一的な維持管理水準や試行的な業務の発注に向けた公募図書の作成等、2026年度の事業化を目指して引き続き検討を進めていることが伺える(※5)
 このように、事業発案フェーズでは施設管理者は事業化要否の判断のための机上での効果測定の他、実現性を有する事業条件を構築するため、民間事業者と対話等を実施する。そのため、民間事業者は市場調査等への積極的な参加を通じて、事業化により生じ得る効果等を訴求することがポイントとなる。



出所:大阪府泉大津市「2市1町一体型道路等包括管理等導入可能性調査業務 報告書」(2025年3月)


(2)試行フェーズ
 事業発案フェーズにおける各種調査や検証等を通じて事業化が決定すれば、施設管理者から群マネ施策が事業として発注される。ただし、この段階で発注される事業は、マネジメントの対象となる施設やその業務範囲等が比較的コンパクトで事業規模が小さく、群マネの本格導入前の試行的な事業として位置づけられることが多い。このフェーズを試行フェーズとする。このフェーズでは施設管理者が期待する業務の効率化等の群マネ導入に係る一定の効果が得られなければ、従来のマネジメント体制に戻る可能性があることに留意する必要がある。したがって、このフェーズにおける民間事業者目線でのポイントは、試行フェーズでの事業の遂行を通じて施設管理者が期待する効果をいかに発現させるかという点にある。
 静岡県および静岡県下田市では、国土交通省のインフラの維持管理・修繕等に係る官民連携事業の導入検討支援(※6)等を通じて、2022年度までに群マネ導入により一定の効果が得られることが確認された。そのため、2023年度には静岡県および静岡県下田市管理の道路を対象とした舗装や小規模修繕業務を試行業務として発注している。その結果、従来のマネジメント体制と比較して、契約手続きや業務履行に関する管理や報告書作成等の業務が効率化された。一方で、受注者の構成員間での役割分担が固定化されていたため、柔軟な業務実施体制を採用できなかった等、体制上の要因により道路維持業務の効率化が実現しなかったという課題も挙げられている。その他、複数の施設管理者が合同で群マネ事業を実施する際の特有の事項として、従来、異なっていたインフラの管理水準や民間事業者の参加資格要件の設定方法等の事項が明らかとなった。同事業は改善等を繰り返しながら、本稿執筆時点では第3期目の事業として継続的に実施されている他、2024年度には静岡県管理の他の道路を対象に、2025年度には静岡県および静岡県賀茂郡南伊豆町管理の道路を対象に群マネ事業が別途発注されている。
 このように、試行フェーズでは群マネ導入を通じて施設管理者が期待する効果等が得られれば、第2期、第3期…と対象施設や業務、エリア等を変えながら継続的に事業が発注され、本格導入フェーズ(詳細は後述)における事業にステップアップしていくことが見込まれる。そのために民間事業者は、施設管理者が期待する効果等はなにか、それらの効果はどうすれば発現されるか等を念頭に置きながら事業に参画、取り組むことがポイントとなる。



出所:国土交通省 インフラの維持管理・修繕等に係る官民連携事業の導入検討支援 下田市内における静岡県・下田市一体型道路等包括管理事業化検討調査
インフラの維持管理・修繕等に係る官民連携事業の導入検討支援(その3) 報告書


(3)本格導入フェーズ
 試行フェーズでの試験的な事業を通じて業務が効率化される等、施設管理者が群マネの有用性を認めた場合、施設管理者は他のエリアへ群マネの事業スキームを横展開することや対象とする施設や業務を拡大させる等、さらなる効果を得るべく規模等を拡大させた本格的な事業へと発展させることが多い。このフェーズを本格導入フェーズとする。このフェーズの事業は、例えば事業対象の施設を道路とした場合、その業務内容は巡回や補修等の民間事業者による判断が不要な業務にとどまらず、点検や診断等の判断が必要な業務までが含まれ、特定分野の施設のマネジメントに必要な大半の業務が対象となる。また、事業には業務の履行を民間事業者の判断・裁量に委ねる性能規定や、設定した指標の達成状況に応じて民間事業者に支払う額等の一部または全部が決まる方式である指標連動方式が適用されることもあり、業務の履行方法は基本的に民間事業者の裁量に委ねられる。これらのように、本格導入フェーズでは事業規模や民間事業者の裁量が最大化される等、事業の最終形となることが多い。換言すると、このフェーズで事業が形成されると、事業のスキームや条件の大幅な変更や改善がなされることはあまり見込まれない。したがって、このフェーズにおける民間事業者目線で不可欠なポイントは、十分な利益等の期待する成果を得ることができる事業のスキームや条件に仕立て上げることである。
 東京都府中市では、市内に位置するけやき並木通り周辺地区の一部の道路施設・業務を対象とした群マネ事業が2014年度に開始され、現在では、市全域を3地区に区分した3つの事業から構成される市内全域を対象とした事業へと発展を遂げている。特に、同市では性能規定をいち早く導入しており、本稿執筆時点では最新の事業となる「道路等包括管理事業(全域2期)」では、性能規定だけでなく指標連動方式の導入が予定されており(※7)、先進的な取組となっている。具体的には、対象施設の要補修・修繕箇所等の発見率(=巡回による発見数/(巡回による発見数+要望相談受付件数))を指標として設定しており、この指標に関連する巡回の回数やルート等の設定は民間事業者の裁量に委ねられている。換言すると、指標の達成は民間事業者の努力次第となることが伺える。また、指標に対する達成状況次第では全域3期事業の事業者選定時に評価点への加点(※8)が予定される等、民間事業者の業務遂行意欲を促進する仕組みを構築している。
 このように、本格導入フェーズでは事業規模の拡大に伴う履行体制の構築や性能規定・指標連動方式の導入に伴う専門的知見やノウハウ活用等が必要となり、業務の履行そのものの難易度が高まることが多い。また、指標の達成状況次第で次期事業の公募時に加点される府中市の事例等も踏まえると、本格導入フェーズでの新規参入についてはさらに難易度が高いことが見込まれる。したがって新規の民間事業者は、既存の民間事業者に匹敵もしくはそれ以上の実績や提案を通じて参入を目指す、もしくは事業発案フェーズや試行フェーズの事業への参入を優先する等を適切に判断していくことがポイントとなる。



出所:府中市 「府中市道路等包括管理事業(全域2期)事業者説明会


3.おわりに
 群マネ事業の成功には官民の連携が不可欠であり、そのためには、事業に対する双方の考えや認識等を理解することが重要である。そこで、本連載の前編 では施設管理者に焦点を当てて群マネの導入・推進に向けた課題と解決の方向性等について、後編となる本稿では施設管理者の検討状況等を踏まえた民間事業者による事業への参画ポイント等について述べた。全2回の本連載が双方の理解促進の一助となれば幸いである。

(※1)日本総合研究所「複数・広域・多分野のインフラ施設を「群」として捉えたマネジメント「群マネ」における官民連携の推進にあたって(前編:インフラ施設の管理者編)」(2025年12月)
(※2)国土交通省 社会資本整備審議会・交通政策審議会技術分科会 技術部会「総力戦で取り組むべき次世代の 『地域インフラ群再生戦略マネジメント』 ~インフラメンテナンス第2フェーズへ~」(令和4年12月)
(※3)国土交通省 「「群マネ」のモデル地域を11 件(40 地方公共団体)を選定しました!
(※4)国土交通省 インフラメンテナンス情報「群マネモデル地域の実施方針」(R7.12.18更新)
(※5)大阪府貝塚市 「泉州地域における市町事務の共同実施モデル構築事業検討業務委託に係る公募型プロポーザルの実施について」(2025年7月16日)
(※6)国土交通省 インフラの維持管理・修繕等に係る官民連携事業の導入検討支援ウェブサイト
(※7)府中市 府中市道路等包括管理事業(全域2期)モニタリング手順書(令和5年9月)
(※8)府中市 府中市道路等包括管理事業(全域2期)モニタリング手順書事業者説明会
以上

※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
関連リンク

    複数・広域・多分野のインフラ施設を「群」として捉えたマネジメント「群マネ」における官民連携の推進にあたって
    ・前編:インフラ施設の管理者編
    ・後編:民間事業者編

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