今、日本人は新たな挑戦を求められている。高まる地政学リスクに対応した国内資源の確保である。日本は産業のサプライチェーンの見直しが必須で、山の資源はもちろん海の資源を徹底的に洗い直す必要がある国連海洋法条約によって海洋資源開発は排他的経済水域(EEZ)において沿岸国の権利として認められているため、世界第6位のEEZを持つ日本には海洋資源深耕の可能性が残されている。海底のレアアースや熱水鉱床の鉱物資源利用、海水を活用する核融合、海水面からの二酸化炭素回収(DOC: Direct Ocean Capture)を進めることが考えられる。 沿岸では、洋上風力発電の建設が本格化するが、インフレによるコスト高、事業者の撤退で計画実現の停滞が懸念される。単独技術で規模を追求することは日本の領土・領海では容易ではない。そこで、異なる分野が協力し合い、複数海域に展開する標準化と規模化を目指す「海洋産業コンプレックス(複合体)」の構想を進めることが有効だ。将来の低コスト電力を実現する核融合、宇宙太陽光、洋上風力による電力地産地消インフラ、深海探査船・海洋作業ロボットの自動化情報通信インフラを備え、船舶・洋上風力の機械部品供給基地、海洋船舶ドックを整備した海洋資源探索、海水からの重水素、リチウム、二酸化炭素の回収、二酸化炭素を用いた微細藻類培養、大型藻類植生、微細藻類からの海面養殖、バイオ・CCUの素材製造を複合的に組み合わせる海洋基地を作ることがそのイメージである。既存の産業立地に制約されず、AI、ロボットによる次世代型産業プラットフォームを作る意義もある。すでに内閣府の総合海洋政策推進事務局で洋上風力発電の基盤作りが始まっているため、ここに海洋資源の探査と回収のプラントを組み込み、海洋産業の連携体を作ることが考えられる。