筆者らは、11月20日の「世界子どもの日」にあわせて、従業員のウェルビーイングと子どもとの関係の意識・実態調査-10~18歳の子どもを持つ働く親を対象に、仕事観やウェルビーイングとの関係に注目-」と題したレポートを発表しました。子どもと関わる中で形成される仕事観や生活観について、親自身の感じ方について調査したものです。本調査では、企業で働く、10~18歳以上の子を持つ親を対象に、仕事やプライベートの満足度を一体的に「生活満足度」として10点満点で回答してもらい、その他質問項目とのクロス集計を行うことによって、働く親と子どもとの関係について探索的に分析を行いました。本稿では、特に筆者が印象的だと感じた点について追加データを交えて紹介します。
最も印象的だったのは、子どもとの団らんに関する結果です。本調査では、仕事のある平均的な1日に30分以上子どもと団らんすることが「よくある」と回答した人の割合は、生活満足度10点で47.2%となり、生活動満足度0点の13.6%と比べ約34ポイント高く、子どもとの団らんの頻度が高い人ほど生活満足度も高い傾向にあることがわかりました。さらに、今回新たに回答者の仕事のある平均的な1日に、回答者の配偶者(パートナー)が30分以上子どもと団らんする頻度についても分析を進めたところ、「よくある」と回答した人の割合は生活満足度10点で61.2% 、生活満足度0点で42.5%となり、その差は約19ポイントでした。つまり、家族全体の活動よりも、自分と子ども個人の関係性の方が生活満足度に強く結びついていることが示される結果となりました。本調査の回答者は、男性が約9割、平均年齢は約52歳という構成であり、一般に家庭や育児との距離が語られがちな属性であるにもかかわらず、このような結果となった点は企業施策を検討する上でも注目すべき示唆であるといえます。
次に興味深いと感じたのは、生活満足度が高い親ほど子どもと勤務先や仕事内容について共有が出来ている点です。子どもが「仕事内容も勤務先の名前も知っている」と回答した人の割合は、生活満足度10点では66.9%、生活満足度0点では34.7%となり、その差は約32ポイントとなりました。また、回答者の参加状況や意欲に関わらず、職場見学など、自社施設で実施される子どもや家族向けイベントが行われていると回答した人の割合は、生活満足度の高い回答者でより高まる傾向が見られました。従業員の家族と企業の接点としてこのような取り組みを行うことは、従業員のウェルビーイングを支えることへ寄与する可能性が示されました。
出所:日本総研
出所:日本総研
もっとも、こうした取り組みを実質的に意味があるものにするためには、10~18歳という年齢層ならではの特徴を考慮する必要があるでしょう。第一に、思春期に入り自分自身の予定や関心が増えることで、単純な理由では動いてくれなくなる点です。第二に、低学年の子どもと比べ社会を見る目が育ちつつあるため、職場見学などが表面的で良い面だけを見せる内容にとどまると、かえって違和感や不信感につながる可能性がある点です。
さらに、企業側にとっても新たな負担を過度に増やさず実行できるかも重要であり、筆者はこれらの課題が採用活動と多くの共通点を持っていることに注目しています。就職活動においても、就活生に主体的に参加してもらうこと、企業の価値と実際の現場やイメージとのギャップをどのように説明し、納得してもらうかが問われています。採用向けに培われてきたプログラムやコミュニケーションの工夫は、10~18歳の子どもを対象とした取り組みにも応用できる可能性があります。この年齢層を対象とする際には「なぜこの仕事が社会に必要なのか」をより丁寧に説明することが求められますが、それらの工夫が今度は就活生の動機形成や企業理解の一助となる可能性もあります。従業員の子どもと接点を持ち、事業の意義を捉えなおしたり、自社の価値の再認識の機会としたりすることで、企業と従業員の双方のメリットがあるような施策につながることを期待しています。
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※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。

