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インテリジェンス組織がもたらす経営の高速PDCA

2025年12月08日 大森充、猪尾祥一


 企業の規模を問わず、経営者は日々、持続的な成長を目指し、経営課題の解決に思考を巡らせている。組織の長として日々、多くのインプットや気づきがあり、自社の新規事業として取り組んでみる、少し調査をして自社への影響を考えてみたい、というニーズが生まれることは日常茶飯事だろう。しかし、経営者に近い社長室や経営企画室は現業で繁忙にしていることもあり、そのような気づきやアイデアを伝え業務を依頼できる状況にないとなおざりになり、そのアイデアも忘却のかなたに葬り去られ、気づいたときには他社が先行し、ハッとする経営者も多いのではないか。
 昨今、潮流にあるインテリジェンス組織の発足はこのような経営者の悩みを解決するものである。先日、日本で初めて女性首相となった高市政権においても国家情報局と呼ばれるインテリジェンス組織を発足させるというニュースが出ているが、それは目まぐるしく変わる外部環境への対応として、スピーディーに情報収集・分析し、意思決定していくことが求められている証左ではなかろうか。
 企業経営においても同様である。米国トランプ関税による影響、紛争による地政学リスクの顕在化、貿易摩擦、パンデミックといった予期しない不確実な外部環境変化への対応が、経営を左右しかねない。経営者が気になった情報や思いついたアイデアについて、スピーディーに情報収集し、示唆を得て意思決定することが経営のかじ取り上、極めて重要な時代になってきた。
 インテリジェンス組織を有する企業をレビューすると、目的に応じて保有機能・業務をカスタマイズしていることが分かる。目的と収集・分析する情報で層別すると、主に5つの形態に分かれる。



 1つ目は、冒頭の問題意識に応じて設立されるインテリジェンス組織そのものであり、マクロ環境、競合や市況等の情報を経営の意思決定に資する情報に加工し、提言するコンペティティブ・インテリジェンス組織(①)。
 2つ目は、社内の情報伝達を円滑にするため、アンオフィシャルな情報を含め、良い情報も悪い情報も収集し、意思決定に資する情報に加工し、経営者へ提言するストラテジックアシスタント組織(②)。
 3つ目は、自社の独自研究や情報・分析の結果をホワイトペーパーの形で社外に発信する社内シンクタンク組織(③)。
 4つ目は、これまで蓄積してきたナレッジをベースに、社内だけでなく社外のクライアントに対してもインテリジェンス機能を提供し、収益を獲得することを目的としたコンサルティング組織(④)。
 5つ目は、スタンフォード大学経営大学院のチャールズ・オライリー教授らが提唱した両利きの経営でいう「知の探索」(=既知の情報の範囲外にある知を探索し、それをすでに持っている知と新たに組み合わせること)の実現を目指し、イノベーションの種を見つけ、次世代の収益源となる事業としてインキュベーションするイノベーション創出組織(⑤)。
 狭義のインテリジェンス組織には上記2組織(①、②)が該当するものの、類似組織として残り3つの組織(③、④、⑤)が存在する。実際、インテリジェンス組織を発足させている企業をレビューすると、これら5つの組織の要素をカスタマイズしていることが分かる。経営者の気づきやアイデアを高速に検証し、意思決定をしながら持続的な成長に向けてPDCAを回していくためにも、インテリジェンス組織を設立してみてはいかがか。

以上

※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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