企業活動が社会や環境に与える影響(好影響・悪影響両方含む)をソーシャルインパクトと呼び、可視化する潮流がある中、ソーシャルインパクトを創出する過程を示したロジックモデルや定量的なインパクト指標を開示する「インパクトレポート」を発行する企業が増えている。
インパクトレポートを発行する企業例
| 企業名 | レポート名 |
| 株式会社三井住友フィナンシャルグループ | IMPACT REPORT 202 |
| 株式会社丸井グループ | IMPACT BOOK 2025 |
| 株式会社メルカリ | IMPACT REPORT |
| 日本テレビホールディングス株式会社 | IMPACT REPORT 2024 |
| エーザイ株式会社 | 価値創造レポート 2025 |
出所:各社公開情報を基に日本総研作成
インパクトレポートは、主にインパクト投資家や従業員に対し、社会や環境に与える具体的な影響を定量的な数値や事例をもとに開示し、企業活動を通じて発揮したいインパクトへの達成度や進捗度を示す点に特徴がある。
混同しがちな発行物として統合報告書やサステナビリティレポートがあるが、統合報告書は主にESG投資家等の株主に対して財務と非財務の情報を統合した価値創造のストーリーを開示するものであり、サステナビリティレポートは顧客や取引先に対して持続可能な社会に向けた取り組み(とりわけ非財務情報)に特化した情報を開示するものとなるため、インパクトレポートとは似て非なるものとなる。
対象と目的の違いによる発行物の特徴
| インパクトレポート | 統合報告書 | サステナビリティレポート | |
| 主な対象 | インパクト投資家や従業員 | ESG投資家 | 顧客や取引先 |
| 発行目的 | 発揮すべきインパクトの達成度・進捗度を示す | 財務・非財務価値の創造の仕組み・流れを示す | 持続可能な社会の一員として社会性のある取り組みを示す |
出所:日本総研作成
統合報告書やサステナビリティレポートがある中、なぜインパクトレポートを発行する企業が増えているのか。それは、インパクトレポートは記載の自由度が高く、自分たちの社会における存在意義(パーパス)を体現する経営や活動を描写しやすい点にあるのではないか。
というのも、統合報告書やサステナビリティレポートは記載ルールが一定程度決まっており、FTSEやMSCIといった外部機関に参照され、一定の評価を受ける。その結果、ESGやサステナビリティの取り組みが進んでいる企業とそうでない企業に層別されることが際立ち、各企業の特徴などが見えにくい。
他方、企業経営は各社各様で異なる。自社が解決したい社会課題に対して事業を通じてどう解決し、どのような持続可能な社会を創りたいのか、といった企業の個性や哲学を通じたインパクト創出を伝えることができるのがインパクトレポートの良さである。
これから先、投資家や従業員、取引先等、と協調・共生しながら企業経営を進めていくことが求められる中、ステークホルダーをファンにさせる、良好な関係人口になってもらうことが重要であり、その意味において自社の個性や哲学に基づいた社会課題の解決方法や達成したインパクト指標を示すインパクトレポートは有用である。
規定演技として評価されるESGやサステナビリティも重要であるが、自由演技として評価されるインパクト創出やロジックモデルに企業の独自性を表現することがこれからは必要である。
以上

