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生活者不在では脱炭素はうまく推進できない
~自身が暮らす大阪で、「おおさかで!減CO2(ゲンコツ)プロジェクト」を推進~

2025年03月11日 グリーン・マーケティング・ラボ 前田もと子


 筆者は、常々「自分たちから取り組む」ということをモットーにしているが、2024年度、自身が暮らす大阪の地で、生活者の脱炭素行動変容を目指す「おおさかで減CO2(ゲンコツ)プロジェクト(※1)に取り組めたことを感慨深く思う。

生活者の買い物時の行動変容を促し、脱炭素商品の市場創出を目指す
 これまで、脱炭素への取り組みは主として国や自治体が教育啓発を、民間企業が広告販促を担う形で進められてきた。企業による教育面での連携も一部行われているものの、十分とは言えず、生活者の脱炭素意識や行動変容は思うように進んでいない。
 この状況を打開するには、教育・啓発から広告販促までを一気通貫で実施し、生活者が日常的に実践できる場を提供することが必要ではないか。そう考えた、私たちグリーン・マーケティング・ラボ(GML)は、活動初年度となる2023年度、4店舗での実証実験に取り組み、手ごたえを感じた。さらに多くの人を巻き込むべく、2年目となる2024年度は、大阪府との連携協定(※2)によって官民の協働体制を構築し、大きく活動規模を広げた。

24年度に実施した「おおさかで!減CO2(ゲンコツ)プロジェクト」の概要
出所:日本総研GML

〇学習啓発活動
 大阪府内の小学校(支援学校小学部を含む)1,029校を通じて4~6年生約21万人に学習キット「減CO2ミッション」を2種類配布(※3)
・第1弾:くらしのムダ行動を探して、CO2モンスターに描くミッション。CO2モンスターを募集する、脱炭素行動を促す啓発コンテスト(※4)を夏休みに開催し、約1,400名の応募があった。
・第2弾:エコラベルを学び、商品を探すミッション。府内の小学校4校では、学習キットを使い、実際のエコラベル商品に触れて・楽しく学ぶ出前授業を実施。
 その他、自治体の開催する催事等にも多数参加し、クイズや展示等を実施した。
〇店舗活動
 GMLが主催するチャレンジ・カーボンニュートラル・コンソーシアム(CCNC)の参加企業である、食品スーパー万代の大阪府内全113店舗および、スギ薬局アプリ(全国対象)でエコラベルに関するキャンペーンを展開(※5)

 第2弾の学習キットと、店舗・アプリでのキャンペーンは、エコラベルやカーボンフットプリント(CFP)をテーマに連動させた。身近な商品・売り場を通じた学びと実践の場を提供し、脱炭素に資する賢い買い物行動の定着化を図ることが狙いだ。
「おおさかで減CO2(ゲンコツ)プロジェクト」の取り組み詳細については、GMLレポート(※6)にて紹介している。

減CO2に取り組む仲間たち(左から、ニャートラル・ギャートラル・ゲンコツさん)

企業の取り組みは少しずつ進んでいるものの、従業員の行動変容はまだまだ道半ば
 私たちGMLでは、生活者の行動変容に取り組むだけでなく、企業の脱炭素推進支援にも取り組む。CCNCの参加企業には、商品のCFP算定を促し、CFPやエコラベル付き商品を学習キットに掲載。店舗・アプリキャンペーンは学習キットに連動して開催され、万代ではエコラベル付き商品の説明POPを掲示した。また、スギ薬局では店舗でのエコラベルワークショップを開催、メーカーは出前授業や催事に参加する等、CCNC全体で、生活者との脱炭素コミュニケーションに取り組んでいる。
 また、冒頭に述べた「自分達から取り組む」というモットーから、日本総研でも社員向け環境意識・行動調査(※7)を実施。ファミリーデイにはニャートラルの着ぐるみも登場し、くらしのムダが大好きな「CO2モンスター」の塗り絵等を通じて啓発に取り組んでいる。大阪での参加社員から「学習キットに載っていたニャートラルに会えて子どもが喜んだ」と言われて嬉しかった。
 しかしながら、活動に触れた社員からの反応は好評である一方で、まだまだ社内での認知不足や取り組みに至ってない社員が多いのも事実である。CCNC参加企業においても広く従業員に取り組みが理解され、協力されているかと言えば道半ばである。

大切なのは、届けるための処方箋と仲間を増やす地道な活動
 取り組みをさらに推進する一つの鍵を握るのが、脱炭素に向けた社員の教育・啓発や企業ブランディングだとGMLでは考えている。社員の意識啓発が進まないと、企業の脱炭素推進も進まない。まず自分達が納得して取り組み、改善していく必要があるのではないか。愚直ではあるが、これが近道と考える。販促のために教育を、というのが遠回りなようで近道であるというのと同じ理屈だ。
 企業も生活者である社員で構成されている。自分ゴト化しにくい脱炭素だからこそ、まずは「楽しそう」「面白そう」と思ってもらうことで、脱炭素に触れ、学ぶ場づくりが大切となる。

 GMLが主導する「みんなで減CO2(ゲンコツ)プロジェクトオリジナルキャラクターのニャートラル達や着ぐるみ、クイズや缶バッジなどは、ファミリーを中心に楽しめるように考えたコンテンツだ。子ども向けと言われたりもするが、キャラクターの可愛さとは相反して、内容は少しだけ難しく学びになることを心掛けている。大人だって楽しく学びたい、きっと多くの人を巻き込めるはず、そう思って日々生活者を巻き込むアイディアを考え、企画している。
 先日、イベントで活躍するニャートラルの着ぐるみを見て感動の涙が溢れた。これからもニャートラル達と一緒に、楽しさやワクワク、トキメキを忘れず、多くの生活者に減CO2に取り組んでもらえるよう一層頑張ろうと思った。

(※1) 「おおさかで減CO2(ゲンコツ)プロジェクト」(2024年度取り組みは終了)
(※2) 「『みんなで減CO2(ゲンコツ)プロジェクト』による府民の脱炭素行動変容に関する連携協定締結について」(2024年3月27日発表)
(※3) 学習キットを2種類配布
〇第1弾:「大阪府内小学校等において、脱炭素行動を促す啓発コンテストを実施~学習支援を通じて『みんなで減CO2(ゲンコツ)プロジェクト』を推進~」(2024年7月12日発表)
〇第2弾:「大阪府内小学校等においてエコラベルやカーボンフットプリントの学びを支援する学習キットを配布~出前授業やアプリも活用しながら脱炭素に関する学びの機会を提供~」(2024年10月24日発表)
(※4) 「大阪府内小学校等で実施した脱炭素行動を促す啓発コンテストの受賞作品を発表」(2024年10月28日発表)
(※5) 「エコラベル・カーボンフットプリントで生活者の脱炭素に配慮した購買行動を促す「おおさかで!減CO2(ゲンコツ)プロジェクト」を開始~大阪府内小学校での「教育」支援と店舗・アプリでの「販促」を一気通貫で実施~」(2024年10月31日発表)
(※6) GMLレポート
生活者の脱炭素への意識・行動変容を目指す、「おおさかで!減CO2(ゲンコツ)プロジェクト」
〇前編:脱炭素の教育支援
〇後編:脱炭素商品の販促
(※7) 「脱炭素における生活者コミュニケーション ~まずは自分達から脱炭素行動変容を目指す~」


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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