オピニオン
脱炭素における生活者コミュニケーション ~まずは自分達から脱炭素行動変容を目指す~
2024年11月26日 グリーン・マーケティングラボ 前田もと子
日本総研のグリーン・マーケティング・ラボ(以下GML)では、生活者の脱炭素行動変容を目指し、2023年より「みんなで減CO2プロジェクト」を推進している。CO2削減を「減CO2(ゲンコツ)」と呼び、小さな子どもから大人まで、みんなで楽しく「触れて・学んで・取り組む」ことで脱炭素を自分ゴト化し、行動変容を促す取り組みである。
生活者の脱炭素行動変容に向けては、まず情報に「触れる」機会を増やすことが大切だが、脱炭素や環境問題についての情報は、正確に発信しようとすればするほど説明が長くなり、難しくとっつきにくくなってしまいがちである。せっかく正確な情報を発信しても、理解してもらえなければ意味がない。環境や脱炭素の訴求においても、ターゲットに合った生活者コミュニケーション(売り手目線ではなく、生活者に寄り添った情報や顧客体験の提供、意見収集)が大切だと筆者は考えている。
GMLでは、日用品の購買における環境配慮への意識の観点から、生活者を以下の9つのセグメンテーションに分類している。
①高感度:幅広くアンテナを広げ、環境保護要素も含めさまざまな側面で質が高いものを希求
②エコ身近:周りの情報からの影響を受けることは多くなく、地道に身近な環境保護に取り組む
③自分好み:自分の好みに近く、質の良いものを買いたい
④真面目消費:安全性や環境保護についてしっかり学びつつ消費に取り組みたい
⑤悠々自適:オールドメディアの影響が強く、今の生活をなるべく維持したい
⑥コスパ重視:自分の身の丈に合った範囲で、買いやすいか/使いやすいかが大事
⑦無難思考:他の人との話題になるものが好きで、それ以外はこだわらず情報感度は低い
⑧節約重視:収入に余裕がなく、とにかく安いものがほしい
⑨無関心:生活に余裕が少なく、価格が気になることもあるがそれ以外にまったくこだわりはない
出所:日本総研作成
この分類のうち、図表1の通り、①~②をエコ行動高、③~⑤をエコ行動中、⑥~⑨をエコ行動低、と定義する。
先日、まずは自分達から脱炭素に向けた行動変容を起こすべく、日本総研社員を対象に「従業員向け環境意識・行動調査」を実施した。回答任意での実施ではあったが、全社員の約86%から回答を得ることができ、日本総研社員は社会一般に比べて、「自分好み」「真面目消費」の割合が高く、エコ行動中が多いことがわかった。
出所:日本総研作成
「従業員向け環境意識・行動調査」の調査結果
● GMLの提唱する環境配慮商品の購買に係る生活者セグメントの結果
・当社の社員は、社会一般に比べ、エコ行動中が多い傾向にある。
・CO2排出量表示や脱炭素の分かりやすい解説を求める層が多いため、社内施策展開の際には取り組みの意義や貢献効果を丁寧に訴求することが有効である。
● 生活者調査の結果(普段の暮らしの中での環境意識・行動)
・普段の脱炭素行動は、年齢による取り組み度の差が見られた。
・「環境に配慮した商品の購入」は、「エコラベルの付いた商品の購入」として捉え直して認知拡大することで、普段の買い物時の意識変容を促すことができる。
● 企業人調査の結果(会社の中での環境意識・行動)
・社員の過半数が認知/参加している会社としての取り組みが複数ある。
・認知の低い取り組みや更なる取り組みへの希望も多く、訴求方法の改善や新施策の検討が必要。
調査結果は、社員の環境意識の啓発、オフィスの環境取り組み改善に向けて活用していく。また、GMLでは、このような調査を継続的に、そして規模を拡大して実施したいと考えており、GMLが主催するチャレンジ・カーボンニュートラル・コンソーシアム(CCNC)の参加企業とも同様の取り組みを進める予定である。調査から得られたデータやノウハウは、生活者との脱炭素コミュニケーションに活かしていく所存だ。
もし、皆さんが身近なところから脱炭素行動変容に取り組みたいと考えているのであれば、ぜひお声がけいただきたい。
(※1) 日本総研実施「くらしとカーボンニュートラルに関する生活者調査」(回答者数14,205、全国18-69歳の男女、2022/9/8-9/20に実施)を基に分類した生活者セグメント
(※2) 日本総研実施「従業員向け環境意識・行動調査」(回答者数2,390名、日本総研従業員対象、2024/7/24-8/9に実施)
※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。