オピニオン
介護職員数の将来推計ワークシートの作成に関する調査研究事業
2024年05月27日 高橋光進、福田隆士、大内亘
*本事業は、令和5年度老人保健事業推進費等補助金 老人保健健康増進等事業として実施したものです。
1.事業の背景・目的
介護職員数の将来推計の結果は、介護保険事業(支援)計画に掲載され、人材確保等に関する施策の根拠資料として活用されている。一方、都道府県等からは、この将来推計の結果について、より効果的な運用モデルの整理や推計精度の向上について、検討の必要性が指摘されている。これらの指摘を受け、ワークシートの改良、運用モデルの整理に関する検討が過年度調査において実施され、直近の第8期推計においては、サービス区分別(入所・訪問・通所系)および地域密着型サービスでの推計や常勤換算での推計、2040年までの長期推計を可能とするワークシートの改良がなされた。これらの改良による効果が期待される一方、第9期推計の実施に向けては、第8期推計の実施状況等を踏まえ、効果的な運用モデルの整理や推計精度の向上が引き続き求められているところである。
上記の背景を踏まえ、本調査研究においては、①第9期推計用の介護職員数の将来推計ワークシートの作成と、②推計結果の効果的な活用、施策の検討に資する手引きの更新を目的として、各種調査ならびに検討を実施した。
2.事業の概要
①第9期推計用の介護職員数推計ワークシートの作成
先行調査研究の整理等を踏まえ、第9期推計用の介護職員数の将来推計ワークシートを作成した。
②施策検討の手引きの更新に向けたモデル推計の実施
将来推計ワークシートを活用した効果的な介護人材確保策の立案、実行等を推進する運用モデルの検討を行うため、5市をモデル自治体として選定し、複数回の打ち合わせを通じて、自治体が保有する既存データ等の分析、自然体推計、需給ギャップ解消に向けたシミュレーション、中長期的な課題の抽出・整理を実施した。
3.事業の成果
①第9期推計用の介護職員数推計ワークシートの配布
本事業で作成した第9期推計用の介護職員数の将来推計ワークシートは第9期推計の実施用ツールとして2024年2月に厚生労働省から全都道府県に配布された。
②施策検討の手引きの更新
モデル自治体での推計の実施結果や検討委員会での議論等を踏まえ、先行調査研究である令和4年度老人保健健康増進等事業「介護職員数の将来推計ワークシートの作成に関する調査研究事業」において作成された「地方自治体のための介護サービスの安定的な提供体制の実現に向けた施策検討の手引き」の更新を行った。また、介護人材の将来推計の実施・活用方法等について情報提供を行うオンラインセミナーを開催した。
4.今後の課題
①第9期推計結果の検証、第10期推計に向けた検討
2024年度上期には第9期推計結果が国から公表され、推計結果に基づく各種検討が本格化することが見込まれる。第9期推計用ワークシートの基本的な推計ロジックは第8期のものを踏襲しているが、推計対象年度が2040年度から2050年度まで延長されるなど、一部変更を行った点もある。推計用ワークシートは、都道府県や市区町村の声や社会環境等の変化を考慮し、定期的に内容の見直しが行われている。第10期推計に向けて、第9期推計結果の検証等を通じて、推計用ワークシートの改良すべき点の検討を行うことが引き続き必要である。
②施策検討の手引きの改善・改良
本事業の成果物である「施策検討の手引き」は、先行調査研究等を通じて蓄積された知見等を基に、有識者からなる検討委員会での議論や市区町村での推計の実践等を通じて作成したものであり、今後都道府県、市区町村での活用が期待される。
本手引きに基づき、各地域での実践が進む中で、取り組み事例等が蓄積され、新たに改善・改良すべき点も生じることが想定される。将来推計ワークシートと同様に、本手引きについても、各自治体での活用状況、活用における課題等の調査・フォローアップを継続的に実施するとともに、定期的に内容の見直しを行い、改善・改良を図っていくことが必要である。
※本調査研究事業の詳細につきましては、下記の報告書および別添資料をご参照ください。
〇報告書
〇別添1_地方自治体のための介護サービスの安定的な提供体制の実現に向けた介護人材の確保・定着等に関する施策検討の手引き【検討案】
〇別添2_【都道府県用】第9期本推計用ワークシート(2022年度データ反映版)(Excel)
〇別添3_【市区町村用】第9期本推計用ワークシート(2022年度データ反映版)(Excel)
【本件に関するお問い合わせ】
リサーチ・コンサルティング部門 マネジャー 高橋光進
E-mail:takahashi.mitsunobu.y3@jri.co.jp