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デジタルマーケティングでウェブサイトを使い倒す ―ウェブサイトの活用レベル引き上げに向けた問題解決の糸口―【第2回】
「誰」がウェブサイトを見てくれるのか ペルソナ像策定に向けた思考プロセス

2023年03月30日 林翔太


 本稿は、デジタルマーケティングの推進が叫ばれる昨今、特にウェブサイトの活用で、うまく取り組みを進められないと悩みを抱えているBtoB企業向けに、問題解決の糸口を提示することを目的とした発信シリーズの第2回である。
 第1回では、ウェブサイトの活用がなかなかうまく進まない根本原因の検証方法と、主なつまずきポイントである「ターゲット顧客の考え方」(ターゲット業界や企業レベル)の見直し法について解説しているので、興味がある方は、第1回からぜひとも参照してほしい。
 第2回では、ターゲット顧客を具体的な訪問者像まで深掘りしていく際のつまずきポイントの追及と、対応策となる思考プロセスの解説を行う。

1.「誰」がウェブサイトを見てくれるのか
 具体的なターゲット業界やターゲット企業までは絞り込めているとした場合ターゲット企業の「誰」がウェブサイトを実際見てくれると思われただろうか。何らかの根拠をもって、●●部の部長、課長、担当者らの具体的な対象が想定できるだろうか。それとも「誰」ということまでイメージするのは難しいだろうか。
 誰が見てくれるか想像もつかなかった、あるいはよく分からない、となった場合、そこがウェブサイト活用のつまずきポイントになっている。極端に言ってしまえば、読み手が分からない中、当てずっぽうで自分の載せたい情報を羅列したウェブサイトになっている可能性がある。
 こうしたつまずきを避けるためには、やはり「誰」が見るのかという仮説をしっかりと持った上で、ウェブサイトを構築し、仮説の妥当性を検証しながらブラッシュアップをしていくことが必要である。この仮説を具体的にもつことが、「ペルソナ像」を描く、ということである。そこで今回は、「ペルソナ像」策定のファーストステップである、「誰」がという仮説について、どのような思考プロセスで設定すべきか、具体例を挙げながら解説していきたい。



2.「誰が」を導く思考プロセスとは
 本プロセスについては、以下の4つのステップを踏んで考えていけば、仮説を大きく外すリスクを低減できるのではないかと考えている。


 
 では、具体例をベースに解説を進めていく。

3.「誰が」を導く思考プロセスの解説 ― 具体例 ―
 今回の例は、自社で開発した中堅~大手企業向けの「販売管理システムソリューション」をウェブサイトで発信していくという設定とする。

【ステップ①】ニーズ発生タイミングの特定
 まず「ニーズ発生タイミング」はいつだろうか。特殊なケースを除けば、そのサービスや商品が何らかの理由で必要になっている、あるいは必要になる可能性が生じている時が、ニーズが発生するタイミングである。今回の例で言えば、ターゲット顧客内部で販売管理業務やシステムに何らかの課題があり、現行の仕組みを刷新する可能性が生じてきたタイミングではないかと推察できる。

【ステップ②】顧客内検討プロセスの特定
 続いて、「顧客内検討プロセス」について、検討を進めてみよう。商品やサービスの種類、購入金額規模などによって、関連する部署や検討プロセスは大きく異なるだろう。例えば、比較的廉価な商品やサービスであれば、特定の部署内の予算で購入し、経費として精算するようなケースもあるだろう。一方で、相当に高額な商品やサービスであれば、相応の検討プロセスを経て、経営層への稟議というケースもあるだろう。今回の例で言えば、中堅以上の企業では、システム刷新のような高額なサービスの調達を検討していく際に、多少のばらつきはあれども、おおむね次のようなステップを踏むことが多いと想定される。

 ①検討プロジェクト立ち上げ
 ②現状分析(業務・システム)
 ③課題整理
 ④対応策検討
 ⑤情報提供依頼(RFI:Request For Information)
 ⑥システム化実行計画策定
 ⑦提案依頼(RFP:Request For Proposal)~ 開発委託先のプロジェクト案策定
 ⑧最終決裁・稟議

【ステップ③】ウェブリサーチタイミングの特定
 では、「ウェブリサーチタイミング」について、ステップ②で特定した①~⑧のどのタイミングで、刷新候補のシステムの情報を収集するかを検討していきたい。
 ここでは、ターゲット顧客内の検討プロセスの各シーンにおいて、どのような手段でどのような検討が行われているかについて、最大限の想像を働かせながら検討を進めていくこととなる。今回の例で言えば、「①検討プロジェクト立ち上げ」や「⑤情報提供依頼」というタイミングの可能性が高いのではないかと想定される。

 まず、「①検討プロジェクト立ち上げ」段階では、そもそも詳細を議論する前に、刷新の方向性を考える上で、うまい解決策があり得るのか(落としどころがありそうか)という事前検証が行われる可能性がある。この検証を目的にウェブサイトなどで情報収集を行う可能性は高いと考えられる。
 また、「⑤情報提供依頼」段階では、前工程の「④対応策検討」で整理した施策をうまく実現できるソリューションにどのようなものがあるのか、ウェブサイトも含めて本腰を入れて情報収集を行う可能性が高いと考えられる。他方、例えば「⑦提案依頼」の段階では、既に「⑤情報提供依頼」で相当の情報を得ており、各ソリューションの営業担当者とコンタクトが取れている状況のため、あまりこの段階で、ウェブサイトでゼロから情報収集をすることは少ないと考えられる。
 
【ステップ④】ウェブリサーチ実施者の特定
 最後に、「ウェブリサーチの実施者は誰か」という問いに答えるために、もう一段検討を進めてみよう。このステップまでくれば、ターゲット顧客内の検討プロセスや、情報収集のタイミングまである程度想定できているはずである。後はそのプロセスの中で、どのような役割の人が、どのような動きをしているか想像を働かせつつ検討を進めていくのがよい。
 さて、今回の例の場合、「①検討プロジェクト立ち上げ」や「⑤情報提供依頼」というタイミングで、ウェブサイト上で情報収集をするのは、情報システム部(または検討プロジェクト)の部長(リーダー)や課長(サブリーダー)ではなく、担当者(プロジェクトメンバー)であるケースが多いのではないだろうか。
 ウェブサイトや書籍などからの情報収集は、担当者に対応してもらい、その調査結果を見ながら部課長(リーダークラス)が若手を交え討議を進めるといったイメージである。ここでタイミングと関係なく、ウェブサイトで基礎調査を実施するのは担当者だと思われた方もいるかもしれない。だが例えば、組織の部長が組織運営やマネジメントに悩んでいる際に、ノウハウやソリューションを検討するといったケースでは、事前の情報収集段階で部長自らが調査を実施する可能性も十分に想定できる。そのため個々のケースに応じてステップを踏んで検討を進めてみてほしい。

 こうして検討を進めた結果、自社のウェブサイトを見てくれるのは「誰なのか」という問いに対する以下の仮説を設定することができる。「販売管理システムの刷新に向けた検討プロジェクト立ち上げ時の事前の情報収集、または施策策定後の情報提供依頼段階において、担当者がウェブリサーチしているのではないか」という仮説である。いかがだろうか。

4.描いたペルソナ像の妥当性を検証せよ
 上記のような仮説を導く過程には、いくつもの推測が含まれている。これらの推測について何らかの根拠があり、ある程度確信を持てるのであれば特に問題ないが、もしも確信が持てない場合は、周囲の協力を得ながら検証を行うことを推奨する。
 一番理想的なのは、実際に自社の商品/サービスを導入してくれた顧客に対しヒアリングをかけることだ。情報収集の主体、収集タイミング、プロセス、収集内容など、聞いてしまうのが最も手っ取り早く、かつ確度の高い情報を得られるだろう。
 仮に顧客へのヒアリングが難しい場合、次善策としては、コンペや提案段階で契約に至らなかった企業に対し、営業担当者経由でヒアリングをかけてみるといった手段が考えられる。それも難しい場合は、顧客と最も強い接点を持つ、社内の営業担当者に対してヒアリングをかけつつ、一緒に考えてもらうというかたちが良いだろう。

5.おわりに
 第1回、第2回で、ターゲット顧客の考え方について言及してきた。第1回では、ターゲット業界や企業レベルでの考え方を解説し、第2回では、ターゲットを、さらに実際のウェブサイトの訪問者像まで具体化するための考え方を解説した。ターゲット顧客を人物像まで具体化できれば、次はそのターゲット顧客に対して、どのようにして適切に商品の情報を伝えていくのか、「商品の訴求ポイントと伝え方」に関する検討が必要になる。
 次稿第3回では、この観点におけるつまずきポイントと対処法について言及していきたい。

※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
関連リンク

    デジタルマーケティングでウェブサイトを使い倒す
    ―ウェブサイトの活用レベル引き上げに向けた問題解決の糸口―
    【第1回】
    【第2回】
    【第3回】

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