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コラム「研究員のココロ」

教育産業ソリューションシリーズ(第5回:人事制度)<後編>
~学習塾・予備校業界の組織体制と人事制度に関する考察~

2008年01月21日 佐藤邦明


本シリーズでは成長戦略クラスターが取り組んでいる、学習塾をはじめとする教育産業向けのソリューションについてテーマ別にご紹介しております。詳細につきましては当クラスターまでお問い合わせください。


2.学習塾・予備校の人事制度について

 前項では、調査事例に基づき推定される課題とあるべき組織体制について考察を行いました。本項では組織体制に基づき、管理部門と講師部門の役割分担を明確化し、それぞれが責任を果たすことによって、全体として顧客満足度の高い教育サービスの提供が可能となるような人事賃金制度について考察します。
 本人事賃金制度は、(筆者の調査では)それほど重要視されていないと思われた管理部門の役割を明確化すると共に従業員のモチベーション向上を図り、併せて講師部門にはその専門能力を十分に発揮してもらえる仕組作りに重点を置いています。

(1)人事制度の目的とタイプ

●目的
1)講師・スタッフ共に高いモチベーションと生産性の維持
2)付加価値生産の対価としての人件費の実現
3)人件費の変動費化

●人事制度のタイプ
 複線型(職種を総合職(正社員スタッフ)と専門職(正社員講師)に分ける)の役割責任等級制度がふさわしいと考えますので、以下にその内容を説明します。なお契約社員(パート、アルバイト)については、下記を簡素化した別の体系とします。

(2)役割責任等級制度

1)各人の分担している職務の役割責任の達成度(実績考課、プロセス考課)とその職務を達成するための行動(特性考課)を評価し、その評価によって給与と賞与が決定される仕組みです。
2)役割責任の達成度を公平に評価するために、「職種別役職別責任要件書」を制定し、各職務の役割責任内容を文書化します。また各人の役割責任を具体的な仕事に置き換えるために毎年目標管理シートを作成し、その達成度を賞与考課、総合考課に連動させます。
3)責任等級の数は総合職(スタッフ)で5~6、専門職(講師)で4~5程度とします。(下記「階層構造・役割」ご参照)

階層構造・役割①(総合職の事例)



階層構造・役割②(専門職の事例)


(3)賃金制度

●階層別賃金水準
 スタッフ職のモチベーションを維持するために、専門職P層以外は、総合職と専門職の賃金水準は同一とします。(総合職J1~M2と専門職J~Mは同水準)

●賃金決定方式
 人件費を付加価値生産の対価とし、かつ変動費化を図るため、役割責任の達成度、重さとの連動を重視した方式(下記ご参照)を提案します。

賃金決定方式



(4)目標管理制度

●概要
 「職種別役職別責任要件書」に示された各職務の役割責任を、目標面接とチャレンジシート(目標管理シート)によって個々人の具体的な職務目標として落とし込み、その達成度を公平に評価できるようにするものです。チャレンジシートのフォームはあまり複雑なものとせず、目標の数も多くて5~6個程度とします。

●目的
 特に専門職である講師に具体的な目標を与え、その達成度を評価し、人事考課に反映させることがねらいです。各教室の目標は本部からトップダウンで与えられますが、各講師の目標はそれを達成するための具体的なものでなくてはなりません。

(5)人事考課制度

●人事制度に関する考察の最後として、人事考課制度を取り上げます。前述の全ての制度は人事考課が公正に行われることが前提となっており、それが実現することで初めて所期の目的が達成されると言えます。

●概要
 「職種別役職別責任要件書」に示された役割責任の達成度を公正に評価し、貢献度に応じた処遇を行うためのプロセスです。従業員のモチベーションの維持・向上のためには、人事考課制度が有効に機能していることが必須条件です。

●特徴
 基本的には結果として表れた実績を重要視しますが、同時に業務プロセスや行動も評価し、長期的な人材育成や高度な目標へのチャレンジも評価します。評価項目は大きく下記の2項目となります。

評価項目



以上


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