CRBにより戦略顧客の懐に。そしてコラボレーションへ
▼▼▼ CRBにより戦略顧客の懐に。そしてコラボレーションへ① ▼▼▼ | |||
● | 米アマゾンドットコムなどに見られるようなCRMでは、B2C分野でのeコマースに一定の成果を収めている。しかし、B2B分野では、余り役立たない。顧客関係を管理(Management)することよりも、戦略顧客との関係を構築する(Building)ことが、IT革命第2幕では求められている。この場面ではCRMではなく、「CRB」がポイントとなる。 | ||
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これまでの顧客関係は多くの場合、自社営業担当者が、顧客の資材・購買担当者への御用伺いや商談などを通じて維持されてきた。しかし、顧客のコア・コンピテンスの鍵を握る企画・設計・開発などの担当者へは、技術ナレッジが無いなどのゆえに仲々アプローチできない、ましてやそれら部門との戦略的なパートナーシップを結ぶこともままならない。 | ||
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一旦、顧客コア・コンピテンス部門との関係が構築できれば、その後のナレッジ・情報の交換・シェアは、ITを活用すれば、時間短縮や煩雑さ軽減などの観点で効率化できる。 | ||
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加えて、企業に2001年ころから普及し出した、旧来の専用線を代替している新しいデータ通信網(IP-VPNや広域イーサネット)の整備を前提に、このブロードバンド環境を利用したコラボレーションが両者間で効果的に行える。 | ||
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コスト削減競争から抜け出し、新しい技術や商品づくりへの転換が急務となっている最中、このコラボレーションの進め方が鍵を握る。 | ||
【図表】 CRMの限界と新たなコンセプト(CRB) | |||
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(注) | 「CRM」:Customer Relatioship Management、「ERM」:Employees Relationship Management、「c-CRM」:collaborative CRM、「CRB」:Customer Relationship Building、「cVC」:Collaborative Value Creationのこと。 | ||
(出所)日本総合研究所 ICT経営戦略クラスター[新保2000] | |||
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▼▼▼ CRBにより戦略顧客の懐に。そしてコラボレーションへ② ▼▼▼ | |||
● | 顧客とくに個客とのコラボレーションをネット(ウェブ)上で行う際の、いわばプレミアムページのイメージを示す。 | ||
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例は、電子部品メーカー(村田製作所、ローム、TDKなど)とセット商品メーカー(東芝、ソニー、松下など)との間でやり取りされると有効と思われるイメージ。 | ||
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必ずしも詳細な製品情報をアップすることが時に重要ではなく、むしろ当該製品や技術に熟知している営業担当者や設計・開発者などのキーパーソンを抑えておき、適宜密なコミュニケーションをとれる仕組みの構築・整備が不可欠。 | ||
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【図表】 個客とのコラボレーションを行う上で共有されるプレミアムページのイメージ | |||
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(出所)日本総合研究所 ICT経営戦略クラスター[新保2000] | |||
▼▼▼ CRBにより戦略顧客の懐に。そしてコラボレーションへ③ ▼▼▼ | |||
● | CRMとCRBの比較を示す。CRBは、今後の競争力強化の鍵を握る、新技術開発や新商品づくりにおける革新的手法となろう。 | ||
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「CARV」とは、Cross Activities Relationship Visualizingの略で。製造業であれば、例えば、次のような両軸でできるマトリクスの中で、自社事業のポジショニング(距離感等)を顧客起点で測り(ビジュアル化し)、リアルタイムで都度対処できるようにする仕組みのこと。この仕掛けづくりがコラボレーションの鍵を握る。 | ||
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X軸: 「素材・部品→セット製品→関連業界→デファクト標準動向」 | ||
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Y軸: 「コンセプト段階→デザイン段階→売上確定現段階」 | ||
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【図表】 CRMとCRBの違い | |||
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(注) | 「CRB」、「CARV」は、作者の造語。「CARV」:Cross Activities Relationship Visualizingのこと。 | ||
(出所)日本総合研究所 ICT経営戦略クラスター[新保2000] | |||
▼▼▼ CRBにより戦略顧客の懐に。そしてコラボレーションへ④ ▼▼▼ | |||
● | 日本企業は2000年前後から、ERPやSCMの本格導入により人事・財務システムの整備を行い、生産プロセスの低コスト化の徹底を図ってきた。また、CRM導入により、顧客の消費行動などの分析を通じ、主に消費者との関係のマネジメントの高度化を進めてきた。 | ||
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「前者は主にバックエンド領域、後者は主にフロントエンド領域にかかわるソリューションの試みである。企業課題のバリューチェーンでみた先のCRBの基盤は、両領域を統合することで、より強力なインフラ、仕組みとなる。 | ||
● | 今日の日本企業において欠如または遊離しているのが、事業を最初に突き動かす事業のコンセプト、そのコアになる差別化された商品力そのもの、そして、それを生み出す仕掛けにある。 | ||
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その仕掛けは、cVC(collaborative Value Creation:コラボレーションを通じた価値創造)に負っている。 | ||
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財務的なバリューとして顕在化する前の、インタンジブルなプロセスの中で、このcVCをいかに進めていくが重要。 | ||
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その実現にはITも必要だが、コラボレーションやコミュニケーションといった「人」が主人公となる。 | ||
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【図表】 バリューチェーンの中でみたCRB基盤の構築 | |||
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「cVC」:collaborative Value Creation(作者造語)、「CRB」:Customer Relationship Building(同造語)、「CRM」:Customer Relationship Management、「PDM」:Product Data Management、「SCM」:Supply Chain Management、「cコマース」:Collaborative Commerce、「CPFR」:Collaborative Planning, Forecasting and Replenishment(需要予測と在庫補充のための共同事業)、「インタンジブルプロセス」:財務指標に表しにくい、企業内部アクティビティを主とする「バックエンド」領域のプロセス、「タンジブルプロセス:収益等財務指標に表しやすい、顧客や取引先等の外部アクティビティを主とする「フロントエンド」領域のプロセスのこと。 | ||
(出所)日本総合研究所 ICT経営戦略クラスター[新保2001] |