IP-VPNやイーサネット系の新データ通信サービスの動き
▼▼▼ IP-VPNやイーサネット系の新データ通信サービスの動き① ▼▼▼ | |||
● | IP-VPNや広域イーサネットなどの技術の進展により、企業の専用線が置きかえられつつある。自動車メーカーやゼネコン、損保会社などのように活動拠点を全国にもつような企業では、例えば、IP-VPN網を専用線の代替として、部分的または全面的に使用する動きがある。この動きは米国よりも2002年時点で顕著といえる。 | ||
◇ | IP-VPNとは、伝送プロトコルをIPに制限した仮想閉域網サービスのこと。 | ||
◇ | 広域イーサネットとは、イーサネット(Ethernet)で使用されているスイッチングハブ(レイヤ2スイッチ)を組み合わせて構築した、100km単位の大型ネットワークのこと。 | ||
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スイッチングハブは、ルーター(レイヤ3スイッチ)と比べて非常に安価なため、大量に使用してもコストは低くなるほか、ルーターと比べて保守などの手間が少ない。あるい多対多の接続が簡単に行えるといったメリットがある。 | |
【図表】 企業の専用線をIP-VPNへ移行する流れ | |||
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(注) | 回線コストのグラフは、「日経コミュニケーション誌」のデータから作成者がイメージしたもの。 | ||
(出所)日本総合研究所 ICT経営戦略クラスター作成[新保2001年] | |||
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▼▼▼ IP-VPNやイーサネット系の新データ通信サービスの動き② ▼▼▼ | |||
● | 法人ユーザーの回線利用の実態として、内線や外線網の整備や企業内の拠点間の帯域確保などに、これまで公衆回線や専用線を用いてきたスケジュール段階から、インターネット接続を行うために広域イーサネットやDSL(デジタル加入者線)を用いる段階へシフトすることで、企業のITコスト(回線コスト)を大幅に下げられるようになってきた。 | ||
◇ | また、ISPやiDCなどのホールセール事業者では、ユーザー企業よりも積極的に、2000年頃からIP-VPNや広域イーサネットなどの新しいブロードバンド・データ通信網を整備し始めてきた。 | ||
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【図表】 企業の通信インフラの主役の変遷 | |||
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(注) | FR:Frame Relay、VoIP:Voice over Internet Protocol、DSL:Digital Subscriber Line、 IP-VPN:Internet Protocol-Virtual Private Network(伝送プロトコルをIPに制限した仮想閉域網) | ||
(出所)日本総合研究所 研究事業本部作成[2001年] | |||
▼▼▼ IP-VPNやイーサネット系の新データ通信サービスの動き③ ▼▼▼ | |||
● | 従来の専用線サービスはセキュリティ上の問題が無いに等しく安定的なものであったため、価格が高くても、企業の情報システム(IS)においては不可欠な存在であった。しかし、2000年以降特に、IP-VPNや広域イーサネットなどの新ブロードバンド・データ通信網の技術の進展により、ISコストを大幅に下げ(例えば8割程度削減)、かつ広帯域(ブロードバンド:例えば毎秒数10M~数100Mバイト。専用線の少なくとも数倍)ゆえ、また、一定のセキュリティレベルを確保するなどの工夫により、日本では大企業を中心に急速な浸透を見せ始めている。 | ||
◇ | このブロードバンドIP網のインパクトは大きく、設計部門や工場現場などとの「見えるコミュニケーション」や「コラボレーション」が大幅に進むことで、これまで以上にリードタイムの短縮化がはかれたり、あるいは異種部門間での全く新しい創造的なワークに発展するなどの可能性が出てきた。 | ||
◇ | ISやITを単なる安価なツールと見るステップであれば、IT・IS部門のマターであったが、より戦略的な商品づくりなどに直結するステップへの移行により、IP網インフラとその上に乗る仕掛けが現場コア・コンピテンス部門の強力な武器となる。 | ||
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【図表】 企業のデータ通信システムのIP網モデルへのシフト | |||
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(注) |
IP-VPN:Internet Protocol-Virtual Private Network(伝送プロトコルをIPに制限した仮想閉域網))、IS:Information System(情報システム) | ||
(出所)日本総合研究所 ICT経営戦略クラスター作成[新保2001年] | |||
▼▼▼ IP-VPNやイーサネット系の新データ通信サービスの動き④▼▼▼ | |||
● | 米国のILEC(既存地域電話会社)の新ブロードバンド・データ通信網に対する基本戦略は、帯域拡大及び付加価値サービスにより顧客単価の拡大を狙うことであり、データセンターサービスやネットワーク・マネージメントサービスなど上位レイヤーに関心が向いている。 | ||
◇ | ELEC(イーサネット系地域電話会社)へのILECの姿勢は、未だ競争相手としても見ておらず、もしELCが成長してくればそこを買収してしまえばよいといった程度のことがうかがえる。 | ||
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【図表】 米ILEC(既存地域電話会社)の戦略 | |||
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(注) | ☆ILECIncumbent Local Exchange Carrier ☆ELEC:Ethernet Local Exchange Carrier ☆IXC:Inter-eXchange Carrier(米国のLATA間の長距離接続を提供する通信事業者の総称) ☆LATA:Local Access Transport Area ☆OSI:Open Systems Interconnection 上記イメージは米国の通信関係者(アナリスト、キャリア、FCC、通信機器メーカーら)へのヒアリングを通じ作成 | ||
(出所)日本総合研究所 研究事業本部作成[2002年] | |||
▼▼▼ IP-VPNやイーサネット系の新データ通信サービスの動き⑤▼▼▼ | |||
● | 米国通信市場では、OSI(Open Systems Interconnection)の7階層モデルにおける、上位レイヤーに向けた取組みが活発である。 | ||
◇ | ILECはその上位レイヤーでのサービスを苦手としているため、他企業との提携(アライアンス)や買収などの手段を講じることで、自身が身を置く下位レイヤーとの距離を埋めようとしている。 | ||
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【図表】 上位レイヤーへのシフトと新しい競争 | |||
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(注) |
上記イメージは米国の通信関係者(アナリスト、キャリア、FCC、通信機器メーカーら)へのヒアリングを通じ作成 | ||
(出所)日本総合研究所 研究事業本部作成[2002年] | |||
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