ナビゲーションコラム
■2012/10/16 蓄電池普及の鍵を握るサービス化(報告:佐々木努)
政府が検討している再生可能エネルギーの最大限導入を進めるためには、蓄電池を大量導入しなければならない状況が訪れる可能性が高い。新築住宅のほぼ全ての屋根に太陽光発電を設置するような将来には、太陽光発電とともに家庭用蓄電池は“普通の住宅設備”と化していなければならない。
それを実現するための鍵を握る1つの手段が、蓄電池の低価格化である。普及の目安として「価格が1kWh当たり3万円を切る必要がある」(日経エレクトロニクス、2012/10/15)との見立てや1万5000円/kWh(出力安定・系統安定・住宅向け用途)とのNEDO(二次電池技術開発ロードマップ、2010年5月)の設定がある中で、現状は20万~100万円/kWh程度とその隔たりは大きい。そのため現時点では蓄電池を備えた住宅は大手ハウスメーカーの高額商品に限られ、本格普及するまでには相当時間がかかるとみられていた。
ところが、こうした状況を打開できる可能性のあるサービスがオリックスにより発表された。“初期費用なし・利用料月額5千~7千円”で家庭向けリチウムイオン電池をレンタルするといい、割安な夜間電力を蓄電して昼間に利用することで「月3千~7千円の電気代を節約」(日本経済新聞電子版、2012/10/3)できるという。先行して発表していたリコーリースによる同様のサービスが「毎月のリース料金を約1万5千円」(日本経済新聞電子版、2012/3/24)としているのと比べて半額以下での提供になる。導入目標についても「初年度で3万~5万軒、次年度から毎期10万軒への導入を目指す」(日本経済新聞電子版、2012/10/3)としており、富士経済による住宅用蓄電池の普及予測(2012年度に8千軒、2020年度に3万5千軒)と比較しても、野心的なものであると分かる。
オリックスの取り組みの特徴は “売り切り”ではなく“サービス”として提供することでエンドユーザーに過度な負担をかけずに、それでいてユーザーメリットをもたらす内容に仕上げたことにある。様々なエネルギー設備の普及を促進していくためには、“コスト削減が実現できる技術開発に注力する”というメーカー発想の姿勢とともに、ユーザーが受け入れやすい提供方法を考えて“量産効果により価格を下げる”というアプローチも重要になるのではないだろうか。こうしたサービスに対する公的支援もまた充実させる必要があるのではないか。