ナビゲーションコラム
■2012/10/03 既設建築物(ストック)のスマート化(報告:佐々木努)
今日の建築物のスマート化の議論の中心は新築の住宅やビルである。国の住宅・建築物に関する省エネ法の省エネ基準の見直しの議論でも、新築建築物への省エネ要件の段階的な義務化を盛り込むとの結論に至り、新築建築物のスマート化にはある程度の見通しが立ちつつある。一方、既設住宅・ビル(ストック)は数が多く省エネ性も低いが、ほとんど対策がとられていない状態にある。
こうした状況の中、埼玉県は既設住宅のスマート化のプロジェクトに着手し始めた。具体的には「窓の高性能化や壁・床・天井等の断熱強化、HEMS、蓄電池、省エネ家電、EV・充電器、太陽光発電、高効率給湯器などの設置によって、いかにスマートハウスを進めるかを検討する」(ガスエネルギー新聞、2012/10/3)というものである。すでに関係事業者と検討協議会の設置を決め、検討は進みつつある。ストックのスマート化に向けて先進的な取り組みとして評価できる。
しかし、そのアプローチの仕方は新築住宅・ビルのスマート化と同じように高性能機器の設置・導入に重点を置いた施策にみえ、実効性に疑問が残る。ストックのスマート化には機器の設置場所や割高な費用(新築であれば工事費が不要)、稼働中の既存の機器などストック特有の課題が存在し、新築住宅以上にスマート化のハードルが高いが、これらを解決する有効な手段には言及されていないからだ。県は補助による導入促進も検討するようだが、大きな効果を得るにはそれ相応の補助金の予算が必要になり、結果として持続的な実施が難しくなる。
既設住宅は数が多いだけでなく個々の住宅が置かれる状況も様々なため、機器導入というハード対策だけでは対応に限りがあるだろう。そのため、ハードだけに頼らず、サービス提供によるスマート化の視点を含めていくことで対応できる範囲を広げる視点が重要になるはずだ。