ナビゲーションコラム
■2012/09/20 生活者視点のスマートハウスの形(報告:佐々木努)
ハウスメーカー各社が展開するスマートハウスを見ていると太陽光発電、燃料電池、蓄電池にHEMSをセットしたものが基本装備で、電気自動車やプラグインハイブリッド自動車との接続機器がそれに続くものとして用意されているというのがスタンダードになってきた。いずれにせよ、エネルギー機器を家の内外に配置して、家全体をコントロールするという考え方が基本になっている。 一方、従来の“家づくり”らしいアプローチでスマート化を目指す動きも最近よくみられるようになった。たとえば、YKKAPと三井ホームは「気候や気温の変化に合わせて取り付けたひさしを開閉し、エアコンの使用量を約5割抑える窓を開発する」(日経産業新聞、2012/9/20)という。また、LIXILは「室内外の気温や風向きに合わせ、タブレット端末などで居住者に窓の開閉をアドバイスするシステムの実験を始めた」(日本経済新聞電信版、2012/9/9)という。家の構造そのものを見直すことで、省エネ性を格段に改善できる余地があるとする主張も見られる。
こうした流れは、ハイテク志向のスマートハウスとローテク志向のスマートハウスというように手法論の違いだけで整理するだけでは本質を見誤る。機器を中心とした家づくりによって住宅市場の主導権を握ろうと仕掛ける電機メーカーや家電量販店と、それに対抗したい旧来の住宅産業の争いと読み解くべきだろう。となれば、気になるのは生活者が置き去りになっていないか、ということだ。
住まい手からするとエネルギー問題は暮らしの要素の一部に過ぎない。住宅の購入や賃貸を決めるプロセスは、様々な制約条件の都合を勘案して理想から“引き算”して決めていくものだろう。昨今のスマートハウスの開発競争は、“足し算”によって良さや違いを訴求するアプローチに終始しているようにみえる。これでは大半の人にとってスマートハウスは遠い存在のままであろう。生活者視点の引き算志向のスマートハウスの提案が待たれるところだ。