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■2012/08/27 自治体におけるエネルギーの“地産地消”の動き(報告:佐々木努


 震災により系統電力に依存した電力供給の脆弱性が明らかになり、エネルギーの自給を目指す動きが活発化している。“止められない生産設備”を持つ製造業を中心に自家発電導入の動きは当初から見られたが、最近は自給を志向する自治体の動きが目立つようになっている。中でも「自治体による電力供給のモデルになる可能性を秘める」(日刊工業新聞、2012/8/13)と評される東京都の動きが早く、既に官民インフラファンドの設立と天然ガス発電所の建設の検討に着手済みだ。
 これに追随するように静岡県や岩手県などの自治体は、コジェネや再生可能エネルギーの導入によるエネルギーの“地産地消”を目指し始めた。例えば静岡県は、富士・富士宮地域において「地域内の大規模事業者が持つ複数の天然ガスコージェネで発電した余剰電力を“地域PPS(特定規模電気事業者)事業体”が買い取り、地域の需要家に供給する」(ガスエネルギー新聞、2012/8/8)システムを目指す方針で、既に協議会を立ち上げて準備を進めている。
 しかし、「“余剰電力の需要家への売電価格が高い”“設備の増強には巨額の費用が必要で、15~20年の償却期間に確実に電力を買い取ってもらう仕組みが必要”」(建通新聞社、2012/8/6)などの課題が指摘されており、実現に向け解決すべき課題は多い。さらに、こうした地産地消の取り組みに対する期待とその水準が主体ごとに異なることも、課題解決を困難にしている。系統に頼らない安定供給の実現と域内のエネルギーの有効利用、あるいはエネルギーコストの低減のうちどれを主目的に据えるかで、判断基準が大きく異なるためだ。地域に閉じながらも非常時にも安定した供給体制を実現しようとすると、高コストになることは避けられない。
 エネルギーの問題は既に事業者や市民に“実害”を伴う影響を及ぼしており、具体的なソリューションが求められる段階にあることは明白だ。そうした中で、“地産地消”という概念的な言葉を使って議論をしていては、主体者間に存在する認識のズレの顕在化を先送りしかねず、時間を無駄にしてしまう。自治体がエネルギー政策を利用する際には、特にこうした点に注意を払う必要があるのではないか。
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